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3 糾弾

 午後二時の会議室には、開発に携わるスタッフの外に、黒川営業課長が集まっていた。

「粕谷係長、時間だぞ、さっさと始めたまえ!」

 この黒川の一言で、打合せという名の『糾弾会』が幕を開けることとなった。

 

「ではお待たせしました。只今から新台発表に向けたスケジュールを情報共有して行きたい……とその前に、皆さんに聞いていただきたいことがありまして……」

 それを受けて、黒川が口を開いた。

「粕谷くん、キミの育児休暇の話なら他でしてくれ! 仕上げがこれからって時に、職場を放って戦線離脱するような奴は、やり手だともて囃されていようと私は認めんぞ。 ……とは言え、ここまでの仕事っぷりは見事であったと評価してやろう。この後は野々山主任が指揮を取ってくれるんだよな?」

「黒川課長……今、野々山に何を取れとおっしゃられたのですか?」

「な、何って、指揮を取れと言ったんだ」 

「おや? 私には『野々山が()()を取れ』と聞こえましたが?」

 粕谷が惚けるように課長に斬り込んだ。

 野々山も呼応するように、

「僕にも責任を取れと聞こえましたよ」

 と口裏を合わせた、

「お前たち、いったい何のつもりだ! ふざけやがって!」

 と怒りを露わにした黒川を尻目に、粕谷はスタッフに向かいこう話を切り出した。

「今回、社運をかけ、秘密裏に進めてきた新台パチンコのマル秘情報が、あろうことか写真付きでネットに拡散されてしまいました」

 これを聞いたスタッフたちが騒つき出す。

 その騒つきを制するかのように、黒川が声を張り上げた。

「粕谷くん、それが事実なら、とんでもない事態じゃないか! どうするつもりだ? 責任問題だぞ!」

 ——この狸奴!

 ——ぬけぬけと!

 そこに野々山が参戦する。

「黒川課長、まだ原因がハッキリしない段階で、責任問題を議論している場合ではないかと思いますが?」

——こいつ目、生意気な!

「キミはバカかね? この新台開発はな、かつてヒットメーカーと呼ばれた我が社が再びその地位に返り咲くため、社運をかけて来た一大プロジェクトなんだ! 情報漏洩が起きてしまったことでスキームが破綻することになれば、当然、プロジェクトリーダーの管理責任を問わざるを得ないな」

 と黒川が責任の所在を断言した。

「……確かに、管理が不十分であったところに情報漏洩が発生したとすれば、リーダーである私が責任を問われることは致し方ないこと」

「当然のことだ!」

——くどい奴だ!

「しかし、その情報漏洩が内部の者による作為的犯行であったとしたら……誰が責任を取るべきなのか? どうですか? 黒川課長!」

——なんだ、コイツ!

——なぜ、そう出る?

——お前、何か知っているのか?

「故意に情報漏洩を起こした者がいたと言うなら、当然、キミに責任の所在があるとは言えんが……まさか、内部犯行なのか?」

「そこのところを明確にせずして、どうして野々山主任にプロジェクトを引き継げましょうか」

——まわりくどい奴め!

——つまり、お前は知っているのか?

——この犯人の正体を。

「なるほど……この情報漏洩の犯人を見つけ、白黒ハッキリさせるわけだな。しかし、()()()が犯行を自白すると思うか?」

 その言葉に呼応するかのように、斜に構えた粕谷が黒川に言い放った。

「ほう、黒川課長はこの情報漏洩が故意犯、しかも犯人は()()であることをご存知なのですね?」

「あ、いや違う、犯人がいたとしたら、男性じゃないかと連想しただけだ。誤解をしないで欲しい、私は犯人が誰かは知らん」

「そう、ですか?」

「そうだ……だいたいキミは失礼にも程があるぞ! 付き合い切れん、後はキミが始末をつけたまえ、私は失礼する!」

 と黒川は一人会議室を退席しようとしたが、粕谷は課長を呼び止めた。

「困りますね、主役が退席されては!」

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