第四話 中編 ダルタニアン騎士学校への帰還
アルジェの話した内容を理解するのに時間を要したサライヤは、なんとか事の顛末を飲み込むと大きくため息をついた。その様子が説明不足による不満に見えたアルジェは、頼まれもしないのに再び口を開く。
「それで更に時間がかかったのは、ミネルバのお父様がこちらの病院に入る為に一緒に移動することになり……」
アルジェは、ここへ帰るまでにロイスが懇意にしているストールという男の話もした。彼の提供してくれた馬は体力があり、馬車を牽く力も申し分なかったことなどを伝えると、サライヤは机の上にあるメモ用紙に手早く書き留める。
こういった生きた情報は、学校と言った狭い世界で生きている教師達には、なかなか伝わってこない事が多い。今後長距離移動をする際に馬の交換所の情報は、旅を快適に過ごす為の一助となる事は間違いないだろう。
こうして順調に話が進み、無事にルゼリオを病院に送り届けたところまで説明が進むと、
「ルゼリオ様ね。怪我をされていたと聞きましたが、よく帰ってこられましたね」
と、サライヤも安堵の溜息を洩らした。彼女にとってもルゼリオは生きる伝説であり、憧れの人物でもあるのだ。
そして、更にアルジェが、
「ミネルバがこれ以上学校を休むことが許せなかったそうです」
と語ると、
「その配慮に感謝しなければなりません」
と、深く頷いた。
ただでさえ学力面で心配の尽きないミネルバが、長期間休むこととなればアルジェ達と同じ学年に居ることが難しくなる。そうなれば、腕っぷしの強いミネルバは、何の躊躇もなくダルタニアン騎士学校を辞めて冒険者ギルドのドアを叩くだろう。下手をしたら、それに追随してアルジェやサシャまで自主退学を申し出るかもしれない。
最悪の結果を免れたサライヤは、とりあえず、この状況で納得することにした。
「大体の状況は分かりました。ただ、不在が伸びた分授業も進んでいます。穴埋めの為の補修を行いますので、四人は必ず出席するように」
最大限の譲歩をしたサライヤだったが、一人だけ不満を言う者が居た。
「僕とアルジェは、座学においては既に卒業レベルに達していると思うんですけど?」
なんの躊躇もなく思ったことをそのまま口にするフルーレに、サライヤの目が細められた。やっと収まりかけた怒りの炎に油を注いだらしい。
「フルーレ君、貴方は先程から謝罪の言葉の一つもないようですが、今回の件を、どのように感じているのかしら?」
「僕は、単に暴走しがちなメンバーのストッパー役として同行しただけで、行きたくて行ったのではありません。アルジェが行くから、ついていっただけです」
自信満々に言い切られると、そういうものなのか?と思わず納得してしまいそうになる。
しかし、今回の件で矢面に立たされたサライヤは、謝罪の為に毎日米つきバッタのように頭をぺこぺこと下げ続けてきたのだ。今のフルーレの不要にな一言で、ブチリと堪忍袋の紐が切れてもおかしくはなかった。




