九月二十七日
「創太、文化祭ってどうよ」
「いいんじゃないか。学校で生徒が羽目外せる行事だろ。楽しみだけど」
「そうだよな。なんか前小学生の頃来た時に学校で堂々とデートしてる生徒がいたような気がするな。早く来ないかな。俺は彼女とまわるけどおまえは?」
「僕は……誰とまわれるんだろう」
直樹が一時限目のロングホームルームの前に後ろの僕にそんな話をしてきた。そういえば十月二十日に文化祭があるんだ。忙しい時期になんだってそんなお祭りをしなきゃいけないんだろう。……でも楽しみだ。亜悠とまわれたらいいな。
ロングホームルームでは担任の先生が文化祭のクラスの出し物を決めようと提起してそれについての話し合いになった。僕は直樹がどんな出し物がいいか聞いてみた。すると、コスプレ喫茶なんかいいんじゃないか、と言ってきた。……なんだかエッチな妄想をして直樹は言ったんじゃないかとおもうけど、悪くはない。文化祭らしい出し物だ。だけど、ありきたりすぎる。
「じゃあおまえはなにがいいんだ?」
「うーん……そうだな」
お化け屋敷、科学の実験体験、食べ物屋、ゲームコーナー。どれも他のクラスで一度は提案されるモノばかりが浮かぶ。
「あ、そうだ。ヒーリングミュージックを流した心の休まる空間をかたどったアロマサロン風カフェとかどうだろう」
「お、いいな。大人な出し物だな。いいところついてるよ」
「じゃあ意見として発言しておくよ」
我ながらいいアイディアだった。しかし出し物は複数の意見を多数決で決めることになりお化け屋敷に決まってしまった。なんだよ、結局ベタな出し物になったな。お化け屋敷は作るのは面白そうだからそれでもいいけどさ。早速今日からお化け屋敷制作にとりかかるための企画書や予算を話し合うことになり十月二十日の文化祭に向け準備は着々と進められた。
授業が終わり、一人で帰ろうと玄関で靴を履き替えていると近くにいた光村が僕に話しかけてきた。
「あの時は、殴って悪かったな」
光村は少し苦笑いを浮かべてそう言うと黙り込む。彼の表情を見ていると悔いている様子だった。
「いや、いいんだよ。確かにすごく痛かったけど、光村とあんな真剣に話するなんて一生ないかと思ってたから……」
本当に、光村と男らしい話ができるなんて思ってもいなかった。
「あの時は、少しは男らしかったかなあ、ははは」
自然と自分から笑みがこぼれた。光村はそんな僕を見ると彼も笑い出した。
「はは。言うときは言えるじゃんかおまえだって」
ニッと笑う光村。僕が光村とお互いに笑いあってるなんて。光村とわかり合えているんだ!
「おまえの亜悠の対する気持ちは嘘じゃなかった。本気なんだな。こうなってみると、俺も嬉しいぜ……。そういや、おまえまだ絵は描いてんのか?」
「ああ、今も続けているよ。光村は東京の高校に進学するの?」
「そうだ。夢を叶えるために俺は東京にいくさ」
「……俺も夢を叶えたいから絵を描いていくよ」
「前に夢なんかないくせになんて言ってごめんな。俺は自分の事しか考えてなかったみたいだな。だからついあんなセリフをおまえにも亜悠にも言ってしまったけど」
「ああ……」
「俺はおまえのこと応援してるぜ」
もう光村とは学校のヒエラルキーの壁を越えて話ができていることに意外だった。底辺の僕が、あんなに自分の嫉妬と憧れの壁に遮られていたトップの光村となんでこんなに垣根を超えた感覚で話できているんだろう?
「ありがとう、光村もがんばって」
「これからずっとあっちに行ってがんばるからもう会えなくなるからさ。これだけ一言言っておきたくてな」
「ん? なに?」
「亜悠が言ってるように誰にも夢があって、信じて生きていけばきっと未来は自分の中で掴むことができるって感じたんだ。それをおまえからも感じたんだ。だから、ありがとうな」
「え?」
「元気でな、じゃあな」
そうして光村は上り階段を数段上って僕の方を振り向いた。そして拳をつくって自分の胸にトントンと当てるとその拳を僕につきだして去っていった。彼は文化祭を待たずして東京へと転校していった。この出来事はいつまでも学校の思い出として残りそうだ。光村……元気で。
そして学校の玄関をでる。
「創太くーん!」
「あ、亜悠」
亜悠が僕を呼び止めてくれた。彼女と僕は一緒に下校した。
「そういえば、文化祭何するかそっちは決まった?」
僕は亜悠に話しかけた。
「うん、お好み焼き屋になったよ」
亜悠はルンルンとした歩き方でそう言う。出し物に満足してるみたいだ。
「あ、それとね!」
「ん? なに?」
「文化祭のステージで友達と四人でダンスを踊ることになったよ!」
「おお! ついにダンス始めたんだね! ストリートダンスだっけ。よくわからないけどカッコよさそうだもん。ぜひ見てみたいなあ」
「私の友達の高校生のお姉ちゃんがストリートダンス習っていてその人に教えてもらうんだ。ラッキー!」
「ステージ観に行きたいなあ」
「創太くんにぜひ見てもらいたいなあ」
「うん」
「よーし! しっかり練習がんばろっと。帰ったらさっそく友達とダンス練習するんだ」
「おう、がんばれ」
亜悠は目を輝かせて前を歩く。そう、そんな気持ちが僕達には必要なんだ。未来を自分の中で掴んでいくってこういうことから始まるんだ。やっと好きなダンス友達と始められてよかったね! そしてステージでダンスするカッコイイ亜悠が見たいよ。そうして分かれ道で僕らは別れた。家に着くと僕は受験勉強に励んだ。文化祭で亜悠のダンスが見れることを楽しみにしながら。
一か月ぶりの更新ですが読んでくれてありがとうございます。




