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 人舎の外にいたのは、数十人はいるであろう鎧姿の兵士たち。後太郎を囲むように槍を構え、攻撃の機会を伺っている。顔は見えないがどうせミノタウロスだろう。

──なら、全員殺すまでだ!

「死ねえええっ!」

彼は手近な一人に殴りかかる。ゴッ、と打撃音が響くが──そのミノタウロスは倒れない。

ファンファーレが鳴る。対鎧兜のレベルが2になったと。

──まずい。

狂気に浮かされた脳ですら理解できる、圧倒的不利。

攻撃レベルが適用されるのは中身の牛ではなく、外側の鎧兜とは、何たる誤算だろうか。

あと何十度か殴れば逆転の目はあるかもしれないが──この人数相手にそんな立ち回りができるとも思えない。

「くっ、一旦逃げ──」

背を向け、駆け出した瞬間、背に燃えるような熱を感じた。後太郎は地面に倒れる。

背中が焼けるように熱い。手をやって確かめると、血がべったりと手にこびりついた。

──槍を、投げつけられたか。

投げ槍の名手でもいたのだろうか?少なくともこれでうまく逃げ切れる目もなくなった。怪我をして槍が刺さった状態で、うまく走れようはずもない。

ガチャガチャと鎧の擦れる音を響かせながら、兵士たちが迫り、後太郎を槍で突き刺す。何度も。何度も。

全身が燃やされるような熱さと、体から熱が流れ出していくかのような寒さを同時に感じながら、後太郎は息絶えた。


 「こいつは……なんだったんでしょう?」

鎧姿のミノタウロスの一人が、ボロ切れのようになった死骸を見ながら怯えたように言う。

「さあな。人の顔に二足歩行の体……気味が悪いな。食う気も失せる。湖にでも放り込んで魚の餌にしてしまえ」

軍の指揮者であろう、金の装飾がある鎧のミノタウロスはそう返した。

「運ぶんですか?これを!?」

「当たり前だろう。ここに置いておけば災いを招くやもしれぬ。」

「ええ……」

いやいやと言う感じで、数人のミノタウロスは後太郎の死骸を湖に放り込んだ。それはやがて沈み、浮かび上がることはなさそうだった。

金の装飾を鎧に持つミノタウロスは不安げにしながらも隊に帰投を促し、兵士の一団は街へ戻っていった。

壊された壁とひび割れた地面、砕けた鎖だけが彼の生きた証だった。




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