2-閑話
最後のページまで目を通した男は、そっとファイルを閉じた。
気づけば女はどこにもいない。
男が床から立ち上がりあたりを見渡すと、扉の外でなにかを見ているらしい。男の位置からは何も見えない。そして、その部屋から出るなと言われていたから、そこに何があるのかも検討が付かなかった。
しかしどうやら壁を見上げているらしい。近くへ歩み寄るよりも早く、女が男に気づき、部屋へ戻った。そして首を傾げる。
「どうだった?」
男は黒いファイルをもう一度見て、しばらく首を傾げ一言返す。
「殺伐とした世界だな」
「そうかな、どこもこんなもんでしょ。光も影も仲良しだからね、安寧も殺伐も仲良しだ」
わかったような口ぶりで女は言う。男からファイルを受け取ろうとして、男の言葉に手を止めた。
「らしくないな」
女はじっと男を見つめた。そしてにんまり笑う。
「あたしのことそんなによく知ってたの?」
「いや。俺、記憶もないし。なんとなく」
「お、知ったかぶり? いい傾向だね」
男は首を傾げ、不快気に眉を寄せた。
その様子にすら満足げに女は続ける。
「じゃあご褒美に、明るい話もしてあげようか」
「明るい話?」
男はさらに眉間にしわを寄せる。
「そう。前世にとらわれない人たちの話だよ」
まずは、とある少年の話をしてあげる。
女はファイルをカバンにしまうと、語り始めた。
中身はとても平凡な少年だ。
当時は純粋で友人に少し依存的。与えられる幸せをかみしめるのに必死だ。
しかし彼にはハンデが付きまとう。
なぜなら、それが彼に与えられたばつだから。でもそれを彼は知らない。知らない罪を償わされている。
貴方はどう思う?
身に覚えのない罪を背負わなければいけないことについて。




