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元公爵令嬢の告解 3

 そんなこんなで、新たな生活を始めてしばらく。

 最初こそ要領も悪く、あたふたするばかりだった私だったけれど、何とか慣れて来て周囲との交流も上手く行っているかなと思い始めた矢先の事。

 『私を捜しに都から来た』という人が、来た。

 役職が変わりなければインディクムの従者であり、言葉を交わした事もなく名を知る事さえついに無かった『あの彼』だったのは、見た瞬間にはっきり分かって……。

 そんな彼の来訪の目的、その理由とはつまり。

「あれらはお前自身をどこか城の奥深く小さな部屋にでも閉じ込め、持つであろう『我から授かりし知識』を根こそぎ引き出すつもりであったようだ」

「ああ、そういう。……そんなもの、無いのにね」


「言葉こそ『我から』などというものだが、小賢しい小娘が相手に疑念を抱かれぬよう言い方を変えたまでの事。要は転生前の知識とやらが欲しいのだろう。先に進んだ技術や制度、それらの都合のよいところ取りをして、己らのみがさらに豊かで安楽で贅沢な生を満喫するつもりであったようだぞ」

「小賢しいって……。じゃあ、四聖の方々も?」

 その考えに同意しているのかと問えば。

「知識を得るのはともかく、お前自身が彼女の目の前に現れる事に対しては、あまり良くは思っておらぬようだな。良きにつけ、悪しきにつけ、誰ぞ特定の輩のみが注目を浴びるのを好ましくは思っておらんようだ。聖女を甘やかし、好意を抱かせ、いずれはその心の全てを手に入れるのは自分であると各々が息巻いている所にのこのこと出向けば、捕らえられ木乃伊の様に絞りつくされるだけ絞りつくされた揚句、嬲られ切り刻まれ廃棄物(ゴミ)として捨てられて仕舞いぞ。人としての姿形も残されまい」

「うわぁ……でもそうなるかー……。というか、そうまでしてでも情報を手に入れようとするんですね」

「聖女に喜んでもらう為なら例え憎き敵からでも……。本当は嫌だけど……。というヤツらしいな。手に入れたあかつきには、お前で憂さを晴らすのが楽しみだそうだが……我もそうすべきか?」

「何をどうするつもりですかやめて下さい」

 シレっとした顔で何言いだすんですか、まったくおっかない。


 事の真相をカエルレウスから聞き出す事が出来たのは、彼が帰ってから数日後。

 というか、もういいだろうって情報が解禁されたあたり、珍しくも彼にしては慎重であった事がうかがえる。

 それもそうだろう。

 なにせ私が『悪神から知恵を授かっているはず(・・)』であり『悪用されないようこちらの手中に収めてしまうべき』と他ならぬ『聖女が』託宣を下したからだ。

 恐らく使者が王都に帰り着き、報告をしたのも確認済みだろう。

 彼の内心を読みとったカエルレウスは、同時に王都の情勢についても調べていたらしい。

 向こうさんにバレる心配?して無いわ。するだけ無駄というものよ。

 だってカエルレウスって神様の中でも特別な部類に入る訳だし、人から見たらチートの塊みたいなものだもの。文字どおりの意味で、だけど。


 そうね、チートなら確かに私も持っていると言えるだろう。

 この世に生きるただの人には、どうやっても知り得無い知識。異界の記憶。

 それらこそ、聖女様が欲しがった、いわゆる転生チート知識と呼ばれるモノ。

 彼女はそれを私も自由に悪用……行使していたと思ったようだけど、本当の所、私自身はそれを利用して、いわゆるNAISEIなどといわれるような行為を特にしていた訳ではない。

 それはまあ多少意見を伝えた事はあるけれども、そもそも私の記憶はカエルレウスも共有しているというか、(主に勝手に)読みとって知っている訳で。

 では何故チンリュの収穫量が増えたり、人口が増えたりしているかといえば。

 それはズバリ『神の手』のおかげなのだ。


 かつて私が生きていた世界には、リセットマラソン、通称リセマラなどと呼ばれる行為があった。

 主に電子機器を行使して遊ぶゲームにおいて、都合の悪い展開になった時に電源を落とすなどして任意の箇所まで戻り再びやりなおす事、それがリセットであり、リセマラはそれを繰り返す行為である。……概ねの意味は。

 正確には、ゲームを始めた一番最初の段階で狙ったアイテムないしモンスターが出るまでゲームの読み込みと削除を繰り返す行為らしいが、似た様なものであると思ってる。少なくとも、私はね。

 で、そのリセマラに近い行為が出来るので、ならやっちゃおうと。


 農業従事者にとって一番の敵は何か、と聞かれたらこう答えるしかない。「自然」と。

 毎朝毎晩汗水たらして、せっかく作った作物が病気でほぼ全滅とか、そんなの悲しすぎるじゃない!

 実際には悲しい通り越して思わず崩れ落ちたし!

 害獣がくれば「あのヤロー!」「次に来たら鍋の刑よ!」とか思うじゃない!

 害虫?恐怖しかないわよ!

 動物だって、きちんと世話をしているつもりでも病気になることだってある。

 母親の乳が上手く飲めなくて餓死する子もいた。

 気付いたら歳を取りすぎていて、もう商品(・・)にするにも自宅消費するにも手遅れで、結局番犬たちの餌にでもするしかなくなってしまった子たちも。

 気がついた時には頭数が減っていて「あれ?数が合わない?」ってなった時も。


 ショックで落ち込んでいた私に、カエルレウスが「少々の時間を巻き戻すくらいならできるが、やるか?」と聞いてきた時には、迷わず「お願い!」って叫んでいたわ。

 時間を巻き戻し、被害状況を軽減できると聞いた時には思わず拝んでしまったくらいよ。

 多分、人生で初めて神に祈った瞬間だった。

 


 で、まあその、結果豊作になった訳で。



 どこぞの聖女と一緒だろって言われても言い返せないかもしれないと思いつつ、でも生活の為だし……と思って止められない自分がいる。

 というか、もうここまできたら引き返せないというか。味を占めちゃったの、私だけじゃないものねえー。

 で、まあ、そのリセット行為に当たる事を(あくまで個人的に)『神の手』と言っているのだ。

 だってカエルレウスさん本当に神様だし、間違ってないと言い張ってみる。


 何でもできると豪語するカエルレウスだけれど、それでも被害を完全に消せる訳じゃないのは『そうなる』のが世界の辿る運命(みちすじ)、あるいは因果と呼ばれるそれであり、決まってしまった運命(モノ)は完全に無かった事には出来ないからだとの事。

 彼に出来るのは、せいぜいそれをいじって加減する事くらい。

 お母様の一生も、疎まれた末に亡くなる事だけは確定していて、彼が手出ししたからこそあの『結末』になったのだと後に聞かされた。


 手出ししていなかったら?それこそ原因様々に自殺他殺問わず死ぬ事から始まって、果ては……あのカエルレウスが私に配慮して口にするのも躊躇う様な悲惨な目に、長期にわたって晒され続けていただろうって。

 で、それが原因で私が自暴自棄になって周囲に当たり散らす様になり、婚約者とも仲違し、果ては聖女によって悪神と共に討たれる未来があったのだとも。

 とはいえ、そこを利用して面白おかしく楽しみ遊びにしてしまう彼も、大概イイ性格をしていると思うわ。

 今となってはそれを利用する私も、同じ穴の何とやら、なのかもしれないわね。


 それでも、ある程度であっても天候や被害状況を操作できるのは本当に助かっている。

 おかげで最近は、少しずつこの辺りの評判も上がってきているらしい。

 実際に人、増えてるし。

 だからなんでしょうねえ、余計なのまで来ちゃったのは。

 でも今さらあんな場所、帰る気無いから。悪いけど。


「聖女については、現在の所持ちあげられてはいるものの、女や老年の男を中心に疑念を持たれ始めているらしいな」

「え、ちょっと早くないですか、それ」

 どれだけ公の場所で不埒な事をしたの、聖女。

「大したことはしておらぬようだぞ。せいぜいが一般開放されている城の前庭で腕組んで散歩だの、敷物広げて茶会だの、商店街で宝石漁りだの毎夜の如く舞踏会だの」

「……大した事ですよ、十分それ」

 というか、何でよりによって前庭なの。

「人に見せる為の庭だけあって、中庭などに比べて趣向が凝らされているからな」

 あ、そう。

 ああいう場所って散策して見るものであって、敷物敷いて眺めるものではないと思うけれど……。

 うーん、これは個人的な趣味と価値観の違いかしら?

 でもねえ、着飾った男女、それも物凄く偏った……が、衆目の中(パートナー)をとっかえひっかえ腕組んで歩くのもどう見られるかって考えると……。

 それに、それだけならまだいいけれど……賭けても良い、きっとそれだけで済んでない気がする。


 高貴な方々が地べたに座り込み飲食とか、金に糸目を付けず買い物とか、豪勢な夜会を毎晩とか。

 貴族だからこそ、あえてそれをする事が必要だというのもあるのでしょうが、それにしても、うーん……。

 クレーマーに格好の餌を与えているようにしか見えないけれど、大丈夫かしら。

 人じゃないから、貴族じゃ無かったからって言い訳、いつまでもつかしらね。

 そもそも周囲の中に彼らを本気で止めさせられる人、いるの?

 ちょっと、不安。

  

 聖女がこの世界を乙女ゲームの世界と断じ、乙女の夢とロマンの逆ハーレムを満喫しているというのは、カエルレウスが楽しそうに教えてくれたから知ってはいたけれど。

「もうゲームも終わったのだし、そろそろ現実にも目を向けて欲しいところね」

 きっと傍目から見れば、美しく幸せな1枚の絵画(スチル)の様に見えるのでしょう。

 でも、きっとそれは彼らだけが思う、自画自賛の産物でしかなく。

 恐らくさほど経たぬうちに、周囲からは様々な邪推の声が上がるのではないかしら。

 私の時のように声高に貶めるのでなくとも、下種な感情を向けられるであろうことは容易に察せられるもの。


 人は、そう簡単に変わりはしない。

 相手が誰であろうと妬心は抱くし、異質なもの、考え方に対する気味の悪さというのは、いつか必ず漏れ出てしまうものだ。

 同じ、かつてゲームをプレイした経験者として、『幸せのはずの象徴絵(エンディングスチル)』がそういう風にしか見られなくなってしまうという事が、少し悲しく思えた。


「あの娘はきっと、この世を直視したくないのであろう。遥か遠い世界で夢見た状況こそが、この世界にとってはあるべき真実の姿であり必然で、この世界に生まれ落ちたからにはそれを再現する事が己の存在理由であり証明になるのだと。何故なら自分は物語の主人公であり、必ず男どもをはべらし幸福になる権利と義務を持っているのだと、必死に思いこもうとしている。そんな夢から醒めてしまえば、待っているのは1から世界を知るという作業だ。その中には辛い事も悲しい事も踏みつけてしまった他人の人生も、それを行った事で正しく清廉といえなくなってしまった自分自身の姿もある。お前の事も含めて、な。そして、そんなもの見たくないといえば、彼らは嬉々として塞いでくれるであろう。その両目を永遠に」

 どこか、ぞっとする響きがあったように感じたのは、気のせいだったかしら。

「……いつまで続ける気かしらね、あの『人』たち」

「さて、そう永くはあるまい」

 楽しそうに笑む、カエルレウスにまだ何か企んでるのかとジト目を向けた私は……多分悪くない。



 数日後、カエルレウスが突然リンチュを帝国傘下に組み込むといった時、私は驚きこそすれ、反対する事は無かった。

 生国を愛する心などとうに失っていた私には、割とどうでもいい話にしか聞こえなかったから。

 それよりも今、今後どうなるのかを聞き、考えた方がまだしも建設的である。

 幸いにも、カエルレウスや修道院に納められた書物、あるいは旅の商人などからもたらされた帝国の情報に、この地に対して悪影響をおよぼすような致命的問題点などは見当たらなかった。

 むしろ内情を知るにつけ、帝国側の方が居心地良さそうだと思えたのが問題といえば問題かしら?

 皇帝陛下ご自身も、ややワンマンなきらいはあるものの、幅広く様々な要素を取り入れさらなる国の発展に尽くすような方らしいし。


 なら、いい。どうせ苦労するのはカエルレウス自身だし。

 インディクムも、変わらず聖女のそばにいるみたいだったし。

 なら……。本人が、それでいいのならば。


 私は以後、この件について考えるのを止めた。 



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふ、ふふふっ、ふははははっ」

「カエルレウス殿?」

「いや、すまん。少々な」

 村長らとの会合中であったのだが、浮かんだ笑みは消せなかった。

 唐突で驚いたであろうが、許せ。愉快で仕方ないのだよ。


 我が愛しき花嫁は、生国に対し完全に心を閉ざした。

 なればもはや、あれらは捨て置くべき存在になり下がったのだな。

 せいぜい楽しませてもらおうではないか。――――――滅びに瀕してなおも踊り狂う国の末期を。


 全ては我の思うがまま。

 そして『聖女』が願い望んだ通りの未来。

 結末さえも、望むがままに叶えられたのかまではは知らぬがな。クククッ。


 確かに我は、連中にとって都合のいい耳触りのよい言葉を吐いた。

 我が封じられ何も出来ぬと侮ったが故とはいえ、本当に何も出来ぬなどと誰が保証したのであろうか。

 任意で口を開く事も、動く事も出来ぬ我の自我が無いなど、どうして確かめられる。

 鵜呑みにしたのは古き(ともがら)自身とはいえ、それで本当に幸福になれるかなど、誰も確認せなんだな。

 愚かで愛しい同胞よ。

 我はお前たちの望むがままに、安易な手段を示した。

 我の望みをかなえる為だけに、お前たちの不幸を願った。

 なあ、我は悪神なのであろう?何故信じた。


 人の身に神の心。

 それほどまでに歪で傲慢な存在もあるまい。

 遠からじ、聖女の心の在り処を巡り、彼らの中で戦が勃発するであろう。

 人としての忌避感も躊躇も無い、残酷で残虐な結末が―――壮絶な殺し合いが始まる。

 嗚呼―――楽しみでならないよ。

 自身の心の醜さを周到に隠し、いかに自身が美しいかを誇らしげに語り、世には美しきものだけあらねばならぬなどと騙り、我を悪そのものとして封じた傲慢なるかつての同胞たちよ。

 彼奴等の本心が曝け出されるであろうその一瞬の煌めきを、我は大切に大切に思い、生涯忘れぬであろう。


 なあ、同胞よ。そもそもの話だ。

 我らが持つ強大な力を捨ててまで、何故人に合わせねばならぬ。

 合わせるべきは人の方であろう?

 その程度の力、さほどでもない筈だ。

 人の心が壊れる?神としての力を得れば、脆く柔い人の心など容易く変容するであろうに。

 妻の魂に眠る記憶によれば、生命とは進化するモノ。

 環境に適応する、いずれ慣れるという事は必ず起こり得るのだ。

 出来ぬというならやればよい。それだけの話よ。

 だからこそ、それだけの為に全てを捨てるなどという恐ろしい真似、我には到底出来ぬ。

 護りたいと思うのならばなおさら、力を失ってはいけなかったのだ。


 力無き存在が、口先だけで誰かを守ろうなど笑止。

 お前たちはいずれ、自ら手放したことを悔やむだろう。

 手放したのは、己にあった神の力などでは無い。

 愛しいと思った存在さえも、何れは離れて行く。

 そうなって初めて、止める術など残されていないのだという事を、お前たちは知るのか。


 我ならば、今ある十全の力もて愛しき存在を常にそばに置き、守り、永遠に愛する道を歩む。

 そう、まさしく現在(いま)のように、な。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「らんらんる~、ふんふんふ……ぁっ!?」

「母上!?」

「おお!?目覚めたか、妻よ!」

「誰が妻か!!ってあれ、カエルレウス?」

「おはようございます、母上」

「え、誰」

「……息子です、母上」

「うっそ、おっさんやん!!」

「(落涙)」

「よし、祝杯だ、祝杯をあげるぞー!!」

「何が何だか全然訳が分からないんですがー!?」


 碧の郷(チンリュ)が帝国に属してからまもなく、郷の守護神であったカエルレウスは皇帝ニーリーの請願を受けアズラクパラン帝国全土を見守る最高守護神となり、その後、妻ペイルとの間に1子をもうけた。 

 彼らは時折帝国の介入(ほとんどが相談の類であったと記録には残されている)を受けながらも睦まじく暮らし、妻ペイルの寿命までをその地で過ごした。

 人の身であった神の妻は、夫神の寵愛ゆえに土地神としての力を得、再び世に降り立ったが(その際には息子エイデスが司祭となっている)真に神として目覚めたのは彼女の『死』から僅かに数十年後。

 これは史上最も早く、最高守護神カエルレウスが強く望んだ……愛の力によるものといわれている。

 







主な人物紹介


ペイル

元公爵家令嬢で、自覚なしに前世の記憶保持者である事をカエルレウス神に見出され、強制的な覚醒をさせられる。以後、かなり劣悪な環境におかれる事となった。女史って呼ばれていたのは完全に嫌味。

幼い頃は逃亡を図るくらいにヤンチャした事もあったが周囲もそれを見逃すはず無く、警備がきつくなった事、またカエルレウスの「時機を待て」の言葉に水面下で長期の環境改善計画(実質脱出)を進める事となる。

婚約者であったインディクムの事は、友人未満ではあったものの数少ない交流者であった為、こういう状況でなければもう少し積極的に仲良くしようと行動していたかも。

聖女(真)の出現により偽の聖女として断罪されそうになり、チンリュの郷へ逃亡。

その後、人に化けたカエルレウスと共に農家夫婦として暮らし子をもうける。

たまに喧嘩をする事もあったけれど、夫婦仲は悪くなかった。

カエルレウスの望みにより、死後チンリュの土地神に昇華。

神としての自我を得るまでの時間が驚異的すぎて伝説に。


カエルレウス

悪神とも守護神ともよばれる神。創世の一柱。だいたい全部こいつのせい。

本神は本能に従って自由気ままに世界を彷徨っていただけなのだが、他の神にそれを不快なものと断じられ封印される。能力だけは彼らが望むだけ引き出せたあたり、他の神々も大概自己厨である。

下々の者ほど実利を見る為、国を守る守護神としてあがめているが、国の中心部にいる者ほど自称聖なる神の教えに感化されているため悪神、唾棄すべき神としてそっぽ向く事が多い。

あまりに長い事封印されていたせいか近年ではすっかり緩んでいたが、この世界の神様というものは基本的に自信過剰の自意識過剰で自己顕示欲が強く、どんなに強い相手であっても常に格下に見たがるが故、誰も確認しようなんて思ってもいなかった。ビビッテルオレカッコワリー。

とはいえ、相手も悪かった。最初は面白魂と構っているうちに嫁の事を心底愛おしく思うようになったので、むしろカエルレウスの方の舐めプが消えたので。

外見は赤毛で浅黒い肌の偉丈夫。当然美形な訳だが、「ここからは本気を出そう(あるいは「100%!」)」宣言で出た本性がイカとか宇宙的恐怖の場合、かなり特殊な乙女ゲヒロインでない限りだいたい匙を投げると思う。隠しEDなんて無かった。

なおヤツに本性など無い。全ては嫁と静かにイチャイチャする為だけのブラフである。

皇帝は茶飲み友達扱い。最近とみに頻度が増した愚痴や相談事にも律儀に応じているのは全て嫁の為である。クッソザマァとかドヤ顔してる嫁マジカワ。

ちな皇帝陛下には、カエルさんがご当地出身の可愛いけどしっかり者のお嫁さんを紹介したので、二股やNTR展開なぞ無い。


インディクム

主人公の婚約者兼カエルレウスの玩具。多分一番の被害者。人あたり良さそうに装っているが、基本的に無関心無感動。いまどきの若者?

ゲームでいうならメイン攻略対象であった為か、過去が重い。概ねカエルさんのせい。

例の託宣を受けた後、周囲が自分に対して腫れものに触る様な扱いをするのは悪神のせいだと世を嘆き、投げやりになった結果流されるまま生きる事に。

ペイルの事は当初不憫だと思い優しくしていたが、次第に「こいつより自分の方が酷い状況なのに、なんでこいつは平然としてるんだ」と色々こじらせる。これに関しては、実体験だけからでなく周囲の吹き込みもあった模様。

ゲームヒロインと出会った事でもう一度自分の意思で生きて行くと決意し、あがこうとするが、それすらもカエルレウスの掌の上であった。

カエルレウスが消滅した(と思わせた)後、四聖公と同等の存在として扱われるも、向こうからは『雑草』扱い。その上向こうがかなりフリーダムに行動してくれるので、面と向かって奏上しずらい分こっちに来るらしく、なんとなくなしくずし的に後処理班として奔走する羽目に。王子様枠が不憫枠にクラスチェンジした瞬間である。

どうにもならんとついに直接苦言を呈したところ、聖女からは馬鹿にされ(無自覚)四聖公からは邪魔な奴認定された。

最終的にこっそり消されかけたところをカエルレウスが見ていた為、即座に帝国へ飛ばされる(物理)。

あれよという間に、人材マニアの皇帝の元でお仕事する羽目に。

帰らなきゃと思いつつも気が付けば向こうで内乱勃発してて、焦ってる間に国境が封鎖された。どうしようか迷っている間にそこそこ高貴な血筋の肉食嫁にゲットされ、名実ともに帝国臣民になっていた。な、何を言っているんだかry

なおペイルはこの事を知らない。


パッパ

とりあえずひどい。

いろいろとひどい。


四聖公

カエルレウスを封印した張本神たち。基本的に傲慢で短絡なのを見栄だけで隠してる。

内訳は俺様、腹黒ショタ、おっとり系冷酷、無口武芸者。

当初はインディクムを不憫な子として身内認定するモノの、生来の見下し癖が前面に出て来て何か邪魔に思えて来た。

安易な考えのままに消せばいいやとショタっ子が動いた結果、カエルレウスの存在に触れ生存を知るも、誰も信じてくれなかった。互いの信頼ゲージ、色ついてないどころか真っ黒に塗り潰されてる仕様だから仕方ないね!

それでもヤバいと訴え続けたが誰も本気に取らず、仕舞いには聖女にさえうっとおしがられた結果、彼自身の行為と同じ事をすればいいんじゃと考えたおっとり冷酷に毒を盛られ死亡。もう神ではなく体が人だから簡単に自分も死ぬんだと、死に際になってようやく気付いた。

その後『仲間がいなくなれば聖女独り占めキュピーン』と覚醒した彼らは、お互いにお互いを殺そうと(国そっちのけで)画策。神サバイバル突入である。


ゲームヒロイン

お花畑に見えるがちゃっかり?した子。自我が芽生えた頃にはすでに転生者としての自覚があった。

自分が美少女である事も自覚し、また維持し続けようと努力も欠かさない。ただし人間性はお察し。

インディクムと出会い、この世界がゲームの舞台と『知る』。そして自分はヒロインだと確信し、『ゲーム』攻略を開始。順次イベントを発生消化、シナリオを進めて行く。当然ルートは逆ハー一択である。

なんやかやで成立させた後、主に最終戦でのシナリオと『少し』違った流れから、いわゆる『悪役令嬢』が転生者だと見当を付け、自分じゃ持ってない過去世知識を求めて使者を送るも、既に死んだと聞かされ落胆。

でも皆さんが慰めてくれたから大丈夫、わたくしなりに精一杯、この世界の為頑張りますわ!でもそれよりも皆さんともっと仲良くなりたいの!……と、終始こんな調子で彼女にとってのハッピーエンドを満喫しつつ『続編』待機していたが、どういう訳かハーレム要員が次々死亡。これはもしや、2ndはサスペンス展開!?新ヒーローはよ!!とドキドキしている間に、こっそり内乱からフェードアウトしていた無口に「確保完了」された模様。

蟲毒の壺の中を生き抜いたヤンデレに『死にたくなるほど』愛された。


アズール聖神国

内乱の後、他国の軍事介入を受ける。ちなみに帝国では無い別の国。

神の保護を無くした国に恩恵など無かったが、国王が人格者だったせいか、かろうじて最低限の生活は保障されたという。多分難民対策?

それでも人員の流出は激しく、神にとっては長くない間には国としての体裁を保てないほどになり、最終的に主国に吸収された。

内乱後、ほとんどの土地が無人の荒野となったが、主国の代が幾度も変わるほどに長い時間が経ち国名にアズールの名が含まれるようになる頃には、ゆっくりと緑が回復していく様子が観測されている。



お読みいただき、ありがとうございました!



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