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閑話39話 エマの油断

 エマは急ぎセレスティアについての懸念、特に指輪の疑惑について報告書を作成し、本国に送ることにした。また、アベル用のミスリル装備をセレスティアが勝手にレオニス殿下に渡したことも記載して、アベル用の装備を再作成するようお願いすることも含まれていた。


 机の上で書き上がった報告書が入った封筒を抱えるように眠ってしまったエマ。そこに落ち着き取り戻したセレスティアが、こっそりと近づいていく。


 本国宛となっている封書の中身を察したセレスティアは、直ぐに行動に出た。自室に戻り、エマの筆跡に似せた字で差し障りのない報告書を作成する。ついでにレオニス用のミスリル装備をリクエストしておいた。これをアベルに渡せば帳尻は合う。


 また、あの勇者に気づかれると面倒そうなので、眠っているエマにセレスティアは《睡眠》と《混乱》の魔法を発動しておく。これで明日の昼過ぎまでは目が覚めないはず。明日は早朝から王城で魔王討伐隊の任命式があり、そのまま出立のため、それ以降、エマと勇者が顔を合わせる機会は、少なくとも当分の間はないはず。セレスティアは封書の中身をすり替えて蜜蝋で封を施しておく。


     ◇


 このセレスティアの裏工作により、指輪についてアルセリア国王が知ることになるのは、相当先のこととなった。だが、これにより彼女の未来は確定することになる。また、アベルのために作られた装備がレオニスに渡った事も結局、知らされることはなかった。


     ◇


 今のセレスティアにとって絆の指輪は彼女のアイデンティティの大部分を構成するほどになっており、これを失うことの恐怖は計り知れなくなっていた。


 だが、絆の指輪はレオニスからヒロイン達への一方通行の思考共有ではない。身につけている8人のうちの誰かの強い想いが共有されるのだ。つまり、ナルシストのレオニスが最も強い欲望と願望を持っているから、レオニス至上主義とも呼べる思考にヒロイン達がなっている。しかし、この指輪を外すことへの強い恐怖心は元は誰のものなのか。それは、着けている本人達にもわからなかった。

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