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【第三部完結】アルジェ・ロッシーニ元王太子妃の剣  作者: ジュレヌク
ダルタニアン騎士学校編アルジェ14歳

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第三十五話 休学届けを出す元王太子妃

「え?お父様の所へ行くの?」



ある日、ミネルバが、休学届けを申し出た。


どうやら、冒険者をしている父親ルゼリオが怪我を負ったらしい。


本人は知らせるなと言ったらしいが、冒険者ギルドのマスターが連絡を送ってきたのだ。


危険と隣り合わせの生活を送らせたくないと、無理矢理ダルタニアン騎士学校へ娘を放り込んだ話は、仲間内では有名な話だ。


せめて、怪我をしたときくらい、一緒に居ても良いのではないかと手紙の最後が締めくくられていた。



「別に、今更、家族ごっことか興味ないけどさ。まぁ、大義名分あって学校休めるし?」



口ではそう言いながら、ミネルバの顔は、不安で一杯だ。


母を病で亡くし、唯一の肉親である父まで失うことに成ったら、正に、天涯孤独である。


家族と生き別れたサシャも、家族の大切さは重々承知している。



「私も、ついてく」



既に、荷物をまとめて、学校側にもミネルバの付添い人として申請を申し出たという。


最初は許可を出さなかった学校側も、ミネルバの落ち込みようを鑑み、父親の元へと辿り着くまでという制限つきでサシャの申請を許可したそうだ。


こうなると、呆然とするのは、アルジェだ。



「ちょっと、私を置いていくと言うの?」


「アルジェは、貴族だし。絶対卒業しないと駄目じゃん。もし、何かあって帰りが遅くなったら、出席日数とか試験とか、色々面倒臭いことになるでしょ?私達は、学校辞めても生きていける」


「サシャ、それは心外だわ。私だって、学歴に左右されずとも、生きていけるわ!」



論点がズレ始めていることに気付かないサシャとアルジェに、フルーレが待ったをかける。



「二人とも落ち着いて。先ずは、ミネルバを父親の元まで連れて行く。OK?」


「うん」


「そうね。それには、賛同するわ」


「それなら、サシャ一人の付き添いより、俺ら三人で付いていったほうが、確実で早い。OK?」


「うん」


「それは、間違いないわね」


「なら決まりだ。アルジェ、準備して。俺は、君と私の分の申請を出してくる」


「え?フルーレまで付いて来るの?」



途端にいやな顔をしたサシャだが、自分の部屋へと走っていくアルジェを止めることも出来ない。



「分かってるだろ?アルジェは、絶対君達に付いていく。そうなれば、僕も付いていく。僕達は離れられないのさ」


「やだぁ」



アルジェのストーカー兼護衛を自負するフルーレにとって、彼女と旅に出られるなどご褒美以外のなにものでもない。


しかし、男子が一人加われば、それだけ気を使うことも多いため、サシャ達にとっては邪魔者でしかない。



「嫌なのは分かるけど、今回ばかりは我慢して。ほら、あのミネルバを見て、放っておけないと思うのは、なにも君達だけじゃないんだから」


常に体からエネルギーを放出しているようなミネルバが、父を心配するあまり背中を丸め地面を眺めている。


そういった心の中の小さな心配事は、戦闘時に思わぬ不安要素になったりもするのだ。


咄嗟の判断が遅れは、怪我をするだけでなく、命を落とすことすらある。



「万全の体制で、彼女を父親の元へ送り届けることを最優先しよう」


「なんでだろう。あんたに言われると、当然のことを言ってるだけなのに、めちゃくちゃ馬鹿にされてるような気分になる」



聞き分けのない子供を諭すようなフルーレの物言いが、そう思わせるのだろう。


それは、裏を返せば、サシャが聞き分けのない子供だということだ。



「馬鹿にしていないとは言わないよ」


「やっぱり、アンタの事好きになれない」


「別に好きにならなくていいよ。僕がすきなのは、アルジェだけだから」


「うわ、余計腹立つ」



そうこう話しているうちに、アルジェが、必要最低限の衣服や装備をリュックに詰め込み、走って戻ってきた。


それを見たサシャは、ニヤリと笑い、ミネルバの方を見る。



「ミネルバ、行くよ!」



既に出立の準備を終えていたミネルバとサシャは、それぞれ荷物を用意していた。


今、直ぐここを発てないのは、ペチャクチャ喋って申請すら出しにいけていないフルーレだけだ。



「じゃ、アルジェの申請もアンタが出しておいてね。うちら、先に行くから」


「ずるいぞ、サシャ!」



先程まで余裕をかましていたフルーレの顔に、焦りが生まれる。


そんなのお構い無しのサシャは、アルジェの手を繋いでミネルバに向かって走り出した。



「フルーレ、よろしくお願いするわ」



アルジェは、一瞬振り返ってフルーレに声を掛けたが、もう前を向いてミネルバしか見ていない。



「くそっ」



ここで、どんなに抗議しようが、彼女達が止まる事もなければ、申請を出さずに付いていくこともできない。


そんな事をすれば、自分だけではなく、アルジェも退学になるからだ。


フルーレは、既に書き上げていた申請書をポケットから出すと、教員室に居るサライヤの元へ走った。


数分後、再び騒動を起こした生徒のせいで残業確定になった担任教師の絶叫が、学校に響いたのは言うまでもない。


ここまでで、第三部完結です。続いて、第四部大空の下編が始まります。私が書きたかった自由なアルジェ・ミネルバ・サシャ・フルーレを楽しんでいただけると嬉しいです。

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