14.ノアは忙しい
トイレを作る描写があります。お食事中の方は、ご注意ください。
ノアは三頭が集めてくれた物を、どうやって運ぶか考えた。
大きめな物はワギューの背中に。中くらいの物はミューにくくりつける。
「ロープがあってよかったわ」
小さい物を自分のバッグに入れながら、ノアはそう言った。
『ロープを持って帰ろうって言ったの、僕だからね』
荷物を運べないヒューイが、そう主張した。
「うん。助かるよ」
動物たちとスキルで話せるようになると、褒めて褒めてと言われる。
素直で羨ましい。
自給自足を目指すなら、縄になる植物を探す必要がある。
けれど、そこまで本格的にやりたいとは思わなかった。
「さ、帰ろうか。街道を行く他の人に見つかったら面倒くさいし」
遺留品の取り合いや、襲撃犯の一味だと疑われることがある。
ノアはミューの背中に乗って、水牛たちの水場まで戻ることにした。
太陽は真上にある。
日が暮れるまでにやっておきたいことは山ほどある。
ヒューイが採ってきてくれた黄色い果実の皮を剥き、口に放り込んで昼食にした。
白い瑞々しい実は、枇杷のような甘い香りを漂わせる。
「なんか、やる気が湧いてくるね」
昼食は果実でもいいけれど、夜は炭水化物とタンパク質を食べたいと思った。
「ヒューイ。この辺で芋を掘って食べている動物っている?」
『猪や鼠が食べてるけど、人間が食べられるかわかんないよ』
それは盲点だった。
『じゃあ、人がよく来る場所で探せばいいんじゃない?』
ワギューが今すぐ連れて行くと言うように、目をキラキラさせている。
「行きたいけど、他にもやりたいことがあるから……方角を教えて?」
ワギューはがっかりしたようだが、顎で方向を教えてくれた。
ノアは目を閉じて、アニメで念を飛ばすシーンをイメージした。
『お芋を掘って、持って来て』
ノアは目を開け、組んでいた両手を解いた。
本当に念が飛ばせたかはわからない。
「持って来てくれたら儲けもの、それくらいの気持ちでいないとね」
そう呟いて、気持ちを切り換えた。
まず、水場の近くに小さなたまり水を作ることにした。
水牛たちが使っている水場とは少し距離を置き、木の枝で地面を掘る。土が軟らかくなったら、手で掬って穴の外に出した。
「スコップがほしいよ」
つい、そんな愚痴が出た。
しばらくすると、水が滲んでくる。
水牛たちの水場と水源は同じだろう。ただ、動物が水浴びした水と直接触れていないという、自己満足でもいい。
どちらにしろ、ギフトを発動して飲める水にしなければならないのだ。
「これで少しは水が使いやすくなるかな」
掘った穴の底には小石を敷き、泥が舞い上がりにくいようにした。
次は火を使う場所だ。
サバンナの草は乾燥している。ちょっとした火の粉でも燃え広がるかもしれない。
ノアは草が生えていない土の地面を選び、周囲の枯れ草を取り除いた。さらに浅く地面を掘り、石を並べて小さなかまどを作る。
「火事になったら、私たちの住む場所がなくなっちゃうものね」
最後は寝床。
地面に直接テントを張るタイプなのだ。夜間に地面から冷えが伝わるし、虫や小さな生き物も入り込んでくる。
「前世の床もついているテントって、すごいよ」
地面には乾いた草を敷き、その上に毛布を広げる。これなら、少しは快適に眠れるはずだ。
今日の戦利品の毛布は、ノアが持っていた物よりもいいものだった。
ノアの毛布がボロボロになって買い換えようという話になった。
そうしたら、ノアの父親の毛布を新しくして、ノアには父親のお下がりをくれたのだ。
「買い換えるなら、私に新品をくれてもいいじゃない」
そんなことを言ったら殴られそうなので、黙って受け取ったことを思い出す。
日が沈みきる前に、トイレ用の穴を掘る。
見えないように囲いを作りたいが、材料がない。それは明日以降に考えよう。
「うん。ひとまず、これで暮らせる場所らしくなった」
ノアは額の汗をぬぐった。
鼠が届けてくれた芋と、ワギューがくれた魚を火で焼いてみた。
いい匂いが漂った。
温かいものなんて、昨日の朝食が最後だ。
「いただきます」
泥臭い魚なのに、胸がいっぱいになって涙が出た。




