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ノアの鳥船 ~転生少女に世界を救えって、むちゃくちゃです  作者: 紡里


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5.逃げる

 ノアはこの事態をどうしたらいいのか考えた。

 盗賊から逃げたい。

 家族とは合流しなくていい。

 安全な場所に行きたい。


 盗賊たちは、水牛が近づいてくるのを呆然と見ている。

 ノアはそっとダチュパの方へ近づいた。

『八号。立てる?』

 小声で尋ねて、手綱を軽く引く。


 八号と呼ばれたダチュパは立ち上がったが、足を痛そうにしている。

「一人なら逃げられる? 私が乗るのは無理そうね」

 ダチュパはうなずいた。


 どうするか。ノアが考えて、決めなければならない。

 今までは父が全てを決めていた。


 自由という開放感と、心細さが同時に沸き起こる。

 感情は、今は必要ない。

 どうするのがベストか、考えろ。


 ノアは両手を胸の前で組んで、口を開いた。

『水牛のうち一頭は、こっちに来て。他の子たちは、盗賊を蹴散らして』


 水牛たちが一斉にブウォーと声を上げた。

 土煙が立っている。


「な、なんでこっちに来るんだ」

 盗賊の一人が、逃げ出した。

 二頭の水牛がそちらに向かう。


「あ、あいつらと合流して……」

 家族が逃げた方とは逆の方向を向く盗賊がいる。

 あちらには、逃げ遅れた次兄や護衛を襲っている仲間がいるのかも。


『倒れている人を襲っている盗賊がいたら、やっつけて!』

 視線で行ってほしい方向を示すと、二頭の水牛がそちらに向かった。


 ノアの前には三人の盗賊。

 向かってくるのは六頭の水牛。


「来るな、来るなよ」

 錆びた剣を震えながら構えている盗賊。


 一番早い水牛が目の前に来た。

「ぎゃー!」

 盗賊が頭を抱えてしゃがみ込む。


 それを無視して、水牛がノアの前に来て、急停車した。

『ありがと。乗っていい?』

 水牛の背中に手をついて、よじ登った。鳥のヒューイは肩から飛び立ち、周囲を旋回している。


「な、なにしてるんだ? お前、命令できるなら助けろよ」

「助けた後に、ひどいことされるってわかってるのに? バーカ」

 ノアは言い返した。声が震えてしまったのが悔しい。


 その水牛は回れ右をして、ノアをその場から連れ出した。

 ダチュパとヒューイがその後ろを着いてくる。


 ちらりと後ろを振り返ると、盗賊はだれも追いかけてきていない。

「よかった」

 ノアは水牛の背中に手を置いた状態で、空を仰いだ。


 捕まるところがないので、一度、大きくバランスを崩した。それからは、水牛が速度を落として走ってくれている。

 ダチュパも問題なくついて来ていた。



『ようやくギフトを大量に使ったね』

 空中に光が現れた。

 驚いた水牛が歩みを止める。ノアは前のめりになり、肘をついて身体を支えた。

『ごめん、痛かった?』

 水牛に謝ると、ムウムウと鳴き声が返ってきた。


『ちょっと、無視するなんてひどいなぁ』

 チャラい感じの声がした。


 光が若い青年の姿に変わっていく。

『覚えていないかな。君を転生させてあげた神様だよ』


 前世で見た、ドラマの中でナンパをしてヒーローにやられる雑魚を思い出した。


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