表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

問題児の彼女は、今日も普通に距離を詰めてくる

昨日の違和感は、まだ頭の中に残っていた。


女子と話しても、世界が灰色にならなかった。


そんなこと、今まで一度もなかったはずだ。


(気のせいだ)


そう結論づけるのは簡単だった。

実際、それ以外に説明もできない。


だからいつも通り、何もなかったことにする。


教室に入ると、すでに騒がしかった。


「おはよー」


「今日の課題やった?」


そんな何気ない会話。

その中に、例の彼女の姿はあった。


机に突っ伏している。


「……おい」


隣の席だから、自然と視界に入る。


「起きろ」


軽く声をかけると、ゆっくり顔だけ上げた。


「なに」


不機嫌そうな目。


「朝から死にかけてるな」


「別に死んでないし」


短いやり取り。

それだけで会話は終わるはずだった。


なのに。


「ねえ」


また、声がする。


昨日と同じ距離感。

同じ無遠慮さ。


「昨日のさ」


彼女は机に頬をつけたまま言った。


「なんか変だったよね」


「……何が」


「いや、あんた」


じっとこちらを見る。


「ちょっとだけ、普通じゃなかった」


その言葉に、思わず手が止まる。


(やっぱり気のせいじゃないのか)


「意味が分からない」


そう返すのが精一杯だった。


「そ」


興味なさそうに視線を外す。


それだけで終わる……はずだった。


放課後。


担任に呼び出された。


「ちょっと頼みがあるんだが」


嫌な予感がした。


「この資料、職員室まで運んでくれないか?」


分厚いプリントの束。


一人で持つには微妙に面倒な量。


(最悪だ)


断る理由もない。


「……分かりました」


そう答えた瞬間だった。


「私も行く」


横から声。


振り向くと、問題児。


当然のようにそこにいる。


「は?」


「暇だし」


理由になっていない理由。


「いや、来なくていいだろ」


「いいじゃん。どうせ暇だし」


会話が成立していない。


担任はなぜか満足そうに頷いた。


「仲いいな、お前ら」


どこを見てそう思った。


気づけば、二人で廊下を歩いていた。


資料を抱えたまま。


沈黙。


普通なら気まずい空気。


なのに、不思議とそうでもない。


「ねえ」


彼女が先に口を開く。


「昨日のやつ」


「だから何の話だ」


「灰色」


その単語で、足が一瞬止まる。


「……何だそれ」


誤魔化すように歩き出す。


「いや、なんかさ」


彼女は少し前を歩きながら言う。


「話してるとき、あんたの顔だけ違った」


「気のせいだろ」


即答する。


「ふーん」


信じていない声。


沈黙が戻る。


職員室までの短い距離が、やけに長く感じた。


(気づかれてるのか?)


そんなはずはない。


あれはただの錯覚だ。


そう思いたかった。


なのに。


「ねえ」


まただ。


「また話していい?」


軽い調子。


断る理由はある。

あるはずなのに。


「……勝手にしろ」


そう答えていた。


灰色のはずの世界が、少しずつズレていく。

読んでいただきありがとうございます。


少しずつ、静かなはずの世界に変化が出てきました。


本人はまだ気づいていないみたいですが、周りはすでに騒がしくなり始めています。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ