『アルファ』を獲得せよ〜レッスンその1『根気強く』〜
火災は燃え盛る木を見て駆けつけたリオーネ達のバケツリレーによって無事に消火された。今はケガ人の容態と安否確認が行われていたのだが、その中で悲痛の叫びを挙げる者が一人いた。
「いたたたたっ!?ちょ…キオナ…!?」
「何ですか?エイン〜?」
切り株の上に座らされたエインだった。彼は火傷の痕を妙にニコニコした笑顔を見せるキオナから消毒されていたのだ。
「もしかして…ワザと強く当ててる…?」
「私が、何で、そうしているか、分かりますか〜?こんな無茶をして〜?別に怒ってませんよ〜?」
「いだだだだっ!?滲みるよ!?それと傷口をそんなに擦らないで!?」
質問に態度で答えるようにキオナは消毒液をたっぷり漬けた脱脂綿で傷口を抉るように押し当ててエインに悲鳴を出させる。
「まったく、国の外で木が燃えていると報告を受ければお前達の仕業だったか。火遊びをするとはけしからんぞ」
「違うのだ!エインがルティカ達をバジリスクから守ろうとした結果なのだ!」
騒ぎを聞きつけたレイスニーも駆けつけ、遊び半分で木に火を放ったことを諌めるも、ルティカは何があったか説明してエインを弁明していた。
「…まあ、確かにこれを見たらな。この世界にもバジリスクがいたとはな」
横たわるティタノボアの死体を横目に見ながらレイスニーもそれ以上責めることは出来なかった。
「どうしたの、ラーナ。珍しく呆けちゃって」
「モルマ先輩…」
それぞれ治療や報告を受ける一方で切り株に座るラーナは何処か遠い目をしていて、そこをモルマから指摘されるとハッとなった。
「男の子って、皆エッチで下品なのかと思ってたけど…あんな風にカッコいい顔を出来るんだなぁって」
「あら、ラーナにも恋のキューピットが降りてきたのねー?お相手は誰かしらねー?」
「え…そんなんじゃないですよ!?」
憧れの先輩だからラーナは常に本音を語っていたため、今更になって本音を語っていたことに慌てて弁明しようとする。
トランジスタグラマーのために言い寄られたことで男を毛嫌いしていたラーナが一皮剥けていることにモルマは女子らしく相手が誰なのかと共にチームを組んでいた男二人を交互に見る。
「カルロス?でも、カルロスは候補生としてある程度の仲だし…もしかしてエインくんに惚れちゃった?」
「な…ちょ…そ…そそ…そんなんじゃないですよ…!?」
顔をリンゴのように赤くし、わたわたと腕を振る様はお手本のような図星だった。
「証拠はあるんですか!?」
動揺しながらも自分がエインに惚れている証拠はあるのかと、法律遵守をモットーにするキプロニアス国民らしい提言をしてくる。
「ふ〜ん…?キオナ姫、すみませんがエインくんを借りても?」
しかしモルマはニヤニヤしながら含みのある不敵な笑みを浮かべ、キオナにエインの貸し出しを要求した。
「え?宜しいですが…エイン、モルマさんが呼んでいますよ」
「いたた…分かったよ」
包帯を必要以上にキツく巻いてエインにお仕置きしていたキオナは唖然としながらも了承する。
「どうかしたんですか?」
キツく縛られた包帯に窮屈な思いをしながら、モルマとラーナの所へ来たエイン。
「ラーナの隣に座ってみて」
「はえっ!?モルマ先輩!?」
「…?良いですよ」
何か手伝って欲しいのかと思えば、ただ隣に座ることに首を傾げるエインは何故か慌てているラーナの隣にスッと座った。
「あの、これがどうかしたんです…あれ、ラーナさん。顔が赤いですけど、熱でもあるんですか」
気が付くとラーナの顔がリンゴのように赤くなっているため、熱でもあるのかとエインは手を伸ばす。
「えっ!?気の所為じゃない!?大丈夫だよ!?」
自身の未知の感情とエインの手から逃げるラーナは切り株から滑り落ち、尻餅を着いたまま後退りをしていく。
「エインくん、あなたも罪な子ね〜」
「はい?僕、何かしました?」
見事に図星が証明されたことにモルマはラーナとエインを交互に見ながらニヤニヤしていた。肝心のエインは何が言いたいのか分からずに首を傾げていた。
「しかしルティカ。バジリスクを仲間と共に倒したのは素晴らしいが、何故に国の外に出ていたのだ」
「おお、そうだったのだ。ルティカ達はワイバーン達をどうにかしようとしていたのだ」
当初は国の壁を文字通り飛び越えてくる翼竜達の問題をどうにかしようと外に出ていたが、紆余曲折あってティタノボアと戦う羽目になっていた。とどのつまり、本題は至って解決していなかったことにルティカは頭を抱える。
「それなら大丈夫だよ。話は付けたから」
「それ、どう言うことだよ」
言葉が通じない翼竜をどうやって口説いたのか気になるところだが、一番の問題はどんな説得をして翼竜達を納得させたかだ。
「それで相談なんだけど…」
オズオズとした様子でエインはルティカとレイスニーにとある相談を持ち掛けた。
▷▷▷
『『『ゲケケケ…!』』』
それから数日後にディモルフォドンが性懲りも無くグランドレイク王国の城壁を飛び越えようとする。
『ケエエエ!』
『クエエエ!』
しかし上空からプテラノドンが襲い掛かり、ディモルフォドン達をトンボ返りと言わんばかりに追い返す。
『『クアアア…』』
ディモルフォドンが去ったのを確認したプテラノドン達は城壁の砲台置き場だった場所に着陸し、中にある巣の中で一休みするのだった。
「なるほど…彼らに取って我が国の城壁は外敵から身を守るのにうってつけと言うことですか」
「うん、あそこを提供する代わりにディモルフォドン達を何とかして欲しいって頼んだんだ」
城壁を見上げながら呟くキオナにエインがどう説得したのか答える。
「しかし大丈夫なのでしょうか。以前は砲手が襲われたのにですよ」
やはりと言うべきか良い顔はしなかった。この異世界に転移した日の夜に、ティラノサウルスの侵攻を防ごうとした砲手がプテラノドンに襲われ、今では仕事場である砲台置き場がそのプテラノドンの住処になるなんて皮肉過ぎる話だった。
「それに人を襲ったことのあるモンスターがあそこに住み着いて危険がないのでしょうか?」
おまけに人を襲ったことのあるモンスターが城壁に住み着くなんて気が気ではないだろう。例えるなら人を襲うようになったクマを飼うのと同じだった。
「それは大丈夫だよ。プテラノドンは基本的に魚しか食べないし、食べても国の人達が食べ残しぐらいだよ」
しかしそこはエインが折衷案を設けており、食べるのは魚か食べ残された肉ぐらいしか食べないとプテラノドンとの間で取り決めておいたのだ。
「それに悪い話ではなかろう!あの場所は使っていない置き場であったし、寧ろ砲手を襲うほどの豪胆さを持つワイバーンが味方に付けば心強いだろう!」
巣として提供した場所は既にホコリを被っていたため別にくれてやっても良かったし、人間に害をなす翼竜を追い払うのであればそれぐらいないと心許ないとエグルマは提案に肯定的であった。
「しかし兄上、やはり危険なのでは」
「獣は強き者に従う。元の世界では誰よりも強者であることを求め、弱肉強食の摂理を良しとしていた俺達からすればもっともらしいではないか!」
それでもレイスニーは引き止めようとするが、エグルマは元の世界でのハングリー精神やモチベーションを再燃させ、自分達を鍛え抜いて力強くなることでプテラノドン達を従えようとも考えていた。
「それに彼らが住まうことで私達にもメリットがあるんですよ」
話を聞いていたラスコの合図で衛兵達がバケツを抱え、シャベルなどを使って城壁の下に落ちていた物体を掻き集める。
「彼らの糞は火薬の材料になりますし、無精卵はそのまま食用になります。我々に取っては他のワイバーンから守ってくれる上に様々な恩恵を得られるのですよ」
城壁にプテラノドンが住まうことで排泄物や産んでも子供が生まれない卵は人間に取ってはありがたい贈り物であり、実際のところ確かに恐ろしいモンスターだが人間に取ってはメリットの方が大きいのだ。
「何かあれば僕が何とかするから」
「……何を言っているのですか。それなら提案を了承した私達にも充分責任があります。もしもの時は私達にも話しなさい。良いですね」
もしもの時は自分が責任を取る様子のエインにキオナは仕方ないと言わんばかりの顔を浮かべつつも、一人で抱え込まないように釘を刺すのだった。
「おおっ、エイン!ケガはもう大丈夫なのだ?」
『ブオオオ』
そこへステゴサウルスの首に載ったルティカがエインのケガの具合を聞いてくる。
「やあ、ルティカちゃん、ルーフ。僕はもう大丈夫だよ」
『ブオオオ』
『ルーフ』とはルティカと行動を共にしているステゴサウルスの名前で、野営の際に背中の板が屋根のように空を覆っていたことからこの名前が付けられたのだ。
「あの時の赤ちゃんモンスターとこうしてまた会えるとは思いもしませんでしたわ」
幼少期のルーフに面識があったのはエインだけではなかった。衛兵の格好をして外に抜け出していたキオナもルーフと出会っており、しかも自分の妹を首に載せるほど仲良くなっているとは思いもしなかった。
「エインとワイバーン達のお陰で小さいワイバーン達の問題がグーンと減ったのだ!ありがとうなのだ!」
「…!そんなことは…ないよ…」
屈託のない笑みでお礼を言われたエインは思わず赤面し、照れくさそうに顔を背けるのだった。
「それで次の付き人は…」
「私だ。しかしお前にはお前でやって貰うことがある」
ルティカは名残惜しそうにしていたが、最初に取り決めたようにエインは次の王位継承者の付き人であるレイスニーと行動を共にするところだが、遠回しに断られてしまうのだった。
「やって貰うことって」
「あれだ。お前の世話しているハーピーのことだ」
レイスニーが後方を指差すとトウガが何かと争っている光景があった。
『ギシャア!?』
「あうが!うがああ!」
なんとヴェロキラプトルの一頭を脚で組み伏せ、逆らうならば許さないぞと言わんばかりに威嚇していたのだ。
「今はモンスターだけに留まっているが、あれでは通行人にまで危害が及ぶかもしれん」
通り魔よりも攻撃的なヴェロキラプトルを圧倒しているのなら、通行人に対してはどうなるかぐらいはエインにでもすぐに察せた。
「トウガ!ダメだよ!」
「がうあっ!」
宥めようとヴェロキラプトルの前に立つも、トウガは腕の翼をバタつかせてエインに対しても威嚇していた。
「これは見事に反抗期に入ったわね」
「え、どう言うこと?何か大変なことになってるの」
「大丈夫よ。これは誰にでも起こることだから」
一部始終を見ていたアレッサはトウガに何が起きたか察してエインにアドバイスをする。
「ハーピーは獣人族の狩りのパートナーである分、ある程度成長すると攻撃的になるのよ」
「じゃあ、どうしたら良いの」
狩りをするよう進化してきた猟犬は身体が大きく、攻撃的である傾向がある。それはハーピーでも同じらしく、その性質がある以上はどうしようもないのかとアレッサに訊ねる。
「それはあなた次第よ。この子はあなたのパートナーであり、子供でもあるのよ。あなたが責任を持って向き合うべき義務があるわ」
長年ハーピーと関わったアレッサ達ならばトウガを大人しくすることが出来るノウハウがあるはずだ。しかしそれには親であるエイン自身が重要だと言うことだった。
▷▷▷
「あ〜あ、せっかくエインくんと一緒にいれると思ったのにぃ〜」
「んだよ、俺らじゃ不満かよ」
「こんなにイケメンなのによぉ!」
「…行くぞお前達」
不貞腐れるレーヌを始め、リュカとマーキーのコンビがレイスニーのチームとなって行動することとなった。
「そう言えばあいつはあれ…何やってんだ」
「さあな?あんなんでハーピーが言う事を聞いてくれるのか」
不貞腐れている理由として現在エインがトウガを躾けるために奇妙なことをしているのだが、見ていてあんなので効果があるのかと疑問に思う。
「はあ…はあ…キツい…ごめんね…!?」
エインは二つの支柱に吊るされた止まり木をガタガタと乱暴に揺らしていた。
「あう!?うがあっ!?」
そしてトウガは特殊な頭巾によって目元を覆われ、足枷によって止まり木に拘束された状態になっていた。揺らされる度にトウガは藻掻くように暴れるが、頭巾も足枷も鍵が無ければ取れない仕組みであるため徒労に終わる。
「あの…これは一体何をしているんですか」
「ハーピーを大人しくさせる方法よ。ああやって拘束して視界を遮ることで自由と情報を遮るのよ」
キャロラインの質問にアレッサは何が行われているのか、どんな意味があるのか淡々と説明する。
「じゃあ、揺らしているのは何でですの?大人しくさせるだけならば、拘束するだけでよろしいじゃないですか。あたしも悪いをしたら同じことをされましたし」
昔の躾だと悪いことをしたら押し入れなどに押し込めて反省させるやり方があった。エルケも同じことをされたらしいが、その上で揺らす必要があるのかと疑問に思う。
「そうだけど、ハーピーを従順にさせるためにも準備がいるのよ」
「ああやって目が見えないし、動けない状態で耐えず揺らすことでストレスを与えて疲弊させるんだ」
アレッサだけでなく、マルスも重要なことだと改めて詳しく説明をしながらエインに近付く。
「くうっ…うぬあ…!?」
「ううっ…くうっ…トウガ」
エインはあれからずっと止まり木を揺らし続けており、それに伴ってトウガはずっと揺らされている上に空腹で弱り果てていくため、お互いに体力的にも精神的にも辛くなっていく。
「耐えろよエイン。トウガを疲労と空腹で消耗させて判断力を奪うんだ」
マルスは非情とも言える台詞を言い放つが、それは大きな目的を見据えたような口振りだった。
「これ、いつまでやれば…」
「気を抜かないで。少しでも揺れを止めたり、あなたが先に眠ってしまえばトウガに休む隙を与えてしまうわ。そうなるとそれまでの労力が無駄に終わるわよ」
あれからかなり揺らしているが、終わりは何時なのかとエインは聞こうとしたが、質問する暇はないとアレッサは言ってのけて揺らし続けさせる。
「あの、これはいつまでやらせるんですか。休む暇とかないんじゃ…」
「こいつは根気のいる儀式なんだ。個体差によるが、十日間はやり続ける」
質問や無駄口を叩く暇すらないとなると、どれほどの期間で執り行われるのかとラピスが代わりに聞くと、想像を絶するほどの日数を掛けることに絶句する。
「そんな…じゃあ、その間エインくんは…」
「トウガはまだ子供だから体力的にはそんなに長くはないわ。けれどもハーピーは狩猟のパートナーと言うだけあって、人間の体力を軽く上回っていることが多いわ」
フォローのつもりだろうが、生半可な覚悟では達成出来ないことは間違いないとアレッサは遠回しにルシアンに告げた。
「ねぇ、キツかったらあたしが変わろうか?」
「大丈夫です、エリーシャさん…僕にやらせてください」
体力的にエインが不利だと考えたエリーシャは問いかけるも、彼は振り向かず止まり木を揺らし続けてトウガと根比べをしていた。
▷▷▷
「国の外に出て何をするんですか、レイスニー様」
「ルティカ様と同じく、外で何か解決するんですか」
その頃、レイスニーに連れられたデコボココンビは国の外に出た理由を暇そうに訊ねる。
「ここ最近は木々が生い茂って見通しが悪いと見張りからの言伝だ。これでは侵入者やモンスターの接近に気付きにくい」
その質問に答えてやるとレイスニーは斧を持って周囲を指す。ここら辺はフィールドワークなどをして道などは拓けているのだが、木々が生い茂っていて見通しが悪いのだ。
「それに外部の国ともコンタクトを取りたいからな。そのためにも木々を切り倒して見通しをよくすることにするのだ」
これまでの遠征などで他の国が自国と同じように異世界転移しても何とか生き延びていることは周知している。だからこそ他国とも連携を取って同盟を結ぶことで防衛や復興はもちろん、生産業や貿易業なども盛んに行い生活基盤を磐石にしようと考えていた。
そのためにはグランドレイク王国付近の安全を確保する必要があり、木々を切り開いて見通しをよくする必要があった。
「え〜、俺らだけでやるんすか?」
「こんなの俺らだけじゃ日が暮れても終わらないですよ」
言いたいことは分かったし、実現出来れば輝かしい未来が待っているだろうが、たった四人でこれだけの木々を切り開くなんてどれほどの年月が掛かるか分からない。長期スパンはまず覚悟しなければならない。
「分かっている。だから今回は…」
「実は俺も来ているんだ!」
それを見据えていないレイスニーではなかった。そこには一応は王位継承者のライバルでもあり、兄でもあるエグルマがそこに居合わせて斧を肩に担いでいた。
「うへぇ〜…俺もやんのかよ」
「俺の上腕二頭筋が唸るぜ!」
「私は基本的に運動はダメなんですけど…」
エグルマの付き人として気怠そうなドラン、自慢の筋肉を披露するようにポーズするルマッス、そしてドラン以上に落ち込むラスコだった。
「今回は兄上とも共同してある程度切り拓くことにする」
「時として争い!時として手を取り合う!中々面白いではないか!」
基本的には王位を巡って争う間柄ではあるものの、民のためならば手を取り合う辺りは兄弟愛を差し引いても流石と言うべきだろう。
「では早速取り掛かるが…ん?」
「…気付いたレイスニー」
地図を広げて何処を切り拓くか話し合おうとした矢先、レイスニーとエグルマは真剣な面持ちになって不穏な気配を察知する。
「どうしたんですか」
レーヌは表情からして異常事態が発生したと理解したが、何を察したかはレイスニーとエグルマしか知らない。
「モンスターの気配…それと人の気配がする」
「誰かが追われているな」
遠くからモンスターの足音と叫び声、それに合わせて切羽詰まった喧騒が聞こえてくる。
『ガオオオオ!』
場面は変わってグランドレイク王国へ続く街道をガラガラと騒がしい音を立てて車輪が転がり数台の馬車を前へと進めていた。と言うのも馬車の背後からは悪魔のような一対の角を頭に生やした肉食恐竜『カルノタウルス』が地響きを立てて追いかけていたからだ。馬車を引く馬達も死に物狂いの表情をしていた。
「この野郎!あっちに行け!」
『ギャオオ!?』
馬車の屋根から若い男が矢を放ってカルノタウルスを威嚇する。危うく刺さりそうになって脚がもつれたカルノタウルスはその場に派手に倒れてしまう。
「っしゃあ!追い払ぎゃあああ!?」
『グオオオ!』
文字通り一矢報いたかと思ったら、馬車の前方の森から別のカルノタウルスが襲い掛かってきて、若い男は敢え無く頭から丸齧りにされて地面に叩きつけられる。
『ギャオオオオ!』
先程転んだカルノタウルスは起き上がり、先程矢を放った若い男を食らうカルノタウルスの側を通り抜けて馬車を再び追いかけ始める。
「ランパスさんがヤラれました!?」
「そんな…このままだと私達は…」
馬車の中でウサギ耳を持つ獣人の女性が護衛の若い男がヤラれたことを報告し、それを聞いて絶望していたのはピエロの帽子を被ったショートヘアーの少女だった。
「あのモンスターは何なの?」
「あれは『カルノタウルス』なの。きっと地の果てまで追ってくるの」
傍らでは八歳ぐらいの少女が追いかけてくるモンスターのことに付いて訊ねており、その側にいる四歳ぐらいのツインテールの少女が淡々と答える。




