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真空で鳴る音  作者: youkey
火をもつ少年たち編 9章 集火
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2話 類は友を呼ぶ

「お疲れ。」


「おう。」


改札前で別れる。


バンドマン。

初めてその名前がしっくりきた。


完成したデモを何度も聴き直す。

どうしても口元が緩んだ。


『まだまだだな。』


わかってるよ。


『まだ頭の中で思い描いたモノにはなってない。』


これからさ。


『随分とプラス思考だな。』


やっと始まったんだ。

お前になんと言われようと、かまわない。


『つまんねえな。』


今日はアイツの声も気にならない。


聴いているうちにあっという間に最寄駅だった。


家に帰ると親父はネクタイを外していた。


「できたか。」


「できた。」


「聴かせてみ。」


軽い言い方だが、俺からすれば重い。


俺は再生ボタンを押す。


まずは「Home Run Batter」。


タバコを吸って黙って聴く。


この時間が苦手だ。


———ジャーン。


「うん。曲として完成度はいいと思う。」


「ありがとう。」


「技術不足は置いておいて、よくできてるんじゃね。」


お褒めに預かった。


「ただドラムの音がちゃちいな。」


「音源だとこの音が限界。」


「ミックスダウンは?」


「まだしてない。いまいちわからなくて。」


「それでドラムにどこまでリアル感を出せるか。」

「あともう少し、ギターの音量落としていい。」


「なるほど。」


親父は軽く音量を整える。


「これでかなり聴きやすくなる。」


衝撃だった。

ミキサー無しでここまで。


「次からこんなイメージでやってみ。あとは好み。」


俺は頷いた。


「じゃあ次の曲いくよ。」


俺は「Identity」を流す。


タバコは2本目に突入。


———ジャーン。


親父はニヤリと微笑んだ。


「お前っぽい歌詞やな。」


「自分でも思う。」


「技術は置いといてこっちも曲としてはいいよ。」


「技術」だけは見過ごしてはもらえなかった。


「ミックスは後でさっきみたいにやってみ。」


「うん。」


「にしてもお前は明るい曲調が多いな。」


「ポップロックとかポップパンクを作ろうと思って。」


「いや、そこだけじゃなくて根本的にお前の曲は明るい。」


「親父の曲はより速くてダークやもんね。」


「好きな音楽は似てるけど性格の違いやな。」


俺は明るいのだろうか。


「まあ曲は悪くないから、どんどん作っていけ。」


「うん。そうする。」


こうして世界一怖い品評会は終わった。



—————



「よかったじゃん。」


美玖は嬉しそうに言った。


「まあ技術は置いておいてって言われたけどな。」


「それはこれからってことで。」


「で、美玖の感想はどうよ。」


美玖にも音源はデータで送っていた。


「詳しいことはわかんない。けどすごいと思った。」

「今までギターと歌しか聴いてなかったから。」

「音源になるとこうなるんだって。」


「作る過程を知ってるからな。」


「でも達成感はすごいんじゃない?」


「まあな。」


つい口角が上がる。

電話でよかった。


「あのさ、今度の金曜会わせたい人がいて。」


「ああ、女子の友達か。」


「さぁね?」


わざとらしく美玖は声を高くする。


「よくわかんねえけど、いいよ。」


「よろしくね!」


美玖は嬉しそうに電話を切った。


俺はミックスダウンを始めた。


親父ほど素早くはできなかった。


——————



GW前。

最後の学校。


「おはよう。」


「おはよう。お二人さん。」


この前ですっかりクラスに馴染んでしまった。


というよりこの前の一件がクラスの硬い雰囲気を解いた。


「美玖、合わせたい人って?」


「えっ、放課後だよ。言ってなかったっけ?」


「聞いてねえよ。どの子?」


「クラスの子じゃないよ。」


「……?」


俺の顔を見て美玖は続ける。


「まあ放課後楽しみにしてて。」


「わかった……。」


想定外の状況に、俺は授業に集中できなかった。



——————



ムズムズした気持ちを抱えたまま、放課後を迎える。


「じゃあ康成に放課後は無理って言っとくよ。」


「いや康成くんにも合わせたいから。」


「えっ。そうなん?」


余計に誰だよ。


「そんな顔しないでさ。悪い話じゃないって!」


美玖はイタズラっぽく笑う。


「おいーっす。」


「うっす。」


「康成くん、今日会って欲しい人がいるの。」


「浮気相手か?」


康成、嫌なこと言わないでくれ。


「そんなわけないじゃーん。」


美玖は大笑いする。


「もうちょっとかかるみたいだから待って。」


「うちの学校の子?」


「いや、他校の子。」


他校?美玖にそんな人脈あったか?


「じゃあバイトの子だ!」


「正解!」


なぜ俺には秘密で、康成には正解を言うのだろう。


待つ間はミックスダウン後の音源を聴く。


「確かに全然違って聴こえるな。」


「プロのミキサーがやったら、別もんレベルで良くなるらしい。」


「デモとしてはこれで十分じゃないか?」


「俺もそう思う。あとは技量の問題。」


「それは耳が痛い話だな。」


康成は苦笑いしていた。


———「あっ。着いたみたい。」


「玄関まで迎えに行ってくる。」


美玖はそう言って飛び出して行った。


「実は緊張してる?」


なぜか小声で康成は聞いてくる。


「実はもクソも、ずっと秘密にされててさ。」


「マジで浮気相手疑ってた?」


半笑いなのが腹立つ。


「付き合ってねえし。」


「バレバレだぞ。」


こいつの観察眼もバカにはできない。


するとドアが開いた。


ピアスをつけた細身のウルフカットの男。

服装からもオシャレに気を遣ってるのがわかる。


「ドラマーの沢田類くんです。」





「よろしく。」





「えっ。」





—————






康成にもと言う時点で気づくべきだった。

バンド組んでるからと聞いて、完全に抜けていた。


「この前、楽曲聴いてもらって、2人に興味あるんだって。」


「中谷さんが嬉しそうに聴いてるから、聴かせてもらって。」

「かっこいいなって。」


「あ、ありがとう。」


他人に褒められるのは初めてだった。


「でもバンド組んでるんじゃ。」


康成は不思議そうに聞く。


「うちの軽音部で組んでて。外バンは組んでないんです。」


「なんか、軽音部合わないんだって。」


美玖が補足をするが、話が見えない。


「部がポップスメインで……。」

「俺はロックがやりたくて。」


「それでうちに参加してくれるの?」


つい先走ってしまった。


「いや、まだそこまでは。」




「俺は2人がどこまで本気でやってるのかを見たいです。」





クールな見た目と裏腹に、目の奥に燃えたぎる炎を感じる。


『俺もまぜろ。』


久しぶりに、あいつが笑った。


ああ。来いよ。


『「本気?どう言う意味だ?」』


ドラマーは少し驚いた顔を見せたが、すぐに鋭い目になった。


「俺はプロ目指してるから。遊びでやられても困るんでね。」


『「音源聴いて、遊びに感じるってか?」』


「いや、音源の熱量はすごかった。」

「だから一緒にやってみて考えたい。」

「部を辞めて君たちと組むか。」


『「あくまで選ぶ側ってか。」』


「いや、もちろん2人がダメなら断ってくれていい。」


康成は苦笑いしながらも、しっかりと話を聞いていた。

美玖は黙ったままだった。


『「じゃあセッションするのが一番だろ。」』


「うん。君らの曲は覚えてきた。」


「康成。この辺スタジオあるか?」


「いや、学校にある。」

「それを使えばいい。」


康成は俺たちを音楽室へと案内した。


「勝手に使っていいのか?」


「元々はここを勧められたんだ。」

「ただ4Fはだるいだろ?」


「なるほどな。」


「そのドラム使えそうか。」


音楽室といってもピアノ以外使っているのを見たことがない。


「ああ。大丈夫そうだ。」


「じゃあやるか。」


『「Home Run BatterとIdentity、続けていくぞ。」』




静寂が音楽室を包む。




「1、2、3、4。」

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