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閑話 前編

どうしても書きたくなったので書きました。



推敲はしてないのでだいぶあやしい過去編です。



センター前の浪人生のやることじゃねぇな。

俺達の店がだいぶ形になってきた。

色付いた木の葉が底冷えする風に吹かれ、舞い上がっては叩きつけられ、荒んだ風音と擦れる乾いた葉音が耳につく。

昨日まではここに木を打つ槌の音や、仲間達の感情を剥き出しにしたはしゃぎ声が聞こえ、俺達の中で一番歳が上の、とは言っても28になったばかりの岬のやつが、いい歳して……、とか何とか言っていた。

うん、だがまぁ俺はあんな歳も気にせずみんなでどんちゃん騒ぐのが好きだからなぁ。

父上の自由都市国もそんな感じあるし。


そんな、騒がしい作業は昨日で一通り終わって建物は完成した。

勿論まだ内装はまだまだだがそれでも一段落着いたということで今日から最低3日はみんなフリーだ。

東京に家のあるやつはそこに帰るし、もっと遠くに帰省するやつらは次にこっちに戻ってくる時には大きな荷を持ってくるだろう。

ここが新しい家になるのだから。

まぁ、ちょっと不便だから東京の街に住んだり、元々家持ってるやつらのとこに転がり込むのもいるだろうな。


「蒼月兄様、おはようございます」


朝の風に当たりながらそんなことを考えていたら、後ろから声をかけられた。


「水月か、おはよう。

よく眠れたかい」


振り返れば白髪紅眼の超売れっ子モデルが、背筋を伸ばしたしゃんと整った立ち姿でそこにいた。

昨日ふらっと現れて泊まるから宜しくと言ってきたのだ。

朝霧(うち)のきょうだいはそういう奴が本当に多い。

1時間前にメールを寄越すこの子はかなり良心的な方だ。


「えぇ、まぁそれなりには。

それと兄様、昨晩はおたのしみでしたね。

声は遮断させていたようですが、部屋全体が僅かに規則的に軋んでいましたよ。

あぁ、それと兄様はともかく、那月さんの感情の発露もかなりのものでしたよ」


「ははっ。

お前にまでそんなことを言われるとは思わなかったよ。

大体それを感じ取れる方が珍しいからな」


「いえいえ、新築の兄様の念願のお店や、恋人との同居生活に不備があってはと思い提言させていただいたまでですよ。

私は大丈夫ですが他の、特に下の子達に感づかれると兄様の大切な那月さんが質問攻めにあってしまうかと」


「ふふっ、そりゃどうも。

全く大した弟だよ、お前は、さ」


「いえいえ、まだ至らぬ点ばかりで……それはそうと兄様、聞きましたか?」


「うん?

なんの事だ?」


「父様がこちらに来られる事です」


「……全然聞いてないんだけど?」


「まぁ、父様らしいですね。

特に歓待はしなくていいけど元気な顔と、途中でもいいから蒼月のお店を見せてねー、後、新しい恋人もね、との事ですよ」


「いや、それお前がメッセンジャーなんじゃねぇの?」


「いえ、そういうことではないですよ。

私はただ同席するのと、その間の那月さんの話し相手というだけですよ。

兄様、那月さんには素性や父様、それに朝霧についてはどれほど話していますか」


「んー?

自由都市国出身で元孤児なこと、そこの子は朝霧の姓を使ってること、ぐらいだな」


「そんな所ですか、しかしそれでは父様のことは……」


「なーんにも……かな?」


「それはそれは、ではさぞかし驚くことでしょうね。


イタリアで母親を事故で亡くし、父親は直ぐに新しい女に手を出すどころか隠し子を連れてきて、逃げるように母親の祖国に飛んだ。

話のわかる祖父母の援助により大学に編入するだけの余裕はありましたがそれも最初のみ。

そんな中、慣れない日本の生活の中で良くしてくれた、自分と同じ編入生のイケメンと恋仲になる。

彼とその友人のお陰で日本における人脈もそれなり。

卒業後は、そんな大好きな仲間達と共に最高のレストラン、いや、トラットリアを作ろうと決め様々な業界に下準備の為に散る。

特に那月さんは海外との商取引を勉強なされたそうで。


しかしその頃恋人が突然の消息不明。

最後に告げた行き先は突如勃発した紛争地帯。

しかもその影には我らがACN自由都市国がちらつく。

大学時代の仲間の制止を振り切り、乗り込んだ先は今まで見たこともないようなアンダーグラウンド。

外見もよく頭の出来も悪くない彼女は人攫いに目をつけられ、抵抗するが及ばず、縄をかけられる。


偶然それを見つけた私が保護。

聞き出したアジトで捕まっていた人も解放して幾人かは自由都市で正式に国民として受け入れました。

まぁ、それは置いておいて、彼女の事情を聞いて私はなんとも言えなくなりました。


あなたが探す想い人は戦争法違反の化学兵器をフル装備した数千の軍人をたった5人で殲滅する作戦に従事し、見事完遂して世界平和に限りなく近づいたと思ったらいきなり奔走。

現地の女性と情を交わし、各地を巡り自然の雄大さを感じながら、見た事ない土地の食材を嬉々として探し回っています。

なんてとても言えませんでした。


仕方ないので私が弟である事を明かした上で、無事であることを自由都市国の名において宣言し何とか帰しましたが、それはもう心配していましたよ。

全く素晴らしい女性ですね。


心うたれた私は、彼女が日本に帰ってからは逐一兄様の現地での行動を写真又は動画付きで送っていました。

勿論そこにR18規制はありません。

えぇ、私達は自由都市国の人間、各国の法に囚われることはないのですから。


そして1ヶ月後へらへらと笑って帰って来た兄様を見て、那月さんは何を思われたのでしょうか。

とても私には想像が出来ません。


まぁ、それからも色々粗末事があって、たまに私と連絡を取りながらも、兄様の正体に踏み込まなかった那月さんですが、今日父様とお会いになり、自由都市国のトップという、この地球規模でみても知らない人がいないような方の息子が兄様、自分のなんかよくわからない恋人だったなんて、一体何を思うのでしょうかねぇ。


兄様、蒼月兄様、どう……思われますか?」



え?


……え?


「それ、まじな話?」


「それ、とは何を指しているのか分かりませんが、私は本日、兄様に嘘をついてはおりませんよ」


……普段は嘘をついてるのか、とも思うが、今はそこでは無い。

え!?

那月が、あの2ヶ月のことを知ってる?

それもわざわざあの国まで来ていた?

下劣な人身売買の標的にされた?

俺以外の男に犯されそうになっていた?

はぁ?

まじか。

それも連絡をしなかった俺のせいで?


うーわっ、ないわぁ〜。


あの時めっちゃ怒られたけど、でもっ、そんなことになってるとは一言も言ってなかったし、それほど違和感もなかった。


それに家族のこともなんかあったとは思っていたが、済んだこと、というのを全面に押し出していたので、全然知らなかったなぁ。


はぁ、なんていうか、なぁ。

でもまずは……


「水月」


「なんですか兄様」


「ほんっとに、ありがとな」


「ふふっいいですよ。

それに偶然でしたからね、そう、偶然。


それに色恋沙汰の詰めが甘かったり、少し不器用なのは朝霧(うち)の家柄ですので。

それに那月さんは父様が好みそうな人柄です。

これといったずば抜けた才は見受けられませんが、芯が強く、努力を惜しむこともせずに、自分の能力もきちんと把握している、良い女性です。

少々不安定な部分もなくはないですが、恐らく大丈夫でしょう。

兄様ほど不安定、というか、平常を嫌っている、とかではありませんし。

寧ろそこは私に近い鬱屈としたものでしょう。

……ま、そういう訳で今日からでも私が姉と呼び慕うことになるかもしれませんからね。

そうでしょう、蒼月兄様!」


「あぁ、そうかもな」


そうか、水月の目でも大丈夫そうか。

なら良かった。

あぁ、きっと父様に認めてもらえるし、祝福して貰えるだろう。


あー、なんか緊張してきたなぁ。


「ふふっ、兄様、久し振りにお相手願えませんか」


「くふっ、はははっ、そうだなやろうか。

腕は上げたか?」


「正直モデル業と研究をしながらだと、かなりきついですね」


「そっか、まぁ俺も最近はそんなにだな。

相手もいないしな」


「昨日ここにくるまでの道で1人、なかなかできそうな人がいましたが?

下刈り上げにしたポニテの女性ですが。」


「あぁ、あいつかぁ、あいつはちょっと噛み合わないんだよな、なんつーか、そう、楽しくない」


「そうでしたか、なら楽しめるように着替えますか?」


「お、そりゃいいな。

……だが本気過ぎやしないか?」


「そんなものでしょう、私達は」


「はははっ、そうだな」


全く、俺が父様に那月を紹介するのを緊張してるのを読み切って言ってきてるからな。

はぁ、実に兄想い、というか、家族想いのいい弟だよ。


よし、久し振りに俺もやるか。

あ、店傷つけないように気をつけなきゃな。




side 那月


私は見てしまった。

私が心奪われてしまったあの男、朝霧 蒼月。

そして、優しくて、モデルになってから仕事が増えて大変だけど、楽しいし嬉しいと、爽やかな笑みを浮かべていた、蒼月の弟、朝霧 水月。

ちなみに芸名はmizukiだ。


この前、ファッション雑誌の表紙をまた別のお兄さんと、事務所に入ったばかりだという綺麗な、私にない身長と言う武器をもった女の子と一緒に、3人でキメてました。


はい、買わせていただきました。

中学三年生なのに私より大人びた色気があると思います。

10歳も年下の男の子の笑顔に何も言えなくなってしまう。

なんてことだろうか。

あの白くて長い睫毛とか反則だと思う。

少し潤ませて瞬きされただけでね。


2年前、既に私より身長のあった水月君にお姫様抱っこされてあの悪漢共から助けられた時は本当にやばかった。

今は女性的な艶やかな雰囲気だけど、当時は張り詰めてピリピリしてたけど、できる男って感じの雰囲気を醸し出してたから直ぐに男だと思ったし。

10歳も下とはとても信じられなかったなぁ。

あの時、もし、蒼月を想ってなければ、喜んでお持ち帰りされていただろうな、と今でも思ってしまう程だ。

……これは死ぬまで秘密だ。


って今はそんなこと考えてる場合じゃない。

昨日、日が沈む前、モデル業と他にもちゃんと聞いてないけど色々やっている上、学生な水月君が店にやってきた。


私達はお店の建築の大部分が終わって、遅い昼食をまったりととって私と蒼月以外が一時的に家に戻っていった。

久し振りに蒼月と2人きりと思ったが、いきなり水月君が現れてた。


蒼月は私と水月君が初対面だと思っていたようで紹介してくれた。

はい、知ってます。


しかし水月君が指を口の前で立ててアピールしていたので、知らなかったふうに、大人気モデルが目の前にいて驚いた様にした。

まぁ、実際驚いたし。

そして、1泊だけしていくようだった。


蒼月と水月君が並んで厨房に入ってるのはなんか不思議で、でも手並みは揃ってて、しかも水月君の料理、私より断然美味しくて。

なんだが色んな意味で涙が出そうになった。


その夜、蒼月に水月君のことについて話していて、私は水月君を褒めちぎった。

そしたらだ、蒼月が

「俺のベットでそんなに他の男の話しするのはマナー違反だぜ」

とか、言い出して、いやでも弟、って言おうとしたら、唇を塞がれた。

そして、私の口内を、舌を、歯茎を弄んだんだ。

それからも、水月君が隣の部屋にいるのに、散々啼かされてしまった。

私のちっちゃい体ぜんぶ、蹂躙されてしまった。


……うぅ、蒼月が上手すぎる。

全然慣れることがない。

友達から初心すぎて笑う、とは何度言われたことだろうか。


って、やっぱりそうじゃなくて、今の状況だよ。


今日、起きたら蒼月がいなかった。

まぁ、それはよくある事だ。

とりあえず身支度を、水月君もいるのでしっかり整えて外に出るとそこには2人がいたのだが。


いつも蒼月が壁にかけてあった、黒い薔薇があしらわれた服を着て水月君に殴り掛かりにいっていた。

兄弟喧嘩?と思った私だが、何やら様子がおかしい。

水月君も真っ白い肌や髪とは正反対の黒い服を着て、何やら武術の構えのようなものをしていた。


蒼月が殴りかかったその腕を払って接近したかと思えば、ドゴンッ、という人体から発生するには不穏すぎる音を出して、2人して車にはね飛ばされたかのように後方に飛ばされ、距離が空いた。

その時、水月君の紅い瞳がこちらを少しだけ見た気がする。

ここまでも大概だが、その後がよくなかった。


水月君が日本刀のようなものをいきなり出現させたかと思えばそれを薙ぐ。

それを見た蒼月は、慌てたように空中に跳び上がったかと思えばそのまま空中で停止する。

蒼月の元いた場所では枯葉が盛大に舞い上がり露わになった地面は三日月の形に深く抉れていた。


それを見て蒼月はせっかく立てた店を壊すなよ、などと言っていたが、水月君が結界がどうのなど言っていてもう意味不明だ。


それに安堵したらしい蒼月はいきなり銃の引き金を引いた。

いや、どこにあったのそれ。

しかも2丁あるよね。

あとどうして上空を移動しながら撃てるの。


ここまではよかった。

いや、色々良くないこと満載だった気がしないでもないけど、とりあえず、よかった、としよう。

問題はここからだった。


水月君が柔らかな、染み渡るような声で言う。


「ところでお兄様。

昨晩はさぞおたのしみの様でしたがご感想の程は?」


「だっ、誰がそんなこと言うかよ」


「そうですか、隣から那月さんの随分甘い声が、それはもう、さぞお兄様に可愛がられているのだろうという声が響いてきたもので、どうしても聞かないわけにはいかず」


「は?

何言ってるんだ。

昨日は遮断を……」


ニコッ!

水月君、トップモデルの本領発揮!

瞬間的に綺麗すぎる微笑みをつくる!


日本人ってそういうの苦手だよね。

ヨーロッパやアメリカだとカメラ向けられるとすぐ、前もって練習したキメ顔作れるんだけどねぇ。


って違う、蒼月は大丈夫って昨日は言ってたけど。


「まさかっ!」


「お兄様は精霊に頼りすぎですよ。

もう少し魔術について造詣を深めることをお勧め致します」


「おまっ、魔法を書き換えたのか!」


「まさか!

お兄様の精霊と力比べなどしたくはありませんよ。

ただ、少しばかり同調して、私にも恩恵をいただいただけですよ」


「全部聞いてたとそういうのか?」


「父様もそうすると思いませんか?」


「……思うな」


「ならば私がやらない道理はありませんよねっ、てぇ!」


などと言い合っていた。

あぁ火が出る。

顔が暑い、いや、熱い。

心臓がうるさい。

血の行き交う音が耳から離れない。


水月君絶対私のことさっき見たでしょ。

それでこんな事言うの?

酷いよ。


でもその前に恥ずかしくてたまらない。

10も年下の男の子に、そのお兄さんに良くしてもらった叫びを聞かれてしまったのだ。

しかも昨日は蒼月がノリノリで色々言わされてしまった気もする。


あーもぉーやだぁ〜。


「お兄様の閨での腕前を私は存じ上げないのですが、如何ですか?」


「お前も含め、朝霧の杜の奴らは大体上手いだろうが」


「いや、それは確かにそれなりには夜戦も出来ますが、それでも、お兄様のようにスラスラと流れる様に睦言を紡ぎ、時に攻めため、相手からもしっかりと心も躰も求められることのできる人は多くないでしょう。

一体今までどれ程の女性を啼かせて、いや、わんわん、にゃんにゃんと、言わせ、堕としてきたのですか?」


「知るかよ、そんなもん」


「時に、最近私のモデル業の同僚に1つ年上の方が出来たのですが、どうやら初めてを蒼月なる人物に捧げた上、AAカップだったのがその1晩でCカップになってしまったようで、脅威のスリーカップアップとのことですが、心当たりは?

今年の夏の終わりに9歳下の女の子に手を出したんですか?」


「あー、多分出した。

ちょっとつり目の勝ち気な子だろ」


「ですです。

その子芸能界にでて有名になれば蒼月さんの目に止まるかもしれない、私を知ってもらえるかもしれない、と思ってモデルデビューしたそうですよ。

健気ですよね。


その辺どうお考えになりますか?」


「夢見がちな少女にありがちなこって。

しかし行動力は凄いな。

いつか逢いに行ってみるかねぇ」


「えぇ、同意見です。

瞬間的な肉欲と愛欲の区別も曖昧な上、どこか自分中心に考えているのでしょう。

本気で蒼月なる人物を探すにはストイックさが足りませんしね」


「あぁ、全く、だぁっ!」


「しかしながら当の蒼月本人がそれを言うのは少しどうかと思いますがね。

あぁそれと叶わぬ恋に身を焦がすアオハルも悪くはないですが、蒼月御本人を知る身としては憐れでなりませんでしたので、軛を打ってしまいました。

悪しからず。


……お尻をフリフリと左右に振らせてアピールさせるのがお好きなのですか?」


「お前もなかなかだと思うのは俺だけか?

そして、その問いについてはっ、ノーコメントだ!」


「私は子供は出来ないですし、そういうことに対するハードルが低いのでまだしも、ねぇ」


「はー、全く大きくなったなぁ、水月」


「昔から背は高い方でしたよ」


「わかって言ってる、だろう」


「まぁ、それは、ねっ、と、くらえっ!」





「引き分け、ですかね」


「あぁ、そうだな」


「ふふっ、初めて負けませんでしたよ」


「はははっ、初めてお前に勝ちきれなかったよ。

ほんと、強くなったなぁ、まだ15歳だろうに」


「ふふっ、次は勝ち切りますからね」


「そう簡単に越えられると思わないことだぞ、水月」


「そうですか?

それはそうと蒼月お兄様、那月さんへのフォロー頑張ってくださいね、愛しい恋人でしょう」


「へっ?

……あっ!」



家族愛と男臭い笑みが溢れるこの場で私はもう、自分の感情についていけなくなってしまっていた。

色々いいたいことはあるけど……とりあえず、真っ赤な顔を腕で隠しながら、蒼月の胸元に……思いっきりタックルした。

後編もクリスマスには書く。


と、おもう、のでした



場合によっては盛大に書き直すかもしれません

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