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真空で鳴る音  作者: youkey
火をもつ少年たち編 7章 背中を追って
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2話 繋がりの形

ウィンストンを吸いながら手を合わせる。


なんとも礼儀知らずな、供養だと思う。


でも俺とお前にはこれが一番だよな照井。


ウィンストンの煙が空へ溶けていく。


「久々になっちまったな。」


相変わらずお供物はペットボトルのお茶一本だった。


「俺さ、色々あったけどバンド組むことになったよ。」


おお、いいな。


「お前が死んで荒れてさお前みたいに喧嘩したりもしたけど。」


おいおい、ヤンキーは俺の専売特許だ。


「そこで出会ったやつに救われて、今は楽しくやってるよ。」


女か?やりやがったな。


「そっちはどうだ?楽しくやってるか?」

「解放されて天国で暴れまくって、地獄に落とされてんじゃねえか?」


そんなんで地獄なら俺は最初から地獄だよ。


「俺が逝った時、お前がいなかったら、つまんねえからいい子にしてろよ。」


早めに来ないと、飽きて地獄行くかもな。


「あとバイク取ることにしたわ。」


やっとかよ。


「ツーリングは行けなかったけど、上から見てろよ。」


バイクは最高だぞ。


「事故りはしねえから安心しろ。」


バカ。峠攻めてこそのバイクだろ。



ただ一方的に話しかける。


それでも笑ってしまう。


「また来るよ。」


俺はウィンストンのボックスをお供えして、墓を後にした。



———ピロン。


「うっちゃんそろそろ着くよ。」


大洋からだった。


久しぶりに3人が揃う。


やっと落ち着いたから、会える。


話したいことは山ほどあった。



——————



「久しぶりうっちゃん!」


「どちら様ですか?」


「うっちゃん、大洋痩せすぎて誰かわからんくなってる。」


隼人は腹を抱えて笑っている。


「ひどくない?それはないやろ!」


大洋をいじるのはいつものことだ。


「ごめんごめん、冗談だって。」

「にしても痩せ過ぎだろ。サッカーか?」


「うん。覚えとる?鬼軍曹。あいつが顧問だから厳しくって。」


鬼軍曹……。

いたな。そんなやつ。


「隼人は変わってないね。」


「まあ俺は焼けたぐらいかな。」


相変わらずの爽やかさだ。


「うっちゃんも変わらんね。」


変わりまくりですよ。

ええ。


「見た目は変わらんけど、中身変わりまくりやけん。」


「そうやね。今まで待ってた分、聞かせてもらうわ。」


大洋は笑いながら言った。


俺は洗いざらい話した。


和食のディナーを食べながら話すには、いささかバイオレンスな表現を含みすぎたが。


二人は流石に驚いていた。

でも……。


「大変やったね。」


「さすがに驚いたわ。」


「まあでもうっちゃんはうっちゃんやから。」


大洋は笑う。


「そうやね。」


隼人もそう言って笑った。


「てことはうっちゃん彼女できたと?」


大洋は恐る恐る聞いてきた。


「えっ気になるのそこ?」


隼人は笑っている。


「まだ彼女ではないかな。」


「一抜けはやめて欲しいけん。」


大洋は大きく息を吐く。


「えっ、俺彼女おるよ。」


さすがです。隼人さん。


「うそやん。俺だけ?」

「そりゃないよー。」


大洋は一気に地獄に落とされた。


久しぶりなのに、昨日も会っていたみたいだった。


「じゃあ曲できたら聴かせて。」


「ライブも行くけん。」


「ああ。任せろ。」



——————


金曜日。

在宅コースだった俺もやっと通学に慣れてきた。


「おはようございます。」


「やあ、おはよう。」


松木さんは朝にも関わらず、身なりがビシッとしている。


ポロシャツにチノパン。

ベルトを締め、髪を撫で付けて。


自分の服装を見る。


よれたTシャツにジーパン。

草履を履いて、寝癖が立っている。


俺は一生かかっても、こうはなれない気がした。


「朝なのにキッチリとしててすごいです。」


素直に褒めてみた。


「いやあ、会社勤めの癖が抜けないだけだよ。」


じゃあ俺には尚更無理だな。


「本当にすごいと思います。蓮介も見習った方がいい。」


美玖からディスられた。


「若いうちはそんなものさ。」


若さなんて、いつまで通用するんだろう。


「最近、楽しそうだね。」


「えっ。そんなふうに見えますか?」


「うん。なんか最初より目がキラキラしてる。」

「もちろん。美玖さんも。」


「まあやりたいことが見えてきた感じですかね。」


「若さは力だよ。たくさん経験しておいで。」


「ありがとうございます。」


言葉には重みがあった。


「はい。席について。」


いつも通り教師がやってくる。


ジャージにサンダル。


これが許されている間は大丈夫そうだ。


4回目の通学でだいぶクラスの空気は柔らかくなってきていた。


でも俺たちチキン2匹は松木さんという仏以外と話せぬまま。


それでも放課後があるだけマシだった。



——————



———ジャーン。

———ブーン。


ギターの高音とベースの低音が心地よく混ざる。


「てか、康成はなんでこの学校選んだん?」


「前言ったろ。働けるからって。」


「いや、公立の通信もあっただろ。」


「あー。もし家の近くに新設の通信ができて、そこで補助も受けれたらお前ならどうする?」


「そこ行くな。」


「それ。」


「えっ。ここまだ2年目なの?」


美玖は驚く。


「えっ。知らなかったの?」


「うん。」


「蓮介、知ってた?」


美玖は俺に振ってくる。


「いや、知らん。」


「説明聞いてないのか。お前ら。」


康成は呆れている。


「俺は在宅コースがあればどこでもよかったし。」


「私は蓮介がいればどこでも。」


康成は大きなため息をつく。


「お前ら、先を考えなさ過ぎだろ。」


「「てへ。」」


「バカップルだな。」


バカップルというかバカ2人だな。


「ていうかさ康。土曜にベース買いに行くよ。」


「まじか。」


「作曲用だけど。買ったら教えてくれ。」


「もちろん。」


「いいなー。私もなんか楽器買おうかな。」


「バイト受かったんだから金貯めて買えば?」


「ドラムやってくれると嬉しいけど。」


康成はボソッと呟く。


「それな。」


「えーギター可愛い。」


女子の可愛いは意味がわからん。


「てかさ。まじでドラムどうすんの?」


康成が聞いてくる。


「知り合いにツテはないし、ネットで探すとか。」


「まあそんなもんしかないよな。」


空気が重くなる。


「ねえ。ドラムってお箸で叩いたりする?」


「どういうこと?」


美玖の質問に頭にハテナが浮かんだ。


「この前のバイトの時にお箸でキッチンで叩いてる男の人がいて……。」

「リズムが心地よくて聞いてたら、怒られてた。」


「……なくはない。」


康成は顎を触りながら言う。


「美玖その人と話してこい!」


「えー。ムリムリムリムリ。」

「だってなんか見た目怖かったもん!ピアスしてたし!」


「お前ならいける!友達作ると思って!」


「そんな友達いらない!学校で欲しいの!」


「まあまあ。」


康成が割って入る。


「今すぐにどうこうなる話じゃないし。」

「一応候補ってことで。」


「まあそうか。」

「じゃあとりあえず、今は曲作っていくしかないな。」


「そうだな。」


一曲はイメージの提示すら厳しい。


「てかHome Run Batterのベースさ、こんなんどう?」


康成はベースを鳴らし始める。


さすがマットに憧れてるだけはある。

リズム隊なのにどんどん前に出るベースラインだった。


「いいじゃん!イントロで暴れて、歌が入ると支える感じ!」

「完成度高いよ!」


「いや、もう少し揉んでいこうかと。」


「なんかズシーンってかっこいいね。」


美玖にも刺さったようだった。


「こりゃ早く機材買わなきゃな。」


「とりあえず土日で機材は揃えるから、また月曜、揉んでいこうぜ!」


「ああ。土日で色々考えとくよ。」


「あー。日曜はデートだって!」


美玖は顔を膨らましていた。


「悪い。忘れてた。」

「土曜で全部揃えるから大丈夫だよ。」


「もう、この音楽バカども!」


「えっ俺も入ってる?」


康成は驚いている。


「そりゃそうでしょ!」


「そりゃそうだな。」


「バカップルめ。」


楽器の代わりに三人の笑い声が響いていた。


——照井。

見てるか。


幸せだぜ。

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