2話 居場所をなくした雛鳥
17歳。
年確もされずにタバコが買える。
こればかりは自分の老け顔に感謝だ。
この時だけは喫煙者に戻る。
ウィンストンに火をつけて、手を合わせる。
この供養の仕方も板についてきた。
何かあったらここに来るのが、癖になってしまった。
「久しぶりだな、照井。」
おう。何しにきやがった。
「俺さ、自分がわからなくなっちまって。」
なんだそりゃ。
自分探しってか。
「笑うなよ。」
これが笑わずにいられるかよ。
「ライブの時の自分が怖いんだ。」
ヤンキーの俺よりか。
「お前よりも。」
そりゃ強敵だな。
「どうやったらぶっ倒せるかな。」
そもそもそいつもお前なら、ぶっ飛ばす必要あるのか。
「俺が受け入れられないんだよ。」
自分が嫌いってやつだ。
「茶化すなよ。」
でも自分ってのは変わんねえだろ。
「そうかもな。」
ならお前は、共存を探すしかないんじゃないか。
「それがむずいんだよ。」
それはお前がなんとかしろや。
「だよな。」
一通り話して墓石に手を置く。
「もう少し頑張ってみるわ。」
そう言って俺は照井と別れた。
いつも通り19本のウィンストンを残して。
——————
「おはよう。」
いつも通り美玖を迎えに行く。
「もう、だいぶ寒くなってきたね。」
「そうだな。」
季節は冬になろうとしていた。
毎日練習するが、一向に感覚は掴めない。
そして曲すら浮かばなくなっていた。
「なんか学校にも馴染めたし、放課後はバンドって。」
「普通に青春してるよね、わたしたち。」
「そうだな。」
「もう居場所掴めたんじゃないかなって。」
美玖が欲しい言葉はわかっている。
でも、まだ言えない。
「……もう少し待ってくれ。」
「ちぇっ。」
美玖は膨れる。
授業を終えて音楽室へ。
「蓮介。曲作りできなくなってるなら、俺らも作るよ。」
康成は急に提案してきた。
断る理由はない。
でもそれさえ失ったら俺は……。
「……ありがとう。」
「でも作れるなら作ってんだよな。」
康成は宙を見上げた。
「マジであのペースで作ってたのお前、異常だよ。」
類は苦笑いした。
「駄作も多かったけどな。」
「いやそれでも、俺らの曲は全部お前だろ。」
「まあ……。」
「俺たちも頑張るよ。今後のバンドのためにも。」
楓は静かに語った。
「すまん……。」
———「もーなんか暗い!」
美玖が声を上げた。
「最近みんな暗いよ。明るくいこうよ!」
「だな。こんなしょぼくれてもしゃあねえ。」
類は立ち上がって言った。
「練習しようか。」
「ああ。」
楽しい。
でも物足りない。
この感覚に陥ってからどれだけ経っただろう。
早くしないと俺は音楽だけじゃなく、こいつらも失いそうな気がした。
——————
———ピロン。
LINEが鳴る。
大洋 「うっちゃん、元気?」
「今度また3人で集まろう!」
隼人 「いいね!」
俺 「いいよ!」
大洋 「じゃあ詳しくはまた!」
スマホを閉じる。
———ピロン。
「なんだ?また大洋か。」
MP3の文字が楓から送られてきている。
俺 「これ何?」
楓 「曲作ってみた。」
俺 「まじか。」
楓 「自信はある。」
俺 「わかった。聴いてみる。」
俺は再生ボタンを押す。
「首輪」
毎日がコピペみたいに過ぎてく
もう、ウンザリだぜ
息苦しいのは自分のせいだと
あいつが笑った
変わりたいなんて願う日々も
やるべきことしてりゃ日が暮れてる
疲れた身体に満たぬ心
平和の奴隷だ
願う理想の日々は
優しいふりして囁いた
届かないのを知ってて
首のこの鎖が
俺をここに縛りつけてる
こんなもんと引き換えに
毎朝毎朝もう限界だと
うだうだしている
布団の中で葛藤繰り返す
心のルーティーン
息が詰まるよな日々は続き
気づけば呼吸ができなくなる
こんな風に締め付けられてたら
夢など見れない
描く理想の日々は
優しいふりで笑った
届かないのを知ってて
首のこの鎖が
俺をここに縛りつけてる
こんなもんと引き換えに
ギターソロ
邪魔になるのならプライド捨て
避けられないなら恥をかいて
泥水啜って汗を流して
自由をつかもう
願う理想の日々は
優しいふりで笑った
届かないのを知ってて
首のこの鎖が
俺をここに縛りつけてる
こんなもんと引き換えに
———ジャーン。
聴いていて鳥肌が立った。
クオリティの高さもボーカルも俺なんかよりいいかもしれない。
心臓の音が大きくなる。
このままじゃ俺は……。
俺 「最高だった。」
「メロディーもリフも歌詞もらしさが出てる。」
俺はこの2文を打つのに時間がかかった。
——————
「久しぶりやね!」
大洋は満面の笑みだ。
「確かに半年前やね。」
隼人は笑う。
「昔と比べたら久しぶりすぎ!」
「まあ毎日会ってたからな。」
俺は頷く。
「そうそう!」
「で、うっちゃんは元気やったと?」
「えっ。俺?」
「うっちゃん自分から連絡して来んやん。」
「まあな。」
「隼人とかは友達づてで話聞くけど。」
隼人も頷いていた。
「ああ。俺だけ異世界にいる感じか。」
「そう!異世界転生!」
3人で笑う。
「元気だけど、ちょっとバンドがな……。」
「喧嘩でもしたん?」
隼人は優しい口調だった。
「音楽性の違いとか!」
大洋、言いたいだけだろ。
「俺、歌うと自分が自分じゃなくなるんだよね。」
「……喧嘩してた時みたいに?」
過去を知っているだけに、隼人は慎重な口調だった。
「いやもう少しマイルドではあるけど。」
「感情が爆発して我を忘れるっていうか。」
「ダメなんそれ?」
大洋は不思議そうに言った。
「俺がそれを認められないんだよ。」
「なんだそんなことか!」
大洋は笑う。
「どんなうっちゃんでもうっちゃんはうっちゃんよ。」
「何回、うっちゃん言うんよ。」
隼人が笑いながらツッコむ。
「でも大洋の言うとおりよ。」
「どんなうっちゃんでも友達やけん。」
「そうそう!」
「……うっちゃんさ。バンド楽しい?」
隼人は聞いてきた。
「何?急に。」
「いや、楽しくやれてるのかなって。」
「楽しいよ。でも……。」
「ライブは楽しくない?」
「……。」
「メンバーの人達といるのは楽しいんでしょ。」
「うん。」
「ライブもそのつもりでやったら。」
「楽しんでってこと?」
「うん。」
「そうそう!うっちゃんは考えすぎよ!」
「楽しむのが1番!」
大洋は大声で言った。
「大洋。隼人が言おうとしたこととったな。」
「いやまじで。俺いいこと言ってたのに。」
「ごめんって。」
3人で笑う。
2人がいてよかったと心から思う。
俺には帰る場所があった。
「今度、ライブやる時来てくれる?」
2人は笑顔で頷いた。




