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ノアの鳥船 ~転生少女に世界を救えって、むちゃくちゃです  作者: 紡里


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12/15

12.もう今日は寝る

嘔吐と死に関する描写が出てきます。

苦手な方は、ご注意ください。

 携帯食と果実を食べた。

 火を焚くのは大変だし、暗くなってから煙を目当てに盗賊が来るかもしれない。


 荷物の中から薄い毛布を引っ張り出して、身体に巻き付ける。

 神様からもらうギフトで、【コンビニ】とか【通販】とかすごくいいよね。思いついた人は天才だと思う。

【キャンピングカー】もいい。水も安全も確保できる。


 ミューとワギューに囲まれた。ヒューイは木の上で寝るようだ。

『眠れそう?』

 ミューは、ノアの環境が変わったことを知っている。


 温かいスープや夜の冷え込みを和らげる焚き火。

 そんなものがどれほど人間の心を和らげるか、知っているのだ。


「う~ん。頑張ってみるよ」

 ノアはそう答えた。

 疲れ果てていて眠れるかもしれない。

 でも、神経が張り詰めていて眠れないかもしれない。


 足湯とか身体を温めるだけでも眠りやすくなるんだけどな。

 前世では、フットバスを持っていた。適温をキープするものや泡がぶくぶく出るものもあった。

 寒い冬だけでなく、冷房で冷えたときにも重宝した。

 ――そんなことを懐かしく思い出す。


 ミューのふわふわの毛とワギューの体温で、いつの間にか眠りについた。



 眩しい朝日で目が覚めた。

 携帯食も残り少ない。


 意を決して、昨日諦めた遺留品漁りに行くことにする。


 ミューの背中に付けていた荷物は、全て下ろして木の下にまとめた。

 身軽になったミューの背中に乗り、襲われた現場に向かう。

 ヒューイが先導してくれる。ワギューが後ろをついてきた。


『ノア。無理そうだったら、我慢しなくていいよ』

「……そんなにひどい状態なの?」

『まあ、踏み潰されてるからね』

「行くだけ無駄かな?」


『散らばってる荷物があるから、何かしら拾えるだろうけど』


 視界に入ってきた。

 胃がぎゅうっと締め付けられる。

 うっかりしていた。前世で言うところの、事件現場じゃないか。


 ノアは口元を押さえ、ミューから飛び降りる。

 堪えきれずに吐いた。

 貴重なご飯を吐くなんて……頭の中で、そんなことを考えてしまう。

 現実を拒絶するように、全てを吐き出してなかったことにしたいような感覚。


 涙が出る。えずきが止まらない。

 居場所がないと思っていたけど、家族という群れの中にいるだけで、守られていたんだ。


『僕たちが使えそうなものを集めてくればいいんじゃない?』

 ヒューイがそう言い出した。

 ノアは声を出せないので、うなずいた。


 ヒューイが飛び立つ羽の音、二足歩行のミューと四つ足地のワギューが枯れ草を踏んでいく足音がノアの耳に入った。 


 しばらくしても、ノアは四つん這いで動けない状態だった。

 口をゆすぎたいが、水筒に口を付けて汚したくない。胃酸のツンとした臭いがまとわりついて、不快だ。


 吐きすぎたせいか、目眩がしている。

 意識を集中できないため、【製塩】のギフトで水を作るのもできそうになかった。

 正しい使い方ではなく、力業で水をひねり出すのは大変なのだ。


 仕方なく口元を手の甲で拭い、水筒の水を手の平に溜めて口をゆすいだ。

 ぺっと吐いた水が、地面に染みを作る。


「む、無力……」

 自立を諦めて、家族がいるであろう街を目指すか。

 今なら、まだそんな選択肢がある。


 ノアは大地に寝転んだ。

 まだ朝方だというのに、力強い陽ざし。

 腕を顔の上に置いて影を作り、ノアは考えた。

 

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