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SCARLET  作者: 九条 隼
俺達天才サイキッカー!:超能力者達の話
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3-0穏着沈黙な少年



 気まずい、なんだかとても気まずい。

 寝不足の頭でぼんやりしていたら、どうやら美化委員となっていたらしい。学期が変わったからといってクラスが変わるわけでもないのに、なんでわざわざ毎年委員会が変わるんだろう。そしてなんで二人は決まる前に起こしてくれなかったのか……。

 残り物は欠席者と俺に決まり、今日は一人ぼっちで会議に出なければいけないらしかった。

 周りに人は座らないのに、みんな俺を見て囁き合っているのはわかっていた。

 久しぶりだった。

 いつもは二人がいて気にならないと言うか、むしろ目立ちすぎて何も思わないのだけど。

 ひそひそひそひそと、俺についての何かをささやき合う空間は、相変わらず恐ろしかった。


「……となり、いい?」

 の、だけど。声をかけられて大袈裟なほど体が震えた。

「え、ごめん」

「いえっどうぞ! 吃驚しただけだから!」

「そう……?」

 黒髪のクールな男の子だ。何故わざわざ隣に。そう思っていると、同じ学年は固まらなければいけないからと言われて納得する。

 なんとなく会話が続く。君津くんはちょっと冷たそうな見た目だけど、そうでもない。言葉は少ないが穏やかだ。お互いにぎこちなく話していた。


「香川は、美化、初めてだよね?」

「え、あ、うん、そう。君津くんは?」

「オレは、一、二年ともそうなんだ。植物好きだから」

「そう……なんだ、なんか、そんな感じするね」

 そう? と少し君津くんが笑う。


「美化って、どんな事するの?」

「花壇の水やりと、カバンの水変えたり。去年は一度だけ植え付けもしたか」

「植え付けかぁ……」

「虫は平気?」

「うん、大丈夫」

「少し意外だ」

「よく言われる」

 少し笑うと、君津くんもまた小さく笑った。うん、委員会、何とかなりそうだ。



 新しい友人を得た俺は、彼にくっついて仕事を決めた。君津くんは少し困ったようにしながらも嫌がることはなかったので助かった。

 一緒に帰る事になって、そのまま並んで歩く。


「君津くん何組?」

 俺は新しい友達をゲットした嬉しさで少し浮き足立っていた。ちょっとずつ質問を重ねると、君津くんは簡単に答えてくれる。

「隣のクラス」

「えっ俺の組知ってるの?」

「目立つでしょ、あの人たちと」

 そ、そうか、それは確かに。思わず恥ずかしさで沈黙する。


「仲良いんだね」

「うん……そう、見える?」

「そりゃ見えるよ」

 君津くんは少し悲しそうに見える笑みを浮かべた。


「オレ、二人と同じ中学だったから」

「へえ! 本当!? どこ中!?」

「き、急に元気になったな」

 思わず食いつくと君津くんが少し身を引いた。つい条件反射で……。


「二人ともあんまり中学の時の話しないからつい……」

「そ、そう……」

 君津くんはぽつぽつと中学の話をしてくれた。同じクラスにはなったことがないからと体育祭や文化祭の時の話を教えてくれた。

 そこには相変わらずの二人がいて、でも二人の間にどこか距離があるような感じがして少し面白かった。夢中になって話を聞いて、赤信号が、青になって、歩き出して。

 叫ぶようなブレーキ音を立てながら迫るトラックが、視界に入った。




ーー危ない、と、彼の声が飛び込んでくる。

 ああ。

 スローモーションで、トラックが迫り来る。

 逃げることも忘れてそれをぼんやり見ていた。


 ああ、これはきっと痛い。

 これはきっと、苦しい。

 どれほど跳ね飛ばされるだろう。そんな思考ばかりが駆け巡っていた。



ーー視界の端で、彼の瞳が、青く光る。



 手を伸ばした彼が俺を捕まえて、かと思うと、体が下から吹き上げられたような感覚に襲われた。


 衝撃。


 体を打ち付けるような、頭をバッドで殴られるような衝撃が襲う。壊れたテレビが急に音量を最大にして叫び出したような衝撃は一瞬で頭の中をめちゃくちゃにしていった。

 死んだ。

 殺した。

 救われた。

 殺した。

 死んだ?

 いや、これは。



「…………いきてる」



 じわじわと、駆け回るような血の巡りが落ち着いていく。二人で肩で息をして座り込んで、通り過ぎたトラックを見送って、しばらく呼吸だけをしていた。



「あの、大丈夫……?」

 かけられた、声に、ゆっくり顔を上げる。




ーーああ、ここは地獄か。





 その手を振り払ったその時、彼の青褪めた顔を見た。まさかと驚いた彼に、きっと今、自分の目も青くなっているのだろうと理解する。

 彼が落ち着けと俺を宥めようとする。

 伸ばされる手に、また身を引く。


 落ち着けと。

 仲間だから、大丈夫だからと、彼が声をかける。




ーー違う、俺は。




 俺は、ああ、思い出してしまった。


 分かってしまった。





 俺たちは。





 親友になんてなれない。






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