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2 悪魔の囁き

「係長、少しいいですか?」

 と耳打ちされた粕谷は野々山に向かい、

「おう、何だ?」

「実はネットでまずいもの見ちゃいまして……」

 粕谷は職員が昼休憩のため部屋を出払ったのを見計らって、バツ悪そうにこう切り返した。

「筐体のことか? 情報漏洩だな?」

 と小声で聞き返した。

「えっ、ええ? でもなぜ粕谷さんが?」

「部長だよ。さっき漏洩情報もらったんだよ。まぁ、何とかせんとな」

「犯人の目星は?」

「まったくわからん」

「そう……なんですね。明日から係長見えないし、どうしたら?」

「こんな一大事に育休取ってる場合じゃないか?」

 とチャラけた粕谷に野々山は目を細めるようにして、

「本当ですよ。取り消しですよ、育休取消して下さい」

 と毒づいた。

 ——こ、こいつ、

 ——露骨過ぎやしないか?

 ——その態度。

「まぁ、そう言ってくれるなよ」

 と申し訳なさげに言葉を出した粕谷に、

「冗談ですよ、ハハハ……ところで係長に心当たりはありますか?」

 と投げ返した。

 ——こら! 冗談きついわい!

「んん、まったくわからんが……開発に関わってる奴らが、故意に情報を流すなんて考えられんしな」

「金目当てなんですよね?」

「まあ、それしかないだろう。こんな話の顛末は決まって金に困ってやっちまうのがセオリーだろよ」

「そうなんですかね……実は僕、見ちゃったんです……」

「見ちゃった? 何を、さっさと話しちゃいなさい」

 野々山は、再度、周りに誰もいないことを確認したのちにこう答えた。

「課長が白昼、誰もいない倉庫で、筐体の写真をスマホに収めている姿を見ちゃったんです」

「それ、マジか?」

「これ、見てください」

 と現場で筐体の写真を撮る黒川課長の姿を、野々山はスマホで見せた。

「んーこれ、確かに課長だわ。スマホで写真撮ってるじゃん」

「どうです? 怪しいじゃないですか?」

 ——何がどう怪しいんだよ。

「おお、確かに怪しいが、この写真一枚では物的証拠にはならんだろ?」

「そう、ですよね」

「課長のスマホでメール送信履歴やライン情報が押さえられたら、物的証拠になるんだがな……あっそうか!」

「えっ?」

「キミは見たことないのか? アレだよアレ」

「な、何のことですか?」

「やり手銀行マンのドラマだよ。見たことあるだろ?」

「あっ、百倍返しのあれですね」

「無実を証明するためにスマホのメールを開示してもらうのさ」

「でも、そう簡単にいくもんすかね?」

「ふふふ、まぁ見てなって!」

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