↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真空で鳴る音  作者: youkey
火をもつ少年たち編 9章 集火
PR
59/85

5話 着火剤

ライブハウスは人でごった返していた。


「ライブハウスってこんなに人多いのか?」


「お前初めてかよ。」


類は驚いていた。


「人混み、嫌いなんだ。」


「これを人混みって言うなよ。」


康成は呆れている。


受付の店員に声をかける。


「内村です。3人です。」


「ああ。ゲストの方ですね?」


「ゲスト?」


「はい。そうです。」


慌てて類が入ってくる。


「招待客のことな。」


康成は、ぼそっと俺に伝える。


「500円でドリンクをお選びください。」


「これは絶対か?」


俺は自信がないのでぼそっと聞いた。


「1ドリンク制。そういう制度だよ。」


本当にごめんね。康成。


「未成年の方はソフトドリンクを。」

「アルコールもありますよ。」


なぜか店員は俺の方を見て言った。


2人は笑っている。


「お前はアルコールでいいってよ。」


類は笑いながら言った。


なんと失礼な。

ライブハウスは嫌いだ。


とりあえず大声でコーラを注文し、上へ案内される。


「あれ。あそこで見るんじゃねえの?」


「ホールは一般客。俺たちはゲストだから別。」


類は説明する。


「ライブハウスデビューがゲスト席とか結構生意気だぞ。」


康成は笑った。


正直、あの人混みの中で音楽を聴くのは嫌だった。

ゲスト万歳。


階段を上がると音響の機械が並んでいた。


「あんたらだな。楓のゲストは。」


髭を生やしたファンキーなオヤジが話しかけてきた。


「どうも。」


3人で会釈をする。


「楓がゲスト席を用意して欲しいなんて初めてだからさ。」


「そうなんですか。」


「アイツ、高校も行ってねえし呼ぶような友達いねえからな。」


オヤジは大爆笑している。


「アイツは息子のようなもんだしな。」

「生意気だけど。」


その目は優しかった。


「……。」


2人は黙って苦笑いしていた。


「アイツ高校行ってないんですか?」


俺は構わず疑問を投げた。


「……知らねえのか。」

「まあそれは本人から聞け。」


オヤジは笑った。


「俺はこのMillerの店長。梶原だ。」

「まあ楽しんでいってくれや。」


そう言って梶原さんは下へ降りて行った。


「面白い人だったな。」


「そうか?」


康成は首を捻った。


「ライブハウス関係者は変わり者が多いからな。」


類は苦笑いした。


……あいつ高校行ってないのか。


照明が落ちる。


———ジャーン。


鋭いギターの音が響く。

スポットライトは楓を照らし出す。


ギターソロ。


そしてメンバーが続々と位置につく。


客席が一斉に前へ押し寄せた。


ギターの音が鳴り止んだその時。


「1、2、3、4!」


ドラムの叫び声と共に爆音がこだまする。


いきなり客のボルテージは最高潮に達する。


「すげえ。」


思わず声が漏れてしまった。


様々なロックやパンクのカバー。


それでも誰のコピーにも聴こえなかった。


その中心には楓のギターがあった。


鋭いカッティング。

腹の底に響くようなブリッジミュート。

甘いコーラスを効かせたソロ。


終始圧倒されたまま楓の出番は終わった。


拍手がしばらく止まらなかった。



——————



俺たちは終演後、楽屋を訪ねた。


「おう。来たか。」


「すごかったよ。」


「だろ。」


楓はドヤ顔をした。


「こいつらがうちのメンバーだ。」


「類だ。」


「康成です。」


「俺ら全員タメだぜ。」


「まじかよ。」

「楓だ。よろしくな。」


———ドンッ。


俺は急に肩を組まれる。


「おお。君が楓のゲストの子か。」


「どちらさんですか?」


「おいおい。楓のバンドのボーカルだぜ。」


「すいません。楓ばっか見てて。」


「おいおい。そりゃねえぜ。」


俺の胸をポンポン叩く。


「まあいいや。サポートだけど完全にバンドの顔だからな。」


「サポートなんですか?」


「あれ楓、言ってねえのか?」


「詳しくは。」


「そうか。」


「……。」


妙な静寂が流れる。


「てかあの話はしたのか。」


「いや、今からっす。」






「お前ら次のライブでないか?」






——————



急すぎる話だった。


「いいのか?」


「軽いわお前!」


類がツッコんで来た。


「実は来週の土曜ライブの予定だったんだけど。」

「1組急に出れなくなってさ。」


———「それで楓が推してきたんだ。」


梶原さんが入ってくる。


「いいバンドがいるってさ。」

「こっちとしては当てもなかったんで。」

「ぜひどうかと。」


「そういうこと。」


楓は笑う。


「もちろん。チケットノルマはなしだ。」


梶原さんは言った。


「待ってください。」


康成が入ってくる。


「俺たちまだライブしたことないです……。」


「知ってるよ。楓から聞いた。」

「それに君らの音源は聴いた。」


「あっ。」


「悪い。お前に送ってもらった音源、店長に聴かせた。」


楓は俺に謝る。

あの日の夜、データで送ってと言われていた。


「もちろん、断ってくれてもいいから。」


梶原さんは優しく言った。


3人で顔を見合わせる。


「俺は出たい。せっかくのチャンスだ。」


俺は我慢できなかった。


「まあ失うものはないな。」


類は笑う。


「でも今から準備して間に合うか。」


康成は眉を顰める。


「持ち時間は何分ですか?」


類は梶原さんに聞く。


「一応30分だ。急なお願いだし時間は気にしなくていい。」

「君らのオリジナル2曲だけでも。」


「それならなんとか。」


やっと康成は肩の力が抜けたようだった。


「でもやれたら30分でいいんですよね?」


「そりゃもちろん。やれるの?」


「わかんないけどカバーで良ければ。」


「今回の企画はカバー、オリジナルごちゃ混ぜだから大丈夫だよ。」


「そうですか。」


「おい蓮介。さすがに間に合わんだろ。」

「あと1週間だぞ。」


康成は慌てて間に入る。


「まあやれるだけやってみようぜ。」


康成は大きくため息をついた。


「これは聞かないな。お前。」


「そうだな。腹括ったほうが良さそうだ。」


類は康成の方を叩いた。


「じゃあ参加で!」


心臓は高鳴っていた。


こうして俺らの初ライブが決まった。



——————



「悪かったな。急な話で。」


楓は申し訳なさそうに言った。


「いいよ。むしろありがたい。」


「お前じゃねえよ。」

「類と康成だ。」


なぜか怒られた。


「いいよ。俺は結構乗り気だし。」


類はそう言った。


「だよなー。」


「ちょっと黙れ。お前。」


次は類に怒られた。


「いや、俺も出たいしいいんだけどさ。」

「なんの準備もしてなかったら。」


康成は笑いながら言った。


「2曲聴いてあれだけでもライブで見たいと思って。」


「驚いたけど、純粋にチャンスくれて嬉しいよ。」


康成は楓の肩を叩いた。


「そう言ってくれると助かる。」


楓はやっと笑った。


「それとうちのボーカルは言い出したら聞かないっぽいから。」


康成は俺を笑いながら見る。


「……。」


もう怒られたくないので喋らないことにした。


「とにかく当日よろしくな。」


「ああ。」


3人は握手を交わす。


「蓮介。楽しみにしてるよ。」

「お前らのパフォーマンス。」


楓は笑った。


あのステージで見た目だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。