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ノアの鳥船 ~転生少女に世界を救えって、むちゃくちゃです  作者: 紡里


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7/10

7.名付け

「名前を付けると、意思疎通ができるようになるんだよね」

 その度にギフトを使ったことになるなら、先ほどのチャラい神様とのご縁が深まってしまう。

 そう考えると、なんとなく気が乗らない。


 迷っているのを見抜いたのか、待ちくたびれたのか、ダチュパがぐいぐいと顔を押しつけてきた。

「あ~、わかった。もう」


 ノアを乗せていたから囮に巻き込まれたわけだし、盗賊に襲われたときにパニックにならずにその場にいてくれた。

 多少の恩は感じる。


「えーと、ダチョーとか?」

 ダチュパ八号は首を振る。

「駄目なの? じゃあ、ミュー」

 鳴き声がそんな感じだったから。


 ミューの身体が光った。


『ありがとう。あたしはミューね。よろしく』

 かわいいギャルのような声だった。

 性別を気にしていなかったが、ミューはメスらしい。


 それを見ていた水牛が、尻尾を揺らしながらノアに身体を擦り付けた。

「え、あなたも?」

 ノアは思わず声を上げてから、ヒューイとミューを見た。


 ヒューイは少し考え、爪で頭をかしかしと勢いよくかいた。

『ノアはしばらくこの辺に隠れ住むつもり?』

「……そうね。家族のところには戻りたくないけど、このまま一人で歩いていたら、人さらいにつかまるだけだから」


『それなら、この水牛の縄張りに連れて行ってもらうのがいいと思う』

 ヒューイが羽ばたいて、水牛の背中に移動した。


『そーだね。安全な水場の近くがいいね』

 ミューもヒューイに賛同する。


「街道を通るだけで、この土地のことはよく知らないもんね」

 言われてみれば、そうだ。

 気付かずに危険な猛獣のエリアに入ったら、大変だ。


「えー、それじゃあ、名前だよね。角があるから男の子?」

 水牛は頭を上下に振った。

『水牛は雌でも角があるよ』

 ヒューイが新しい知識をくれた。


「カウとかバッファローとか……ウシ、ワギュー、モッツァレッラ・ディ・ブファラ」

 ノアは前世の言葉をいくつか挙げた。

「んじゃ、ワギューでどう?」


 水牛がうなずくと、ふわりと光る。

『僕はワギューなんだ。わーい。みんなに自慢してこよう!』

「ちょっと待って。他の人も名付けなきゃいけないとか、困るから」

 ノアは無邪気に喜ぶワギューを止めた。


『なんでさ?』

 ワギューが首をかしげる。


「だって、みんなに名前をつけたら、情が移るでしょ。情が移ったら……食べにくくなるじゃない」

 ノアはうまい言い訳が浮かばず、正直に答えた。


『食べるの? 僕たちを?』


「……人間はお肉を食べる生き物なのよ」

 遭難した場合、ダチュパも食べる。だからミューに名前をつけるときも、ためらった。

 この先、食糧難になった場合に処理できなくなり、共に餓死する可能性が高くなったぞ――と。


『そっか。じゃあ、食べられないくらい強くなるね!』

「……そう来たか」


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