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178話 魔王城での死闘

 魔王城・謁見の間に繋がる通路。


 戦場を満たす魔力が、さらに濃くなる。


 魔族の迎撃部隊は、じわじわと包囲を狭めていた。戦線は明らかに押されている。突入班は次第に謁見の間の中央へと誘導されていった。


「このままでは持たない……!」


 誰かの声が焦りを帯びる。その時だった。


「――私が出る」


 レオニスが一歩前に出る。空気がわずかに変わった。それに合わせてヒロイン達が即座に動く。


 リシアがレオニスの持つミスリルの剣に炎魔法をエンチャントする。

 フェリがそれに風属性強化を重ね、ミスリルの剣が火炎旋風に包まれた。

 ルナがレオニス自身の魔力循環を最適化する支援魔法をかけて、

 クラリスが弱点看破の攻撃補助術式をレオニスの目に構築する。

 ミリアは、レオニスが身につけていた反応速度を上げることが出来る、お手製の魔道具ベルトに魔力を注いで起動し、

 エリスが神聖系の加護を付与する。

 最後にセレスティアが全ての術式の効果を底上げする補助魔法を行使した。


 さらに、レオニスの指示により、マユミとメアが同時に手を掲げた。彼女達の高位魔力が戦場全体へ広がり魔族の動きを悪くする一方でレオニスの身体には膨大な力が流れ込む。


(結局、勇者には覚醒しなかったが、これならば……勇者に匹敵する、いやそれ以上だ……!)


 確信が生まれる。

 いや、確信“してしまった”。


「行くぞ!」


 レオニスが駆け出す。剣が閃く。

 最初の魔族が一撃で断たれる。


 次。

 その次。

 連続する斬撃。


 まるで流れができたかのように、魔族が次々と崩れていく。



「すごい……!」


 兵士の一人が思わず声を漏らす。


「殿下、これほどの力を……!」


 リシアも驚きを隠せない。


「本当に……押し返してる」


 レオニスは笑みを浮かべる。


(そうだ!これが本来の私だ!アベルなど必要ない!!)


     ◇


 魔族の陣形が崩れ始める。

 押し返す形になる。

 戦況は一時的に“逆転”したかに見えた。


 しかし、その快進撃は、唐突に止まる。

 前線の魔族が一歩退く。


 次の瞬間、空間が“沈んだ"。


     ◇


「……っ?」


 レオニスの動きが止まる。

 魔力の流れが乱れた。

 バフが一瞬で薄れる。


「なに……?」


 ミリアが目を見開く。


「補助術式が……崩れてる!」


 マユミとメアの魔力も揺らぐ。チョーカーや制約とは別に、空間そのものが干渉している。


 魔族の指揮個体が静かに前へ出る。

 先ほどとは明らかに“格”が違う。


 レオニスは剣を構え直す。


(まだだ……これだけの力があるなら……!)


 だが次の瞬間、魔族が一歩踏み込んだだけで、レオニスの剣が“弾かれた”。


「っ――!」


 衝撃。バフがあるはずの身体が、簡単に崩れる。


(……違う。これは……想定より遥かに上だ)


 快進撃は終わった。


 そして戦場は、再び“押し潰される側”へと戻り始める。

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