第25話:神喰異世界群―クラックワールド・カオスエンド―その4
立ち話もなんだということで食堂へと移動することになった。
理由は言うまでも無く、ライカが空腹を訴えたからである。
いつも通り、大量に用意されたご馳走に目をサンサンと輝かせながら食べるライカを余所にツルギ達はヨハネスと会話を行っていた。
レディA:
「やはりヨハネス先生の世界はもう崩壊して存在していないと」
ヨハネス:
「カドゥケウスに乗って世界を見て回ったからね・・・残念だが」
マナ・ケミア:
「邪神に全部壊されてたね」
ツルギ:
「ヨハネス先生らもか・・・」
ヨハネスの言葉にツルギは少し神妙な面持ちを浮かべる。
ヨハネス:
「つまりはキミ達も?」
レディA:
「全員が全員ではないですけれども邪神達によって世界を滅ぼされた者も少なくありません」
そう言うとレディAは食堂の周りを見渡す様に視線を向ける。
食堂は美味しそうに山盛りの料理を食べているライカを始め、炊事担当のメイド達が調理メカ達と忙しなく格闘し、整備や警備担当のメイド達が料理を選んでいる。他にもメイド以外のスタッフらもその姿が確認されており、皆様々な事情でこの艦に乗っている面々だ。
無論、レディAもそんな人間の一人であることは当然である。
レディA:
「私達、神殲組の目的は邪神達の理不尽な神喰行為から世界を守ることを前提に活動しております。ですが、ヨハネス先生もお分かりいただけたかもしれませんが戦力と呼べるものはデモンデウス以外にはこの艦には圧倒的に不足しております」
ツルギ:
「一応、直掩を目的とした人型ドローン兵器も配備してたり、ロンギヌス自体も戦えない訳じゃないんですけども邪神達との直接対決に置いてはデモンデウス以外では難しいのが実情なんです」
レディAの言葉に補足する様にツルギも矢継ぎ早に言葉を繋げる。
ヨハネスも格納庫で観たデモンデウスと比べるとふた回りほど小柄な人型ロボットの存在は確認していた。
恐らくは艦周辺を警護などを目的とした迎撃用の無人兵器だと思っていたが実際その通りだったようだ。
ヨハネス:
「確かに戦力として考えれば“全体的に不足”していると見えるな」
レディA:
「差し出がましいことは重々承知しておりますがヨハネス先生、共に戦ってはいただけますでしょうか」
ヨハネス:
「―――それはキミ達と一緒にこの艦に乗って戦って欲しい、と捉えていいのかね?」
レディA:
「そう捉えて頂いて構いません。ヨハネス先生が本来は医療従事者であることも考慮しておりますが邪神への数少ない対抗戦力をお持ちであることも」
ヨハネス:
「――――」
レディA:
「無論、そちらの意見を尊重した上でのご相談ではあります。そちらが拒否するのでしたらそれでも構いません。ですが、私達は今は少しでもチカラが必要でもあります。どうか」
深々と頭を下げるレディA。
その姿はあまりにも指揮官らしくない様に見えるだろう。
しかし、それでも彼女は彼女としての最大限の誠意を見せるべきだと判断し、頭を下げたのだ。
彼女が指揮官でありながららしくないのは彼女もまた“そうならざるを得なかった”立場だったのだろう
マナ・ケミア:
「先生」
隣にいた自身の相棒でもある少女が覗き込む様に初老の主を見る。
元から答えは決まっていた。
向かい側の少年少女らの誘いに応じたその時から、いやカドゥケウスとマナ・ケミアと共に戦うと決めた“あの時”から
ヨハネス:
「ワタシの出来る範囲であれば最大限の助力をさせて頂きたい。よろしくお願い申し上げる」
そう答えると同時に深々と頭を下げるヨハネスであった。
―フラグメント・マテリアル―
神喰異世界群-2
「邪神達による被害は大小様々で個人の場合もあれば世界そのものとその規模は千差万別。あるものは家族を、あるものは全てを失った。そして希望も絶望すらも己が色に侵食する神喰異世界群に呑まれていく。防ぐ術は現状存在せず、あるとすれば邪神への抵抗や殲滅以外では存在しえない。対話も和解も出来ない。知的生命体の陥る末路の一つと称される」




