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SCARLET  作者: 九条 隼
俺達天才サイキッカー!:超能力者達の話
33/58

1-2誓いを貫く人(朝風東馬)



 今も探している人がいる。

 とても綺麗な目をした不思議な人。


 その人のことは、昔から知っていた。

 超能力者の中でもリーダー的存在。突飛した能力。緊急事態だと呼び出された超能力者たちの中で目立つ、綺麗な澄んだ瞳。

 その人が超能力者に声をかけたと聞いた。

 なんとか人の中に紛れていた器用な超能力者も、人目を避けて闇に生きる超能力者も。


「確かに彼等は相容れない存在でしょう。皆、迫害を受けたのは忘れられないことでしょう。けれど、事態は深刻です。無関係の子供は死にました。その母も、父も、家畜もみんな。……それでも動かず誰が動くというのです」


 静まり返った地下室で、その人の凛とした声に聞き入っていた。

 真っ直ぐに前を見るその人とは裏腹に、集められた面々の反応は様々だった。

 集められたからには肯定的な超能力者なのだろうが、それでも踏み出すことには積極的にはなれなかったのだろう。

 きっと俺とも相容れないのだろうと、ぼんやり思った。

 だってその人はとても凛々しくて、売り飛ばされた過去を、笑われた傷の数々を忘れられない俺には眩しすぎるのだ。


「僕も、賛成する。きっと僕の力は戦いには向かないけれど、情報集めなら得意だ。もしかしたら、彼らの真意も聞こえるかも」

 全身黒い服を身につけた不安げな男が手を挙げる。

 指先が震え声も掠れているが、不思議と真っ直ぐ耳に入ってきた。


「僕たち超能力者たちの傷が元だというなら、僕たちでしか癒せない。僕たちが、いかなきゃ」







--彼が貫かれるその瞬間を見ていた。

 彼の首が飛んでいくその瞬間も。

 すでに音は何も聞こえない。霞んだ視界で飛び散った血液だけがやけに鮮やかだった。

 期待を捨てられない、孤独をいたく恐れる人だ。それでも孤独に慣れようと身を縮こまらせる人だった。

 せめて、せめてそばにと手を伸ばす。

 ああでも、彼もあの人ももう、この視界から消えてしまった。

 手を伸ばした先には、もう、何人も立っていない。


 怒りに震えたままの男たちは足掻いたままだ。休む事なく刃を突き立て続け、超能力を駆使し続ける。まさに、虐殺だ。

 その顔に悟る。

 こちらの声など一切気に留めない、頑なな顔だった。


 話し合いなんて無理だった。

 俺たちでは彼らを癒すだなんて無理だった。

 だって、俺たちですら分かり合えないのだ。同じ傷を持っている同じような存在のはずなのに分かり合えない。

 超能力者と非能力者の話だけではない。

 それだけの話ではなかったのだ。


 言葉にできない虚しさ悔しさも次第に薄れていく中で、その人の言葉が頭の中でずっと繰り返されていた。




「守らなければ。この力を持って、この力を憎んで、でもきっとこの力をなくすことはできないのだから、守るために使わければと思うのです」







--守るために使うのだ。

 今でも、自分の超能力を良いと思えない。

 超能力者として生きて嬉しかったことなんて、それを上回る不幸ばかりで消え去っていった。


 それでもあの時のあの人の綺麗さだけは消し去りたくないのだ。

 あの時、集団に所属した時に誓った。この力を守るために奮うと。

 同時に世界が開けたような気すらした。



「俺たちは、この世界を守らなければいけない。憎まれるだけの力じゃなくて、守るための力にすれば俺は俺を許せる、俺や、あの時力が足りなかった俺たちを許せる」

 あの誓いを貫くために、俺は生き続けるのだ。

 あの人の美しさが損なわれないように。

 たとえ間違えようとも進まなければいけない。


「だから葵さん、俺のことも憎んでください。あなたが間違ったんじゃない。美風が間違ったんじゃない。俺たちが、選んだんだ。それしか道が見えなかっただけだ」


 前世と現世の彼は、違う。

 あの時世界を怨んでいるような、憎みきれないような瞳をしていた彼はもういない。

 それが良いのか、悪いのかは俺には決められないが、少しだけ、そこに好きだったあの人の瞳を思い出すのだ。

 だからきっと、彼のそばに居る俺は、あの人を、その心を忘れずにいられる。




「このたたかい、俺が勝ちます」

 同じ歴史を、俺たちは繰り返さない。





 悪意も感じさせないような顔をした超能力者と対峙する。

 彼はやはり、憎むわけがないと叫ぶのだ。その声の中にも、あの人が生きているような気がした。




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