狂
「なんの騒ぎだ?」
「壁が!壁が壊されている!脱走か?いや……侵入者か!」
騒ぎを聞きつけてミノタウロスたちが集まってきた。人数は5人か6人といったところだろうか。
「そこのお前、何をしている!」
そのうちの一人が後太郎を見つけ、叫ぶ。
「その薄汚い口を……閉じろぉ!!!」
狂気と絶望に突き動かされた後太郎は、躊躇なくその牛頭を叩き割る。
ゴッ、と打撃音がこだまする。うめき声一つあげず、ミノタウロスは糸の切れた人形のように地面にくずおれる。
「ひっ……くそ、だれか、衛兵に連絡を!お前らは先にいけ!俺は時間を稼ぐ……!」
仲間を庇うように手を広げ、後太郎の前に新たなミノタウロスが立ちふさがる。
「うるさい……うるさい!うるさい!お前らが!牛が!人間の言葉を喋るなあああああぁ!」
ゴッ。後太郎の拳はミノタウロスをまた物言わぬ死体に変える。
「俺は認めない!こんな世界!お前らを全員殺して!人間の世界を!人間を!取り戻す!」
死んだミノタウロスを、後太郎は何度も蹴りつける。
ファンファーレが鳴る。鳴る。鳴る。鳴る。
何度目かの、あるいは何十度めかのファンファーレとともにミノタウロスの死体は弾け飛び赤い水溜りになった。
「はあっ、はあ……はあ……」
帰り血に塗れた後太郎の耳に、地鳴りのような多人数の足音が聞こえた。
「また来たか……全員、全員殺す!」
目を血走らせた彼は、壁を破壊し、外に躍り出た。




