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【第三部開始】アルジェ・ロッシーニ元王太子妃の剣  作者: ジュレヌク
ダルタニアン騎士学校編アルジェ14歳

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第三十二話 噂の的の元王太子妃

冒険者達が集う場末の飲み屋で、今日も日銭を使い果たす勢いで大酒を飲む男が、隣に座る仲間に声をかけた。



「聞いたか?あの噂」


「聞いた聞いた、アレだろ?『キラー・エンジェル(死の天使)』」



隣国メルクルディの元王太子妃アルジェ・ロッシーニが、細身の長剣を舞うように振り、返り血一滴すら浴びずに雄鹿の頚動脈と脚の腱を瞬時に切り裂いた話は、瞬く間に街に広がっていった。


獣を一刀両断したフルーレは、『デビル・デューク(悪魔公爵)』


一矢で急所を狙い撃ったサシャは、『ルナティック・ハンター(狂人狩人)』


跡形もなく猪の頭蓋骨を粉砕したミネルバにいたっては『スクイーズ・マシーン(圧搾機)』だ。


獣狩り後に肉の解体業者が現場に入ったが、品質的の最も優れているのが天才狩人サシャの獲物だった。


そして、わざわざ言うこともないが、商品にすらならなかったのはミネルバのミンチ肉だ。


粉々に砕かれた骨が、肉に混じって分別も出来ない。


そのまま地中深くに埋められ、他の獣が寄ってこないようにするので精一杯だった。



「それにしても、ヤバイ奴等が出てきたもんだな」


「まったくだ。一人でも凄いのに、それが四人組だぞ?勝てる気がしねぇ」



ギルド内でも、現場に居た新人冒険者が、命を救ってもらった感謝を声高に吹聴する。






元王太子妃は、足音も立てずに戦場を駆け抜け、通った後は屍の山だった。


公爵令息の振る剣は、流れ星のような閃光を描き、獣を紙切れのように切断していった。


ダルタニアン騎士学校長の養女は、目にも留まらぬ速さで、辺り一帯に矢の雨を降らせた。


S級冒険者の娘は、笑いながら獣を叩き潰し、返り血で真っ赤に染まっていた。




大乱闘に興奮した彼らが、尾ひれ背びれ……とも言いがたい事実を公にしてしまったことで、一気にアルジェ達の注目度は上がっていた。


しかも、内二人が貴族だというのに、冒険者登録をしてパーティーまで組むという。


依頼は、学校を通して行われることになったようだが、彼女達の次の動向が気になるのは仕方ない。


何せ、同じ依頼を取り合うライバルになる可能性もあるのだから。



「にしても、ミネルバは、父親似だな」


「そりゃ、間違いね~」



腕力で全てを殴り倒すスタイルは、漆黒の流星と呼ばれる父ルゼリオ譲りだ。


母ルーラは、ルゼリオに負けず劣らずの長身美人だったが、戦い方は洗練された剣だった。


元騎士だと噂されていたが、真偽のほどは分からない。


ただ、ルゼリオがルーラにベタぼれで、他の男を寄せ付けまいとけん制しすぎた結果、あまり人と話をしないイメージだけが残っている。



「それで、ルゼリオには、誰か知らせたのか?」


「あぁ、ギルド長が、連絡を取ってるみたいだな。今回の通り名を聞いて、大笑いしてたらしいぜ」


「あぁ、ミンチだったか?」


「いや、スクイーズ(圧搾)だってよ。解体業者が行った頃には、ペタンこの萎びた干し肉みたいになってたらしいぜ」


「そりゃ、恐ろしい」



ガハハハハと噂話を酒の肴に、冒険者達は会話を楽しむ。


赤子の頃から知るミネルバの活躍は、彼らにとっても嬉しいものなのだろう。



「もう一杯!」



ビールを追加注文すると、



「飲み過ぎだよ!」



と女将に怒られたが、知ったこっちゃない。



「これが飲まずにいられるかってんだよ」



久しぶりに気持ちが上がる楽しい話だ。


まだまだ噂話に花を咲かせたい。



「ミネルバは、まぁ、分かるさ。両親が冒険者なんだからな。しかし、リーダーは、元王太子妃なんだろ?そんなにメルクルディ国って武闘派だったか?」


「いや、どうだろうな。国としては、そこまでじゃないだろ?しかし、ロッシーニ公爵家って言えば、さもあらんてところだな」


「あぁ、あの家か」



カナル国と国境を接する立地から、長年緊張感を有する領地である。


しかし、カナルがあえて攻め込まないのは、ロッシーニ家が自国の侯爵家から妻を娶った関係性以上に、彼らの武力を恐れてのことである。


剣技に置いては右に出るものは居ないと言われる領主ラクロアには、優秀な息子もおり、今後も鉄壁の守りに揺るぎはないだろう。


ロッシーニ家とカルナ国との友好関係も悪くないため現状脅威ではないが、もし、何かあれば最も注意すべき相手である。



「娘がアレじゃ、父親なんて魔王みたいなもんじゃねーか?」


「確か、初代が、『剣聖』だろ?まず、剣じゃ、勝てないだろうな」



グビグビと酒を飲み干しながら、冒険者達は、更に楽しい気分になってきた。


今まで、自分達を見下ろしていた高みの存在が、なんと共に剣を振るう仲間になるかもしれないのだ。



「俺、今度、獣狩りがある時は、参加しようかな」


「お、それいいね。俺も、行くわ」



数ヵ月後に行われる予定の獣狩りは、今回狩り過ぎた事で中止になっている。


しかし、次回への応募が今から満員になっていることは、アルジェ達は何も知らない。


おはようございます。時間が取れず返事が遅れてすみません。また、時間が出来たら返しますので今しばらくお待ちくださいませ。

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