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真空で鳴る音  作者: youkey
火をもつ少年たち編 9章 集火
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4話 プロの熱

GW前最後の登校日を終え、俺は地味にバイクの教習を進めていた。

今日も実技教習へ向かう。


見覚えのある男がいた。


髪が金髪になっていた。

それ以外は変わらず。


おいお前。


『ん?』


手を貸せ。


『ほー。いいぜ。』


行くぞ。


『「よう。」』


相変わらずギターバッグを背負っている。


「なんだお前か。」

「プロは諦めたのか。」


『「諦めるかよ。」』

『「あんたこそ、人の見極め方を改める気になったか。」』


「音源もなく“プロになる”なんてほざくやつに興味はねえよ。」


『「とりあえずこれ聴いてから言えよ。」』


俺はスマホを見せる。


「へー。音源できたのか。」


『「ああ。」』


派手男は再生ボタンを押す。


「Home Run Batter」が流れる。


派手男はスマホを耳に押して聴いている。


『どうなると思う。』


さあな。


『この風貌からして、もっとパンク寄りを好みそうだがな。』


プロ目指すってことを認めさせたいんだよ。

好かれたいわけじゃない。


派手男はスマホを耳から離した。


「……悪くねえ。」


『「そうか。」』


俺は口角を上げないように注意して言った。


少し間が空く。


「お前、センスあるな。」

「ギターは下手だけど。」

「他にもあんのか?」


『「あと1曲な。」』


「聴かせてくれ。」


派手男は「Identity」を聴いた。


「面白い歌詞だな。」

「全体的に洋楽寄りだ。」


『「よくわかるな。あんたも洋楽好きか。」』


「ああ。基本洋楽だ。」


『「あんたの音源も聴かせてくれないか。」』


「悪いがライブ動画しかない。それでいいなら。」


『「ライブ動画?」』


「今は腕を磨く時期だからな。サポートメインで活動してる。」


『「見せてくれ。」』


俺はスマホの再生ボタンを押す。


動画の中には、大人の中に混じってひたすらにギターを弾く、派手男の姿があった。


うめえ。


ステージ上を派手に動き回る。

ギターソロでは前に来て客を惹きつける。


「他にももっとある。」


言われるがままたくさんの動画を見た。


ロック、パンク、ポップなど様々なジャンルに参加していた。


その中にはボーカルを担当しているものもあった。


「あんた一体、ライブどんだけこなしてんだ?」


気づけば俺は素に戻っていた。


「去年は100本近くやったな。」


「すげえな。」


「お前はライブとかやってんのか?」


「いや、今からだな。やっとドラムが見つかって。」


「そうか。」

「俺のライブ観に来いよ。」

「口だけじゃねえならな。」


「いいぜ。」


「今週の日曜だけど行けるか。」

「招待するから。」


「ああ。行けるよ。」


「天神のMillerって言うライブハウスだ。」


「わかった。」


「他にも来るやついるか?」


「メンバーに声かけるよ。」

「そういえば、名乗ってなかったな。」


「ああ。確かに。」


派手男は初めて笑った。


「俺は内村蓮介。17だ。」


「タメかよ。俺は黒崎楓だ。」


「よろしく。楓。」


「ああ。蓮介。」


「じゃあ後でラインするわ。」


「おう。待ってる。」


そして俺たちは、講習に向かった。



——————



「昼からってこんなにありがてえんだな。」


講習が終わった後、学校へ。


授業は終わったが、バンド活動のため放課後に学校に集まっていた。


音楽室から小気味いいドラムの音が聞こえてくる。


「おう。来たか蓮介。」


「自主練か。類。」


「いや、叩ける場所ってスタジオ以外ねえから嬉しくてさ。」


類はそう言って笑った。


「康成と美玖は?」


「康成はバイトが遅れて今向かってる。」

「美玖ちゃんは……。」


———「わっ!」


驚きより耳が痛い。


「おーまーえーはー!」


俺は美玖の頬をつねる。


「ごめんって。ついさ。」


類は笑っている。


「ほんと仲良いよな2人は。」


「そうかな。」


「まあラブラブだから。」


美玖が俺の腕をとる。


「ラブラブじゃねえよ。」


「はいはい。ご馳走さん。」


そんな会話をしていたら康成が入ってきた。


「おう。来たか。」


「ちょっと話があってさ……。」


俺は教習所での話をした。


「俺らとタメですげえギタリストだな。」


「確かに見てみたい。」


類と康成は乗り気だった。


「……。」


美玖はなぜか黙っている。


「じゃあ4人分チケットを……。」


「バイトだー!!」


美玖は叫び出した。


「私も行きたい!」


「バイトはしょうがねえだろ。」


「最悪。もっと早く行ってよ!」


「今日聞いたんだよ。」


「じゃあ3人で行くか。」


それから俺たちは練習日が暮れるまで練習した。


その間美玖はずっと膨くれていたが……。



——————



俺たちは最寄り駅まで歩く。


「もう少し曲増やしてえな。」


長時間、2曲だけじゃ流石に飽きる。


「コピーとかは?」


康成は石を蹴りながら言った。


「いいね。」


俺も石を蹴り返した。


「全員が好きな奴がいいよな。」


類は石を優しく美玖にパスした。


「てかさ、類ってどんな音楽好きなん?」


そう言えばこの前聞いていなかった。


「Blink-182が好きだ。」


「「あー。」」


康成と声が揃った。


「トラヴィスだな。」


「ああ。」


「あとはThe Strokesとか色々聴くけどな。」


「ファブな。」


康成が言った。


「お前らさすがだな!」


類は声がデカくなる。


「もち。」


俺と康成はサムズアップで返した。


「ドラムはいつから?」


「中1。最初はストレス解消だった。」


「だからパワータイプなのか。」


「よく言われるよ。」


外灯に照らされた影が3つ。


ん?


振り返ると美玖が下を向いて立ち止まっていた。


「私も混ぜろー!」


そう言って美玖は石を蹴り飛ばした。


「あぶねえな。」


「音楽の話はいいけど私も入りたい!」


ちょっと涙目だった。


「悪かったって。」


「これは蓮介が悪いな。」


「確かに。」


2人は悪い顔をしていた。


「俺のせいかよ。」


「じゃあ美玖は好きな音楽はあるのか?」


「私、流行ってるのばっかだけど。」

「KAZUHAと一ノ瀬柚月はよく聴くかな。」


2大女性シンガー。


「なるほどな。」


「そうだ!なんか1曲美玖ちゃんの好きなのやろうよ!」


康成は思いついたように言った。


「いいじゃん。」


類も賛成のようだ。


「確かにいろんなジャンル、カバーすんのも技術向上になるかもな。」


美玖は超笑顔だった。


「じゃあKAZUHAのRolling Daysがいい!」


「あれかっこいいよな。」


類は笑った。


「ロックだしちょうどいいか。」


「じゃあ残りの曲どうする?」


「1曲、お前歌えば?康。」


「えっ。俺?」


康成はでかい声を出した。


「お前歌上手いし。」

「俺、元々みんなで歌うバンドがいいなって。」


「いいじゃん。」


類は康成の背中を叩いた。


「俺、弾きながら歌ったことねえよ。」


「いい練習だよ。」


類は言った。


「曲は何がいい?決めていいぜ。」


「じゃあHi-standardのStay Goldは?」


「いいね。」


「じゃああと1曲は類決めろよ。」


俺は類に話を振る。


「俺はBlink-182のFirst Date。」

「蓮介いける?」


「知ってるから多分歌える。」


「じゃあオリジナル2曲とカバー3曲だね。」


美玖は話をまとめる。


「そうだな。」


「じゃあ明日からやるぞー。」

「おー!」


「……。」


「みんなもやるの!」


俺たちは無理やり手を上げられた。


「「「「「おー!」」」」


俺たちは笑いながら駅へ向かった。


この5曲が、俺たちの未来を変えることになるなんて、この時はまだ知らない。

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