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ノアの鳥船 ~転生少女に世界を救えって、むちゃくちゃです  作者: 紡里


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11/15

11.まずは水

「ワギュー。今日寝るところを決めたい。水場の近くで、いい場所に連れて行って」

 ヒューイは水牛たちが動き出したら、きっと気付いて戻ってくるだろう。

 今までも、ノアの家族に気付かれないよう、適度な距離で周辺にいたのだ。


 ノアはワギューの背中に乗ってから、身体を前に倒した。

 遠くから見たら、人が乗っているとは思わないように。



 ミューが首をゆらゆら左右に揺らしながら、待っていた。

『遅い。心配した』

「うん。父さんたちが様子を見に戻って来てて、観察してたから。

 あ、ミューは家族の元に帰りたかった?」


 ミューの両親が、あの家が所有しているダチュパの中にいる可能性を考えた。

 名前を付けずに番号で呼んでいたからといって、無関心すぎた。


『僕は自分からノアに名前を付けてほしいって言った』

「うん。そうだね」

『……そういうこと』

「どういうこと?」

 ノアが首をかしげると、ミューは空を仰いだ。


『あ、ヒューイが戻って来た』

 ミューはそう言って話を逸らした。


 ヒューイは、ノアではなくミューの背中に降りた。

 心なしか、ヒューイはしかめっ面をしている。もしかしたら、嫌な会話を聞いてきたのかもしれない。


 ノアは、今日はこれ以上傷つきたくないと思った。

 だから、次の行動の話をする。

「ワギューたちの水場に案内してもらって、それから寝床について考えようと思ってるんだ」

『うん、それがいいね』

 ヒューイがうなずいた。


『広くて、いい水場だよ』

 ワギューの声は、弾んでいた。



 案内してもらった水場の水は、泥が混じっていた。

「あー、うん。そっか。君たちにはこれで充分なんだよね」


 このまま飲んだらノアはお腹を壊すだろう。

 前世の知識を活かして、水を濾過する? 桶や木炭など材料が必要だし、煮沸するための木と火が必要だ。


 ノアは、仕方なくもう一つのギフトを使うことにした。

 水筒を用意し、泥水を両手でひとすくいする。

【製塩】

 心の中で唱えると、水と小さな塩、それ以外の三つに分離した。


「病原菌とかも除去できているといいんだけど」

 ノアは水を飲んでみた。

 風味がない。

「ミネラルとかも除去されちゃってる?」


 もらったギフトをあまり使わないで生きてきたので、細かい部分がどうなっているかノア自身にもわかっていない。

 これから少しずつ、試してみるしかないのだ。



 ノアは、体調が悪くならないか自分を観察しながら、転生する前の神との会話を思い出していた。


『浄化とか錬金術とか鑑定とか、便利なのはもう使ってる人がいるからさ。他のにしてよ』


 そのとき思いついたのが、SNSでの「異世界で塩を調達するのは大変なのでは」という話題だった。

 それで【製塩】を選んだ。川があれば水は調達できるし、と思って。


 それなのに、川が少ないサバンナという環境に生まれた。塩を運ぶ商人の家に転生したので、ありがたがられることもない。


 この能力を知られたら、塩の精製を大量にやらされるかもしれないと、危機感を抱いた。

 岩塩から不純物を取りだして品質を向上させるとか、海に連れて行かれて塩田を横目にこっそり作らされるとか、使い道はあるのだ。


 その場合は、監視されて自由を奪われる。

 疲れ果てていても、鞭打たれて働かされるかもしれない。


 それなら、目障りだと冷遇される方が、まだマシだろう。


 だから、内緒にしてきた。

「役に立ったら愛されるかもしれない」と夢を見なかったのは、前世の知識のおかげだ。


 異世界転生の小説をたくさん読んだ。サバイバルの経験はないけど、知識はある。



 ちなみに、今、ノアがやったのは、泥水から塩の成分を選別するという魔法だ。

 ついでに「それ以外」の中から水の成分を抽出しただけ。

 海水ではないので、精製された塩はほんの一粒。料理にも使えない。


 なんとも使い勝手の悪いギフトだ。

 ノアは水筒に残りの水を入れて、ため息をついた。


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