閑話41話 暗闇の中のメア
調整話です。短くてすみません。
あのチョーカーをつけた瞬間から、私の意識は深い闇に堕ちた。
何も見えない。
何も聞こえない。
でも、何かを感じる時がある。ちなみに自分で身体を動かそうとすると、気絶しそうなぐらいの激痛が襲う。最初の1回で懲りた。
しばらくすると天から声が聞こえてくるようになった。
『前進。』
『停止。』
『右を向け。』
『歩け。』
なんで、一言の命令なのかはわからないけど、アベルの声だった。だから、私は素直に従った。すると、何だかとても幸せな気持ちになった。アベルの言うことだもんね。幸せに感じるのは当たり前。最初はそう思っていた。
しかし、少しでも命令に背いたり、実行が遅れたりすると容赦なく全身の痛みが訪れる。一方で天からの指示通りにすれば、それだけで満たされた気持ちになる。
『メア。』
『追撃。』
私は何もわからないまま、前方の魔力を持つ集団に向かって攻撃魔法を放った。いつもなら、魔力の色の違いで誰とかの判別がつくのに、チョーカーをつけている状態では全て白黒にしか見えない。あっ、前方の比較的大きな魔力持ちを撃ち損じたみたい。でも、なんか嫌な予感がするので、あれは狙わないでおこう。うん。
しかし、アベルはこんな風に命令しない。だから、きっとこの天の声はアベルの声だけど、アベルじゃない。それはなんとなくわかっていた。
(マユミはどうしてるのかな?私と同じ状況だったら、寂しがり屋のマユミのことだ。きっと辛いに違いない。何とかこの状況お抜けださないと…)
しかし、断続的に下される命令に身体は背くことができなくなっていった。痛みを避け快楽を求めて条件反射的に従ってしまうのだ。魔族はヒト族よりも欲望に忠実で快楽に弱い傾向がある。夢魔であるメアもまたしかり。魔法を放つ時に、少し照準をずらすのが精一杯の抵抗だった。
メアが、この暗闇から本当の意味で解放されるのはいつの日か……




