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【第三部開始】アルジェ・ロッシーニ元王太子妃の剣  作者: ジュレヌク
ダルタニアン騎士学校編アルジェ12歳

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第十七話 四人組になる元王太子妃


「で、なんで、アンタが、ここにいんのよ?」



不満げなミネルバの目の前に、大きなリュックを背負ったフルーレが立っていた。


今日は、四人一組で森を探査する実地訓練の日だ。


通常は、二人部屋の人間が、組を作ってチームを構成する。


しかし、三人部屋のアルジェ達は、その能力値の高さから、三人での参加を余儀なくされていた。


それなのに、当日になってフルーレが、アルジェ達の班に入ることになったと教師に言われたのだ。



「なんでと言われても、僕、一人なんだ」



入学当初は、フルーレも二人部屋だった。


しかし、相方が、フルーレの実力を前に己の才能のなさに打ちのめされ、途中退学してしまったのだ。


それ以来、彼は、一部屋を独占している。



「よかったら、アルジェ、いつでも僕の部屋で同居出来るよ」


「謹んで、御断り申し上げるわ」



直接対決以来、事あるごとに口説いてくるフルーレに、アルジェは、辟易としていた。


なにせ、何処にいても現れるのだ。


ミネルバ達とカフェでケーキを食べている時も、気づけば隣に座っていた。


気配を消すのが上手過ぎて、気味が悪い。



「僕だって、今日まで三人で参加だと思っていたんだ。でも、今朝になって、チームメートが突然二人揃って腹痛だって言い出してね」



本気で病欠だと思い込んでいるフルーレは、不思議そうに現状を説明するが、彼以外の三人は、そのチームメートが休んだ理由を察した。


ただの、仮病だ。


その二人は、自分の実力不足を認識しており、今、実地訓練を受けても、ケガをして帰ってくるのがオチだと分かっていたのだろう。


しかも、突然休めば、フルーレに嫌がらせも出来て一石二鳥。


本人達は、今頃、してやったりとほくそ笑んでいるだろうが、世の中、そんなに甘くない。


社会に出て通用する技でもなければ、教師も、見抜けぬほどの節穴でもない。


内申書には、手厳しい評価が書き込まれていることだろう。


アルジェは、チラリとフルーレを見て、



「足を引っ張らなければ、それでいいわ」



とだけ伝えた。


この探査も、全て単位となり、成績に直結する。


実力だけを見れば、これほど頼もしい相手はいない。



「流石、アルジェだね」



多くを語らず、的確な判断を下すアルジェに、フルーレは、ブンブン尻尾を振る大型犬のように傍に侍る。


この様子に、驚く者は、随分と減った。


それだけ、フルーレは、毎日彼女を追いかけ回しているのだ。


遠くで何人かの男子生徒が、羨ましそうにフルーレを見ていた。


彼らもアルジェに声を掛けたいのだろうが、悲しいかな、多分名前すら憶えられていない。


そんな中、悲しいほどに自分のことを分かっていない一人の男子生徒が、



「なんだ、フルーレ。お前、いつから、犬になったんだ?」



と声をかけてきた。


それは、以前、フルーレがアルジェとの対戦を代わってあげた生徒だった。


本来なら、退学すらあり得るところを、フルーレが対戦相手に代わり、アルジェと壮絶なバトルを繰り広げられたことで有耶無耶になり、難を逃れていた少年だ。


フルーレは、彼に、いつもの得体のしれないスマイルを向けた。


心の中で、



『コイツ誰だ?』



と思っていたが、表面には出さない。



「羨ましいのかな?」


「羨ましいことなんか、あるか!」


「そうなの?僕は、最高に幸せな犬さ。アルジェも、そう思うだろ?」


「思わないわね」



淡々と答えるアルジェと、ブンブンと尻尾を振っているように見えるフルーレは、目の前の生徒そっちのけで話を続ける。



「今晩のごはんは、自分達で作るんだよね?」


「そうね」


「何がいい?猪?鹿?何でも、狩ってくるよ」


「食べれるものなら、なんでもいいわ。寝る時間の方が重要だもの」



今夜は、二泊テントを張って過ごさなければならず、食事も現地調達が基本だ。


非常食の持ち込みは許されているが、あくまで、非常事態のみ食べられると決められている。


もし、獲物を狩れなければ、その辺に生えている雑草でも食べて、体力を温存しなければならない。


狩りは出来ても、解体が初めての生徒も多い。


この状況で、ピクニックにでも行くような気楽さで待機するのは、アルジェの班だけである。



「おい、アルジェ、フルーレ、行くぞ」



気の早いミネルバが、さっさと歩きだしてしまった。


まだ、始業の鐘も鳴っていない。



「ちょっと、張り切りすぎ」



苦笑しながらも、サシャもウキウキ後をついて行っている。


アルジェは、机の上のリュックを背負うと、



「行くわよ」



とフルーレに声を掛けた。



「了解」



他のメンバーの倍はありそうなリュックを軽々と背負ったフルーレは、スキップでもしそうな勢いでアルジェの後ろをついていった。


残された生徒は、ただ、呆然と四人の背中を見送るしかなかった。


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