無感動多才少年-1
今日も、彼は変わらない笑みを浮かべてまわりを振り回すの。
――ねえ、全部貴方の所為なのよ。
知ってた?
この間貴方に近づいた女はね、今頃故郷で泣き寝入りよ。
この間貴方に手を出そうとした男はね、今頃体中がまっかっかね。
貴方に関わったから。
貴方の視界に入ったから。
貴方を手に入れようだなんて、そんな分不相応な願いを願ってしまったから。
貴方は、麻薬。
一度手に触れてしまえば、もう離れられないの。
そんな中毒性。
一度味わってしまえば、じわりじわりとその身を蝕む。
そんな危険性。
自分から貴方を欲したわけではなかったのに。
もともと貴方に興味なんてなかったのに。
貴方は怖い人ね。
……なんて、本当に怖いのは私たちのほうなのかしら?
貴方が欲しくて欲しくて、こんなにも焦がれるなんて。
貴方のものにしてほしくて、こんなにも誰かを陥れるだなんて。
でも恋愛なんて、そんなものじゃない?
ね?
私だって所詮はその一人。
こうしているのが誰かに知られたら、確かな明日なんて約束されないの。
どう、このスリル。
ぞくぞくしちゃう。
たまんないでしょ?
でも、そうね。
もし明日私が誰かに殺されてしまったとしたら、貴方、悲しんでくれるかしら?
貴方、私のこと気にしてくれる?
……きっと無理ね。
だって貴方、私たちなんて眼中にないんだもの。
いつもいつも何かを考えて、誰かのことでも思っているのかしらなんて。
そう言えば私、貴方のことあまり知らないのよね。
ただ、たまにこうしてヴァイオリンのコンクールの賞を総なめしにくるって、それくらい。
何処に住んでいるのかも。
どんな友好関係なのかも。
――ああ、そういえば。
貴方、故郷に友人がいるんですって?
なら考えている事って、その子たちの事かしら。
なら、もしも明日まだ無事だったら、貴方のおうちにでも行こうかしら。追いかければ分からなくったって平気よね。
それに、貴方が気にかけるものなんて、私以外いらないわよね。
それでそこに住みついちゃおうかしら。
それから、……。
なんて、無理か。
だって貴方、他人を自分の領域に入れるの嫌いだものね。
どうせ貴方の家、なんにもないんでしょ?
誰もいないし。
なんにもない。
まるで、貴方みたいな。
あーあ、残念。
なら、せめて。
今夜だけ。
ひとときでいいから。
貴方を教えてよ。
するりと細い首に腕を回せば、あとはもう――




