彼らの永遠 8
翌日、鉢峰は用事があるため来れなかった。だから今日は御影も休めば、と言われたが首を横に振り譲らない。なるほど、やはり鉢峰は護衛のつもりでいてくれたのだ。だっていちいちグレーディングに口を挟んで来る人間ではない。数日ごとに様子を見せればいいだけなのにそれでも毎日長時間あの暗い部屋にいてくれたのは、湯川の存在があったからだ。
じゃあせめて日代が来る午後からにしろと言われそれならと条件を飲み、いつもよりかは遅い時間に登校し編集室に向かうとドアには『映画学科以外の生徒が入室する場合許可を取ること』という張り紙が貼られていた。中に入った瞬間久世に大きく頭を下げる。
「久世先生、すみません、ありがとうございます! お手数をおかけしました」
「おー気にするな」
機材の向こうで姿の見えない久世が手だけをにゅっと突き出しひらひらと振る。やさしいなあと思いつつさらに奥の暗い編集室に入り、荷物を置いて一度飲み物を買いに廊下へ出てーーー自販機の前で、湯川と遭遇する。
「御影ー」
たまたまだよな、と胸中で問う。たまたま遭遇したんだよね、今は。
「やらない」
「まだ何も言ってない」
「言わなくてもわかる」
「以心伝心?」
「やめて」
本気でぞっとして言った。冗談でも洒落にならない。
「さっさと他のものに変えたら? 時間ないよ」
「だから焦ってるんじゃん」
「……」
そっちの都合じゃないかと、胸中で舌打ち。
鉢峰は何度も担当教授に脚本を書き直すよう指示された。そして何度も推敲に推敲を重ね、漸くゴーサインを掴み取った。
日代は作品を掛け持ちしている。ノート何冊分にもなるそれをめくりめくり、全てのカットに音を吹き込み重ねてゆく。
「……今の時期まで何してたの? 就活?」
「いや? 特に何も? 座学の授業出て単位揃えてバイトして飯食って寝てた」
「……」
「その髪の色が欲しい。その髪を使ったらとてもいいヘアージュエリーが出来る」
「……」
気に喰わない。
「一目見てそう思った。ねえ、ここは芸術学部じゃん。インスピレーションが締め切り間近に浮かんだことは責められること?」
「……」
気に喰わない。
「どんなに名を馳せる芸術家だって発想がなければただのひとだよ。何も創り出さない。何も生み出せない。いつ思い付くかなんて瞬間は選べない」
隠さずに。
首を横に振って、……言葉を飾らなかった。
「あんたと喋ってると、頭がおかしくなる」




