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閑話01話 好感度の代償

 学院へ入学する、半年前。


 レオニスは王都の執務室でノートを閉じた。


(ミリアの好感度イベント。)


 錬金術師ミリア。

 ゲームでは希少薬草を大量にプレゼントすると、一気に好感度が上がる。

 攻略法として有名だった。


「これなら簡単だ。」


 レオニスは側近へ命じる。


「王都周辺で採れる《月光草》と《命の雫草》を可能な限り買い集めろ。」

「市場から、ですか?」

「市場だけでは足りない。」

「では……。」

「高位冒険者にも依頼を出せ。」


 報酬は通常の三倍。王家の名で募集をかける。


「見つけた分だけ、すべて買い取る。」

「かしこまりました。」



 一週間後。


 王都近郊の普段は誰も入らない森に、多数の冒険者が集まっていた。


「一本一万だ!」

「急げ!」

「まだ奥にもあるぞ!」


 群生地は次々と刈り取られる。

 若い芽も。

 花も。

 種を付ける前の株まで。

 すべて。



 報告を聞いたレオニスは満足そうに頷く。


「よし。」


 山のように積まれた薬草。


「これだけあれば十分だ。」


 彼は知らなかった。

 攻略ノートには「希少薬草を渡す」としか書かれていない。

 どこで採るのか。

 どれだけ採ればいいのか。

 その先のことは何一つ考慮していなかった。



 数か月後。


 王立学院の錬金術科教師が深いため息をつく。


「今年は採れないか……。」

「またですか?」

「群生地が全滅している。」

「全滅?」

「根まで掘り返されている。」


 助手も顔を曇らせる。


「これでは数年は再生しません。」



 その頃、ミリアも森を歩いていた。


「ない……。」


 去年まで一面に咲いていた薬草が一株も見つからない。


「どうして……。」


 肩を落として学院へ戻る。



 一方その頃、アベルは黒霧の迷宮の高難度区域で魔物を倒していた。その帰り道。


 足元を見る。


「……あ。」


 岩陰に見慣れた薬草が咲いている。


「またあった」


 ゲーム知識で知っていた高難度迷宮の隠し通路。

 王都近郊の群生地が全滅した今、希少薬草が自然繁殖する唯一の場所。


「王都近くでたまに生えてる奴だけど、他に珍しい薬草もないし、少しだけミリアさんに持っていこう。」


 その希少薬草を自分だけが採れる状況になっているとは、夢にも思っていなかった。

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