4 鬼狩り
ノブに手をかけた黒川は、振り向きざまに粕谷を鬼の形相で睨みつけ、言葉の意味を聞き返した。
「主役? それはどう言う意味だね?」
「フフフッ、どう言う意味かは、この後の展開次第ですが」
——やはり、お前何か知ってるな!
——でなければ、こんな言い回し、思いつくはずがない。
「な、何なんだ、その言い草は!」
「これは失礼いたしました黒川課長。いやしかし、黒川課長は犯人をご存知でないとは」
——なんだなんだ。
——その言いぐさは!
「ハッキリ言っておくが、私は何も知らんのだよ。別件対応があるため一旦失礼させてもらう」
「そうですか……では今、犯人が誰かを明らかにすると言っても退席されるおつもりですか?」
——つまり証拠を握っていると。
——見せられるのか、その証拠を。
「犯人がわかるのか?」
「おおよそですが」
——まさか!
「実はこんな写真が、私のデスクに置かれていたんです」
その写真を粕谷は黒川に見せた。
——こ、これ、私じゃないか。
「な、何のイタズラだ!」
と声を荒げながら、写真を面前に曝け出すように見せつけた。
「こんな手の込んだ合成写真を作りやがって! お前らの中の誰かだな!」
「黒川課長、この写真の内容に覚えはないと……そう言うことですか?」
「当たり前だ! これを作った犯人が怪しいに決まっている」
と黒川が叫んだ瞬間、野々山が声を上げた。
「何だろうね、こんなに頑張っても情報漏洩の罪を着せられてさ。キミたちも悔しいし、腹立たしいだろう……どうだい、僕らの無実を晴らそうじゃないか?」
「野々山くん、ではどうやって無実を証明しよう?」
粕谷はその方法を野々山に聞いた。
「ここにいる全員で輪を作り、右隣の人に写真、ラインやメールを確認してもらうんです」
するとスタッフからは反発の声で騒ついた。
「しかし皆さんは課長から疑いをかけられた身の上故に、そんなことを言っている場合でもないでしょう」
その時だった。
「キミたち、何を騒いでおるのだ?」
突然、部長が会議室に現れた。
——なんで部長がここに。
——よりによってこのタイミングで。
「部長、あっ」
と黒川は手に持っていた写真を体の後ろへ隠した。
「黒川くん、今手に持っていたよね?」
——しまった。
——気づかれた。
「これは……」
と黒川が言葉に詰まったところを、粕谷は狙い撃つかのように答えた。
「それは、内部告発と思われる写真になります」
——やめろ!
——やめろ、やめろ、やめてくれ!
「何? 黒川くん、こちらに出したまえ!」
部長がそう声をかけた瞬間、黒川は写真をなん度も重ねて破り「こんなもん、こうだ!」と叫びながらそれを宙へ投げ上げた。
「黒川くん、キミは何をしとるのかね?」
と粕谷から同じ写真の複写版を渡された部長は、
「これはどう見ても、キミが新台の写真を、しかもここは……」
と言いかけたところに粕谷が、
「私と課長が鍵を管理する機密倉庫内です」
と写真が撮られた場所を伝えた。
「キミが情報漏洩の張本人だったのか?」
「こ、これは、濡れ衣なんですよ、部長! 信じて下さい!」
大丸部長は粕谷にどうすれば良いかと尋ねた。
「いや、残念なことに、こんな写真だけでは、情報漏洩の物的証拠には……ならないかと」
——粕谷くん、いいこと言ってくれるじゃないか!
——俺は無実だ!
「では、黒川くんは白だと言うのかね?」
——そうだ。
——そう言え、粕谷!
「ええまあ、これ程までに黒川課長が無罪を主張される訳ですから、我々もそれを信じたいのですが……」
——粕谷!
——よく言ってくれた!
——お前、いい奴じゃん!
「……ですが、我々も課長から疑いをかけられた身であります故、ただ信じてくれと言われても…」




