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ノアの鳥船 ~転生少女に世界を救えって、むちゃくちゃです  作者: 紡里


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15/17

15.休暇の話

 水と寝床を確保し、食料も日々調達できるようになった。


 次は、自分の身を守る手段を手に入れたい。

 十歳の身体は成長している最中だ。筋肉も発達していない。


 剣や槍の腕を磨くより、スリングで石をぶつけるのがいいだろう。

 そうすると、ちょうどいい石が要る。


「歩いているとつまずいたりして、ごろごろ転がってるもんだと思ってたけど。欲しくて探すと、見つからないね」

 ようやく十五個の石を揃えた。


 これ以上探すよりも、投擲の練習を始めた方がいいだろうか。


 ノアは幹が太い、大きな木を探した。細い木だと、外れたときに石を拾いに行くのが大変だ。

 けれど大きな木の下では、その木陰で肉食獣たちが休んでいる。


「練習させてね。当たったらごめん」

 ノアはそう話しかけた。ほんの少しギフトを使って、襲われないようにするのを忘れない。


 くあーとあくびをして、寝返りを打つもの。のそりと立ち上がり、少し距離を開けるものと、反応は様々だ。

 とりあえず、食料として認識されなければよし。


 いつも一緒に行動している三頭は、離れたところで待機していた。

 ダチョウのようなミューや水牛のワギューは、肉食獣に近付けない。



「今日は休暇ってことで、みんな自分の好きなことをしてすごしなよ」

 先ほどノアがそう提案したら、三頭にキョトンとされた。

『好きなことって?』

 代表してヒューイが訊き返す。


「遊ぶとか、冒険するとか、美味しい物を探しに行くとか? 私と一緒にいるからできなくて、我慢していること」


 前世の感覚で、働きっぱなしはよくないと思ったのだ。

 ノアを主人として、みんなよく働いてくれる。休暇は必要だろう。ブラックな労働環境は異世界でも良くないと思う。


 鳥のヒューイは首をかしげた。

『好きなことをしていいなら、ノアのそばにいるけど』


「それは休暇にならないんじゃない?」

『どうして? 僕はノアといるのが好きだよ。それにときどき別行動して、好きにしてるし』


 ミューは長い首をゆらゆらと揺らしている。

『休暇って、ノアがあたしの背中に乗らない日?』


「まあ、そういうことかな?」

『それって、立ち上がれないほど疲れた次の日か、明日からすっごく大変になるっていうことよね』

 ミューは顔をしかめている。休む前後は、いつもより働く大変な日という認識のようだ。


「あー、そういう感じか……」

 ミューは物心ついたときから荷物運びの仕事をしていて、それ以外の世界を知らないのだ。


「思いっきり、自由に走るとか?」

『それは食べられちゃいそうで、全力で逃げるときの話?』

 少し前に、盗賊に襲われたのを思い出した。


「ミューは走るのが好きじゃないのか……」

『ノアは歩くのが好き?』

「え……? 考えたこともないわ」

 なんだか哲学的な話になってきた? 



『休暇って、新しいことをやること?』

 ワギューは、一生懸命に考えてくれたようだ。

「それもいいね。ワクワクすることをやるの」


『いつもと違うことをするって、水場を奪われたり、逃げなきゃいけないときなんだよね。ワクワクよりハラハラかも』

「いつもの日常が尊いってやつか」



 余暇を楽しむって、衣食住が満たされた上での贅沢なんだ。

「もしかして、私だけが休暇を必要としているのかな」


 三頭の誰とも感覚を共有できないまま、ノアは幅広の帯に石を載せて、ぶんぶんと振り回した。

 石は木の幹まで届かず、ぼすっと砂埃を巻き上げ、乾いた大地に落ちた。


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