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関わらないはずの彼女が、面倒ごとを連れてきた

「今日は大人しくしてろよ」


朝の教室で、誰かがそう言っていた。


理由は分かる。

あの問題児がいるからだ。


だが、本人はまるで気にしていない様子で席についていた。


机に頬杖をつき、窓の外を見ている。


(本当に空気読まないな)


そう思いながら、自分の席に座る。


——いつも通りのはずだった。


午前の授業が終わる頃だった。


ざわつきが教室に広がる。


「おい、なんかあいつ呼び出されてたぞ」


「また何かやったのかよ」


視線の先にいるのは、彼女だった。


担任と一緒に廊下へ出ていく。


嫌な予感がした。


(関係ない)


そう思うのが普通だ。


実際、関わる理由はない。


なのに。


気づけば、廊下に出ていた。


「ちょっと待て」


声をかけたのは担任だった。


「お前は来なくていい」


「……分かってます」


そう答えたのに、足は止まらなかった。


廊下の先。


彼女は壁際に立っていた。


教師が何かを話している。


内容は聞こえない。


ただ、空気が重い。


しばらくして、教師が去る。


残ったのは彼女だけだった。


「なにそれ」


俺が近づく前に、彼女が先に言った。


「別に」


短く答える。


「また何かやったんだろ」


「うん」


あっさり肯定。


(否定しないのか)


普通なら言い訳くらいする。


でも彼女は違う。


「教科書、投げた」


「……は?」


「ムカついたから」


理由になっていない理由。


だが、彼女は本気だった。


その瞬間、周りの視線が集まる。


(また面倒なことに……)


そう思ったときだった。


視界が揺れた。


一瞬、世界が薄くなる。


灰色が強くなる。


(……戻った)


さっきまで薄かった色が、戻る気配がない。


理由は分からない。


だが、確実に彼女が絡むと起きている。


「ねえ」


彼女がこちらを見る。


「また来てくれたんだ」


「別に」


即答する。


「勝手に来ただけだ」


「ふーん」


少しだけ笑う。


その笑い方が、妙に引っかかった。


「普通、来ないよね」


「……」


答えない。


「じゃあさ」


彼女は一歩近づいた。


「来た理由、ちゃんと言ってよ」


(面倒だ)


そう思うのに。


口が勝手に動く。


「……放っておけなかっただけだ」


言ってから気づく。


それは一番、言いたくなかった言葉だった。


彼女は少しだけ目を細める。


「それ、優しさ?」


「違う」


即答する。


だが。


世界の灰色は、戻らないままだった。

読んでいただきありがとうございます。


少しずつ、静かな日常が崩れ始めてきました。


本人はまだ「関わっていないつもり」みたいですが、周りはそう見ていないかもしれません。


次回もよろしくお願いします。

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