表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第三部開始】アルジェ・ロッシーニ元王太子妃の剣  作者: ジュレヌク
ダルタニアン騎士学校編アルジェ12歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/30

第八話 元王太子妃のルームメイト

アルジェが十二歳でダルタニアン騎士学校に途中入学した当日の朝、女子寮では小さからぬ騒動が起きていた。


まだ、教室での顔合わせすらしていないのに、この場にいる女生徒たちは、何故かアルジェに反抗的だった。



「それで、自ら進んで協力を申し出る学生はいないのかしら?」



寮母兼教師でもあるサライヤは、黙ったまま下を向く生徒にため息をついた。


今、アルジェを受け入れてくれる部屋がないかを話し合っている。


しかし、沈黙ばかりで、誰も同室を申し出てくれない。


多少の不便はかかるだろうが、ここまで拒否されるとは思ってもいなかった。


こうなった原因が、一つある。


突然入学が決まったことで、アルジェ・ロッシーニには嫌な噂が付きまとっていた。



親のコネを使ったのではないか?


実力などないのではないか?


体に傷を負い、自国で再婚相手が見つからず、こんな所まで男探しに来たのではないか?



そんな馬鹿馬鹿しくも下品な噂に翻弄され、今、彼女たちのアルジェに対する心情はすこぶる悪い。


しかも、隣国の公爵令嬢な上に、元王太子妃という高貴過ぎる身分を持ち出されれば、身分的に勝てる相手など、ここには居ない。


無理難題を押し付けられても、甘んじて受け入れざるを得ないのだ。


何にせよ、面倒事に巻き込まれたくない女子生徒達は、極力発言を控えていた。


更に、女子が消極的なのは、既に、部屋は二人部屋で全室埋まっており、アルジェを受け入れれば、狭い部屋に三人部屋となるのが決まっているからだ。


一日二日なら良いだろう。


しかし、今の最上位学年が卒業するまで、この同居は続くことが決まっている。


サライヤは、半分諦めかけ、自分の家に居候さすことも考え始めていた。


その時、



「はい!」



と手を挙げた女子生徒がいた。


大柄で褐色の肌を持つ彼女の名は、ミネルバ。


周りの非難めいた視線にも堂々としており、唯我独尊を地で行く性格の持ち主だ。


父からは、人の言葉に感情を左右されず、己が目で見たものしか信じるなと、口酸っぱく言われている。


そして、彼女に手首を掴まれ一緒に手をあげさせられているのが、サシャ。


こちらも、他国の出身なのか、額に赤い宝石のような物を張り付けた独特の容姿をしていた。


彼女は、反対とまでは言わなくとも、歓迎とも思っていないらしい。


その感情を隠しもせず、



「ちょっと、ミネルバ!私、良いって言ってないよね!」



と言い切るあたり、思ったことが口から出るタイプのようだ。



「うるさい。アタイは、こういう虐めみたいなの、大嫌いなんだ!」



小競り合いをする二人は、この学年では有名人だった。


ミネルバの父は、S級冒険者として名をはせる人物だ。


どこぞの部族の王子だったと噂をされているが、当の彼本人は、否定している。


妻を病で亡くし、娘を危険な旅に連れて行きたくないと、この騎士学校に無理やり入れたのだ。


ミネルバ本人は、体のいい捨て子だと笑うが、父の思いを知っているからこそ無理に追っていくことはしなかった。


もう一人のサシャは、避難民としてこの国に流れてきた娘だった。


戦乱を潜り抜けるうちに家族ともはぐれ、一人でいるところを、この騎士学校の総長であるトラバー・ダルタニアンに拾われた。


彼女の才能を見抜いたトラバーは、子が居なかったこともあり、現在サシャを養子に迎えている。


平民が殆ど居ない騎士学校においては、二人とも、育ち自体が異端。


しかも、癖の強い二人は、腕っぷしも強かった為悪目立ちし、今では鼻つまみ者と言っても過言ではなかった。


礼儀作法も、何度教えられても身につくことがなく、未だに平民以下の立ち居振る舞いしかできない。


常に騒動を起こす二人を前に、サライヤがため息をついた。



「あなた達、静かになさい。これは、大切な話し合いなの」



アルジェを前に、これ以上押し付け合いのような状況を見せたくない。


ややキツめの口調で叱責すると、



「だって、引き取る奴いないんでしょ?じゃー、しょーがねーじゃん」



とミネルバが見たままをオブラートに包むことすらせずに返す。


同室になるのを嫌がっていた女子生徒すら、アルジェに同情の視線を向けた。


ミネルバは、声がデカく、態度もデカく、空気が読めない。


そして、横に控えるサシャも、ミネルバほどではないが、床に落ちているものでも食べられるなら拾うくらいの事はするほど意地汚い。


到底、元王太子妃のルームメイトになりうる人材ではないのだ。


だが、誰もが、この場が収拾できるのか不安になってきた時、アルジェ本人が、



「よろしくお願いします」



とミネルバに頭を下げた。


そして、顔を上げると、その目が『面白いものを見つけた赤子』のように輝いていた。


その毒気が全くない瞳に、ミネルバが、パッと表情を明るくした。



「なんだ、良いやつじゃん。良かったな、サシャ!」



豪快に笑うミネルバと、



「あ~もう、面倒くさい」



と怒るサシャ。



こうして、変わり者3人衆の不思議な共同生活が始まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ