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SCARLET  作者: 九条 隼
俺達天才サイキッカー!:超能力者達の話
38/58

2-0平穏な少年(香川康貴)



 今年は例年よりも寒さの厳しい冬だとニュースキャスターが話す。

 確かにカーテンの隙間から見える庭では次から次へと重たそうな雪の塊が落ちてきて、溶けることなく地面を埋めている。既にもとの地面の色は見えず、さっき落ちてきたばかりの雪を、また新しく落ちてきた雪が覆っていく。

 交通機関も既に凍結したようだ。母さんにメールを送る俺を見て、こたつに肩まで入った遠矢はすこし機嫌がいい。


「帰れなくなったな、やっすー」

「なんでそんなに嬉しそうなの……」

 思わず抗議を申し立てるが、遠矢は別に、と言いながらも笑っている。

 逆隣の楓の反応は相変わらず無関心だ。特に楽しんでいる表情もなく本の文字を追っている。

「なあ、どんくらい積もったかな」

「えー……5センチくらいじゃない? 予報ではそうだったよね」

「絶対もっと積もってるって! なあ外でようぜ!」

 さっきまでの脱力はどこへ行ったのか、勢いよく遠矢が体を起こす。

「赤桐、お前の父さんの手袋ねえの? 貸して」

「もう捨てたけど」

「えっ、遺品じゃないの」

 あまりにあっさり切り捨てた楓に口が滑る。しまったと口を噤んだが、楓は特に気にした様子はない。

「十年以上前だよ? あったとしてもぼろぼろだよ」

「えー、じゃあ素手でいいや! 雪合戦しようぜ」

「馬鹿なの?」

 諦めない遠矢がまた切り捨てられる。十年前か、と口に出さずに驚く。知らなかった。

 しかし遠矢はどうしても雪合戦をしたいみたいだ。

「やるやらないは置いておいて、俺も流石に雪を素手で掴むのは無理だと思うよ」

「大丈夫、バリア張ってるから」

 両手を胸で交差させた遠矢がドヤ顔で俺を見る。

「こどもか!」

 思わず吹き出して笑う。遠矢は満足そうに笑った。かと思えば、そのまま寝転がって変わらず文字を追っている楓の前にしゃがむ。

「やろうぜ雪合戦」

「風邪ひいたからむり」

「うそつけ!」

 不満げに叫んだ遠矢が楓から本を取り上げる。あ、と俺が呟いた時には既に楓から抗議の拳が振るわれていた。手加減はしてるんだろうけど痛そうだ。

「すぐ手を出さないでよ」

 まったく、と楓がため息をつく。

「いってぇ〜〜まじお前がいうなや!」

「遠矢、大丈夫……?」

 遠矢が標的となった脛をさする。楓がケラケラ笑う。いつもの流れだ。きっと中学からこんな感じなんだろうな、と想像してみるとやはりしっくりくる。二人は十年後も同じようなことをしてそうだ。思わず笑ってしまった。

 ふとテレビで雪遊びをする子供たちの映像が流れる。奪い返した本を閉じた楓が、これ?と指をさす。雪合戦というよりは、雪の掛け合いになっている。でも子供たちの笑顔を見るかぎり、ルールがなくなっていたとしてもきっと楽しいんだろうな。すこし微笑ましい。

「赤桐ぃ、お前、やったことないだろぜったい」

 にやにやと意地悪な笑みを浮かべて遠矢がいう。

「やったことなくて自信ないからやる気ないんだろうダッセ〜〜!」

「いや挑発あからさますぎない……?」

「よかろう戦は得意だ」

 楓が立ち上がる。

「え、なにその口調」

「その見かけだけの肉体、雪化粧してやるわ!」

「はん、いうじゃねえか! やっすーお前俺とチームなマジ頼んだぜ」

「よかろう温情だ! では代わりにこちらは雪に石を仕込ませてもらおう」

「それは……ちょっと危ないからやめよ」

「その意見はバリア!」


「え、本当にやるの? この流れで?」

 既にやる気の二人はけたけた笑って茶番を続けたまま上着を羽織り始めている。


「ねえ、素手でやったら絶対霜焼けになるって!」

 俺の声も聞かず飛び出した二人は、その後数分で雪まみれになって帰ってきた。





「そういえば、叔父さんの手袋あったんだった」

「お前それ……それ言うのおそすぎないか」

「今日は三人でかまくらつくって一夜を明かそう。負けたやつは外ね」

「それは普通に死ぬ」

 手が真っ赤になった二人は、暫くストーブにあたったかと思えば、今度は手袋を持ってまた外に飛び出していった。

 母さんには、今日は泊まるって伝えなきゃな。

 ぱぱっとメールを送って、既に外で騒いでる二人の元へ走った。




「ねえ!遠矢!普通にこっちに投げてくるじゃん!」

「世は乱世! 信じられるのは自分だけだぜやっすー!」

「裏切りものは天誅! いくぜ雪崩攻撃」

「赤桐お前、雪は固まりにしろや!」




 結局三つ巴になった雪合戦は、それでも笑い転げるほどおかしくて、翌日風邪を引くくらいには、それはもう楽しかった。

 雪合戦の後には三人で庭に歪なかまくらを作りもちを食べたりなんかもして、結局1,2時間で炬燵に戻った。雪は数日で溶けてしまったけれど、きっとこれが青春なんだろうな。俺を普通の友人として扱ってくれる二人としか、きっとこの時間は過ごせない。

 撮り損なった写真を少し後悔した。




2/27タイトル修正

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