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023話 整えられた迷宮

 学院主導の特別迷宮探索は、順調に開始された。


 参加者はレオニスを含む特別クラス全員に加えて、レオニス専属の護衛騎士と魔導師数名が随行している。


 迷宮の難易度は高難度迷宮カテゴリーの中では最も低いとされており、事前資料でも「充分な対策をすれば中級上位相当」とされていた。


「予定通り進行する」


 レオニスの声に迷いはない。

 彼の中にはすでに“攻略手順”が出来上がっている。


(この程度なら問題ない)


 隊列は整然と進む。

 前衛はリシアとフェリ。そのカバーに騎士が待機する、後衛はルナとセレスティア、魔導師が補助する。エリス、ミリア、クラリスは回復と各種支援を担当。レオニスが総指揮を行っている。


 最初に現れた魔物群は、狼型の魔物の群れだった。単体なら難易度は中級程度でも、群れとなると数く難易度は跳ね上がる。しかし、優秀なメンバーを多く有する今のパーティでなら問題はなかった。


「来るよ!」


 フェリが一歩前に出る。

 その動きは速い。


 先頭の魔物を一撃で切り払い、そのまま二体目へ流れるように踏み込む。


「後ろ、抜けるわ!」


 リシアが即座に反応し、フェリの背後に回り込もうとした個体を一刀に切り捨てる。


 その隙に、セレスティアが短く詠唱を紡ぐ。


「そこ、崩します。」


 地面の魔力構造を変化させ、魔物の足元を不安定化させる。


「助かる!」


 フェリがそのまま体勢を立て直し、最後の一体を斬り伏せる。リシアが残りの魔物がいない事を確認してから残心を解いて息を吐く。


「連携、いい感じね」


 レオニスはそれを一瞥する。


「想定内の範囲だ」


 次の区画へ進む。


 罠の反応がいくつか検知されるが、エリスが即座に構造を読み取り、迂回ルートを提示する。


「右側の通路は圧が強いわ。左に回って」

「「「「了解」」」」


 隊列は迷いなく進路を変更する。

 ルナは周囲の魔力濃度を観測して索敵していた。


「魔力流、安定しています。敵影なし」

「問題ないな」


 レオニスは短く頷く。


 中盤に差し掛かると、やや広い空間に出た。

 数体の魔物が同時に出現する。


「来る!」


 リシアが前に出て同時に二体を引きつける。


「一体目は任せて!」

「氷の刃よ、敵を貫け!アイス・ジャベリン!」


 フェリが横からリシアに釣り出された最初の1体に切り掛かる。同時にルナが氷の魔法でつららを作り後続を足止めした。その間にリシアが踏み込み、二体目を切り伏せる。


「次!」


 ルナがつららの一部を解除し、狼型魔物の連携を封じた状態で1体ずつ解放する。それを流れ作業のようにフェリとリシアが順番に討伐していった。


 数分で戦闘は終わった。


 エリスがすぐに前衛組の2人に駆け寄る。


「怪我はない?」


 軽い傷を見つけて即座に回復魔法をかける。


「ありがとう、助かる」


 フェリが息を整える。

 レオニスは状況を確認し、地図を見ながら進行を指示する。


「次の区画へ移動する」



 探索は滞りなく進む。魔物の配置も罠の位置も、すべて事前情報の範囲内だった。だがフェリはふと違和感を覚える。


(簡単すぎる)


 確かに連携はうまくいっている。戦闘も問題ない。

 それでも、どこか“手応えが薄い”。


 前に経験した迷宮とは違う。

 もっと予測できないものがあったはずだ。


(あの人なら、どう見てたんだろう)


 思い浮かぶのは黒衣の男アベル。

 その思考を、フェリはすぐに打ち消す。


(今は関係ない)


 だが、その違和感だけは消えなかった。

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