第44話:暴食の格闘王―グラトニーオブバトルマスター―その15
アバドンは自らの控室で瞑想を続けていた。
静寂が支配している空間に置いて己を御する為の精神集中を行っている最中。
彼は試合以外の場合は大概がこの瞑想に時間を割いている。
食事すらも彼にとっては時として己を乱す要因として遠ざけるなど徹底的に行う。
なぜそこまでするのか?そう思うのも当然なことである。
近年、彼自身ですら己が内の“飽くなき果て無き暴食”としての邪神の力を抑えられなくなってきていた。
先の戦闘の際は議長らの言っていた“機械仕掛けの神殺し”たる【デモンデウス】の存在があったからこそ邪神形態としての理性も保っていたのだ。
だがそれが引き金になったのも確かであり、余計に“強者との激しい死合”を渇望する様になってしまう。
今なおも瞑想をしているがもはやそれも無意味。
もはや彼は彼自身ですら己の内なる欲望を強者との戦いという至上の食材に我慢が出来なくなっていた。
アバドン:
「ぐ・・・・グ、ぐ―――――ぐグぐググググ・・・!!」
苦しみでもある呻き声を上げつつある。
理性と野生とは違う、“狂気”というもう一つの気性がアバドンの内を支配し、侵食しようとしている。
精神を徐々に邪神としての在り方が侵し始めていく。
自分が自分では無くなる様な感覚。
己が己で無くなっていく意識。
乾くことのない闘争心の果ての貪欲なまでの食欲とも云える強者との戦いへの欲求。
それが突き抜けて“暴食”へと至り始めていく。
アバドン:
「喰らう・・・喰ラウ・・・!くラウ・・・!喰ラウ・・・ッ!!!!」
このままいけば己は己を失い、ただただ破壊し喰らい尽くしだけの“暴食の化身”という名の怪物と化してしまう。
そうなっては己はおろか、己と闘った全ての戦士達への冒涜へと繋がる。
そうなる前に・・・“彼ら”との戦いで滅びたい。
―――――やるしかない。
そう考えた時、アバドンは既に外へと飛び出していた。
ソロモン:
『現在、異常なまでの神喰率数値を検知しました。鐵ツルギらとの強制介入通信を推奨します』




