閑話48話 レオニスの計画
ゲームの内容を知るレオニスが、勇者不在のなか魔王をどうしようと考えていたか……その解説回をSSにしました。
魔王城・謁見の間。
玉座に座る魔王の前で、魔族の幹部達が深々と頭を下げていた。
「しかし、今回の刺客はかつてないほど弱かった。ヒト族の国は、一体何を考えてあんなのを寄越したんだ?」
「陛下。それに関連して、そのヒト族の連中から押収した魔道具について、ご報告がございます。」
研究者の代表者の魔族が発言許可を求めた。
「その魔導具の解析結果が出ましたのでご報告いたします」
「うむ。聞かせよ」
研究者は手元の資料を確認しながら、最初の魔道具を取り出した。
「まずはこちら。マユミ殿下とメアが身につけていた、チョーカー型の魔道具です」
「それが魔道具なのか…?」
「はい。ですが、これは想像以上に恐ろしい魔道具です。」
研究者の表情が険しくなる。
「装着した魔族の思考や意思を奪い、所有者として登録された者の命令に強制的に従わせるのです。」
「……何?」
魔王の眉がわずかに動いた。
「つまり、相手を完全に支配できるということか?」
「その通りです。対象は魔族に限定されますが、抵抗する意思そのものを封じることが可能です。一方で、半魔に対しては効果が限定的だったようで、完全に意思を奪うまでには至らない模様。これはマユミ殿下の証言とも一致しております。」
研究者はさらに続ける。
「そして、捕らえた男の所持品から、もう一つ同系統の魔道具が発見されました。ただし、こちらは大型の個体にも装着できるよう、かなり大型に作られています。」
「大型の個体……」
魔王は顎に手を当てた。
研究者は一度言葉を切ってから、推測を口にする。
「ここからは私の推測になりますが……彼らの目的は、魔王陛下の討伐ではなかったのではないかと思われます」
「ほう?」
「今回の討伐隊は、明らかに実力不足と思われ、例の勇者も不在でした。それにもかかわらず、魔王城へ侵入してきた。そして、魔族を支配するための魔道具を所持していた。これの意味するところは、最初から魔王陛下を、この魔道具を使って支配下に置くことが目的だった可能性が考えられます。」
「我を……隷属させるつもりだったと?」
「可能性としては……非常に高いかと」
謁見の間に、短い沈黙が落ちた。
やがて魔王は――。
「ククク……」
笑った。
「なるほど。ヒト族どもも、なかなか面白いことを考える。だが、どうだ?その魔道具は余に有効だと思うか?」
「い、いえ……。」
遠慮したのか答えを渋る代表研究者を魔王は指差して、解答を迫る。
「構わぬ。率直に其方としての考えを述べよ。」
「は、はい。おそらく効果はなかったものと思われます。魔王様の強大な魔力に魔道具が耐えられないかと…。ただ、万が一はあったかもしれません。」
「ふむ。とりあえずはそれは構わぬか。して、もう一つは?」
「こちらです」
研究者が取り出したのは指輪だった。
「女性捕虜の多くと、男性捕虜の一人が身につけていた指輪です」
「それに何の力が?」
「この指輪は八つで一組になっており、すべてが魔力的に連動しています」
「八つで一組?」
「はい。そして、この魔道具の最大の特徴は――装着者の中で最も強い『思い』を共有することです。」
「思い、だと?」
「喜び、悲しみ、怒り、恐怖……あるいは誰かを想う気持ち。その時点で最も強い感情を持つ者の思いが、他の装着者へ伝わる仕組みになっています」
魔王は指輪を眺めた。
「面白いな」
「非常に高度な精神干渉系の……魔道具というよりはアーティファクトです。単純な通信魔道具とは違い、言葉ではなく感情そのものを共有しているようです」
「なるほど……」
魔王はしばらく考え込む。
やがて、口元に笑みを浮かべた。
「お前たち…。」
「「「はっ」」」
「その二種類の魔道具、こちらで使えるようにできるか?」
「指輪の方は種族制限がありませんので、そのままお使いいただけますが、いかんせんアーティファクトのため複製は今のところ不可能です。チョーカーの方でしたら改造を許可していただけるのであれば直ぐに取り掛かります。これの複製には材料に純ミスリルが必要なため、少しお時間を頂きそうですが。」
「わかった。それで構わぬ。」
魔王は玉座から立ち上がった。
「チョーカーは、魔族の反乱や裏切りを防ぐために使えるかもしれぬ。從魔契約の対抗処置にもな。指輪のほうも、上手く活用すれば部隊間の連携や士気の共有に応用できるだろう。引き続き研究しろ。」
「かしこまりました!」
研究者が頭を下げる。
その姿を見ながら、魔王は楽しそうに笑った。
「ヒト族どもが我らを支配するために持ち込んだ道具だ。せいぜい有効活用させてもらう。」
謁見の間に、魔王の笑い声が響いた。
ゲーム通りの正攻は不可能な状況なので、このような策を講じていました。全く隙がない魔王には結局、無理な話でしたが。魔王以外にドラゴンなみに強力な魔族でもいれば、そいつに魔道具を使って魔王にけしかけて逃げるというのも考えていました。だが、最初に遭遇した魔王の力が圧倒的過ぎて、そういう機会もありませんでしたね。あるいはレオニスの功名心が高くなければマユミだけに何食わぬ顔で戻らせて魔王の隙を狙うのを選択していたと思います。なお、デュラハンは居たとしても、首がないのでチョーカー型魔導具は最初から無効です。
一応ただ無策で突っ込んでいくだけの予定ではなかった事だけ記しておきます。




