↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの鳥船 ~転生少女に世界を救えって、むちゃくちゃです  作者: 紡里


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/17

16.群れ

 次の日、ノアが木の実の採集に向かおうとしたら、ヒューイが違う提案をしてきた。

『スリングの練習をした方がいいんじゃない?』


「なんで?」

 昨日は小石をまっすぐ飛ばすことができるようになった。でも、コントロールはイマイチ。

 今日も練習できるならやりたい。

 だけど、食料を確保しないと飢えてしまう。


『ノアが強くなった方が、生存確率が上がるから』

「確かに守られているだけより、反撃できた方がいいわよね」

 盗賊たちに追われて、逃げることしかできなかった。あれは苦い思い出だ。


『ノアが自分の身を守れたら、僕たちも敵の攻撃に力を注げるだろ』

 ヒューイの言葉に、ミューもうなずいている。


「嬉しいけど、昨日お休みの日にしちゃったから、今日は食べ物を取りに行かないと……」

『僕とミューで食料を確保する。ワギューがノアの護衛。どう?』

 ヒューイの仕切りで、本日の予定が決まった。



 ワギューは楽しそうに弾むように歩く。

 背中に乗ったノアはがくんがくんと首が揺れて、普通に歩いてほしいと思った。


「ワギュー。申し訳ないんだけど、静かに歩ける?」

『あ、ごめん。僕、嬉しくて』


「なにが?」

 三頭ともノアのために、喜んで働いてくれるように見える。

 ギフト【翻訳】に、好意を増幅する効果でもついているのだろうか?

 そんな不安が胸をよぎる。

 ヒューイとミューは長い付き合いだが、ワギューは会ったばかりだ。


『僕、まだ子どもだから、人のお世話をすることがなくて。大人になったみたいで嬉しいの』

 ワギューは嬉しそうに言った。

 言われてみれば、他の水牛に比べて小柄だ。


 若いから頭も柔軟で、ノアのやり方に合わせてくれるのかもしれない。

 他の水牛だったら説教されることもあったりして?

 いや、野生の水牛は人間の生活なんか知らないだろうから、そんなことにはならないか……。

 ノアはワギューの背中で、そんなことを考えた。



 そんなふうに、ノアたちは工夫して生活を整えていった。


 しばらくして、水牛たちが移動するとワギューを通して言ってきた。

 周辺の草をかなり食べて残り少なくなってきたので、次の場所へ行くという。


 ノアは悩んだ。

 水牛の群れについていくか? ここに留まるか?


 水牛がいたから近寄らなかった動物もいるだろう。

 だが、またイチから水場と火を焚く場所を整えなくてはいけない。


 ワギュー以外の水牛とはしゃべれないし、離れがたいというほど親しくなっていない。

 苦労して作った生活基盤を捨てるのは惜しい。


 だんだん、考えが水牛たちについていかない方へ傾いていく。


『変なのが近づいたら、また命令すればいいじゃん』

 ヒューイが気軽に言った。

「それもそうか」

 あまりギフトは使いたくないけれど、とっさに水牛と蟻が助けてくれたのだ。



「それなら……定住するなら、もっと暮らしやすい場所を探してもいいよね?」

 ここは水牛たちについてきて、そのまま暮らし始めただけだ。水場は近いが、他の条件を吟味したわけではない。


『じゃあ、明日から探そうよ』

 ダチュパのミューが勢い込んで言う。もしかしたら水牛という異種族に囲まれているのが、ストレスだったのだろうか。


「ワギューはどうする? 群れについていく? 私たちと一緒に来る?」

『……どうしよう』

「明日の朝までに、決めればいいよ」

 ノアは魚に串を通しながら言った。塩を振りかけて、塩焼きにするのだ。


『ノアは寂しくないの?』

 なんと答えていいか、わからない。

 ついてきてほしいか、どうか?

 ついてきた方がいい生活ができるか、どうか?


 しっかりと計画を立てて自立したわけではない。成り行きで、目の前のことを解決するので精一杯だ。

 答えられないノアを見て、ワギューは寂しそうに群れに戻っていった。



 翌日、日が昇る前。

『群れについていく。離れた水牛は食べられちゃう』

「そっか。そうだね」

『――命令されたら、残る』

 ワギューはまだ、迷っているようだ。


 だけど、他人の人生を預かることはできない。自信もないし、責任も負えない。

「また、近くに来たら……遊ぼう」

『……うん』


 水平線に日が顔を出す前から、徐々に空は明るくなり出す。

 水牛たちは移動を始めた。昇り始めた太陽に照らされ、彼らの影が長く伸びる。


『まあ、お手伝い感覚だったんだろ』

 ヒューイは少し突き放すように言った。

『付き合いも短いし、別に寂しくないよ』

 ミューはそう言いながら、目を伏せた。


「家族が仲いいなら、それに越したことはないよ」

 ノアは家族から見捨てられて、自立せざるを得なくなっただけだ。

 ほんの少し、ワギューが羨ましかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。