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『二種類』の問題

「よーし!今日は頑張るのだー!」


翌朝になったグランドレイク王国城の中庭でルティカはニワトリも顔負けな声量で高らかに宣言する。


「今日は頑張ろうね」


「おうともよ!なのだ!」


今日一日エインはルティカの付き人となり、他の二人と混じって王位継承戦の活動に加わることになっていた。


「はぁ〜…どうせならモルマ先輩と一緒が良かったな〜」


「仕方ないだろ。付き人同士で依怙贔屓(えこひいき)しないようにするために、親密な人間同士で組まないようにされてんだから」


ルティカのチームにはエインの他にラーナとカルロスが加わっていたのだが、諸事情があるとは言え憧れの先輩であるモルマと組めなかったことにラーナは口を尖らせていた。


「くぁ〜…」


「お?そう言えばこいつは何なのだ?」


エインの足元にはトウガンがあくびしながら寄り添っており、ルティカは面識がない上に初めて見るハーピーに興味津々だった。


「トウガンだよ。僕がその…お母さんになっちゃったからね」


トウガンは刷り込みでエインを親として認識しており、離れ離れにするのもかわいそうなため今回の活動に同行させたのだ。


「おおっ、お母さん…なのだ?」


エインの説明は抽象的で意味が分からず、ルティカはオウム返しするように生返事するしかなかった。


「それで…これからどうするんですかルティカ姫」


「昨日のワイバーンが国のあちこちで悪さをしているのだ!だからそれを追い出すのだ!」


気を取り直し、昨日のワイバーン…リリーを連れ去ろうとしたプテラノドンのことをラーナから訊ねられたルティカは、それによって起きた問題解決のために動くと決めていた。


「空を飛ぶ相手をどうやって追い出すんですか。例え追い出したとしても、時間が経てばまたやって来ますよ」


元の世界でも本物のワイバーンやオバケ鳥など空を飛ぶモンスターはたくさんいて、国境沿いの壁を飛び越えて国に侵入することは珍しくなかった。


それでもスキルや魔法などがあれば結界などを半永久的に張り巡らせたり、それこそ冒険者達の手によってモンスターを間引きして貰うことで国内への侵入を防ぐ手立ては幾らでもあった。


「例え弓矢や銃があったとしても、空を飛ぶ相手に上手く当てられるかどうか」


失われた魔法やスキルの代わりとなる銃や従来の弓矢があれば太刀打ち出来るかもしれないが、相手は空を飛ぶためどちらにしても命中率の問題であった。


「だからエインの力が頼りになるのだ。ウィルマでも昨日の奴よりも大きなワイバーンを倒した手腕は見せて貰ったのだ」


しかしルティカにも宛がない訳でもなかった。最初は魔導大国であったが、今や翼竜の王国となったウィルマでエインはキオナの窮地を魔法もスキルも無しに救ったことが功績がある。


因みにルティカの言う大きなワイバーンとは、ウィルマの実質的な支配者であった白いケツァルコアトルスのホワイトアウトのことだ。


「今回もきっとあのワイバーンを何とかしてくれるのだ!」


「え〜…そんな事を言われても」


子供ならではの楽観的な考えからプテラノドンのことも何とか出来ると思っていたルティカだが、エインはあの時のようなことが出来るかどうか不安そうだった。


「ウィルマって、あの魔法使いに取っては名誉とも言われる伝説の国の…?」


「だろうな。けど、昨日のワイバーンよりも大きな奴がいるのか。さすがのウィルマも魔法がなきゃ、他と同じ末路を辿ったようだな」


多くの法律や規律を制定し、官僚国家として管理体制を敷いていたキプロニアス王国出身の二人に取ってもウィルマの伝説は知れ渡っていたが、現状を知ってそれなりにショックを受けていた。


「うわああ〜!?」


「おっ!事件の匂いなのだ!」


悲鳴と聞けば何かしらの事件やトラブルが起きた前触れであり、不謹慎ながらルティカは目を輝かせてそちらへ向かう。


『『ギャアギャア!』』


『『ギシャア!』』


「うわあ!何だよ、この気味の悪い鳥は!?」


騒ぎの場所ではカモメサイズの翼竜がしゃがれた鳴き声を発しながら売店を飛び回っていた。


「何だあの小さなワイバーンは。やたらデカい頭をしてるな」


カルロスの挙げた特徴にあるように、その翼竜達の最大の特徴は身体に不釣り合いな大きな顎であり、見た感じは肉食恐竜の頭をくっつけたような見た目であった。


「あれは『ディモルフォドン』ですよ」


「ディ…ディモ…?とにかく何とかしないと!」


発音しにくい『ディモルフォドン』と言う名前に苦戦するよりも、出店の肉を食べ尽くされる前に追い払わなくてはいけないとナイフを構えたラーナに三人も頷いてそれぞれ武器を持つ。


『『ギャッギャッ!』』


「あん、このぉ!」


しかし本能的に武器を持った人間の脅威は分かるのか、ラーナ達が近づいた瞬間にディモルフォドンは空へと飛び立ち、嘲笑うように刃が当たらない場所で旋回していた。


「コラァー!降りてくるのだ!卑怯なのだー!」


やっぱり空を飛ぶ相手ではこうやって追い払うしかなく、それでも再び戻って来るイタチごっこにルティカは剣を振り回しながらディモルフォドン達に怒鳴る。


そうこうしてると背後から別のディモルフォドンが体当たりして小柄な身体を押し倒してくる。


『ギャアギャア!』


「うぎゃあっ!?ひいいいっ!?」


ディモルフォドンはリンゴも簡単に噛み潰せそうな顎をガチガチと開閉させながら噛み付こうとし、ルティカは恐怖しながらも首を掴んで歯が届かないよう踏ん張っていたが時間の問題だった。


「ルティカちゃん!」


『グゲェ!?』


あと少しで歯が届く所でエインから横腹に蹴りを入れられたディモルフォドンは横倒しにされる。


『ガルア!』


倒れた所でロボが首に食らいつかれ、脚と翼を暫くバタつかせるも、そのままピクリと動かなくなり息絶えるのだった。


「大丈夫?ケガはない?」


「こ…怖かったのだ〜…!?」


幾ら小柄とは言え、ディモルフォドンの大きく開かれた鋭く尖った歯が並んだ口が食らいつこうとしてくるのを目の当たりにしたら、人によっては失禁してしまうだろう。


「攻撃出来るとしたらカウンターを狙うしかないな」


空を飛ぶ相手を攻撃出来るのは捕食のために高度を変える瞬間しかないとカルロスが助言する。


「カウンター?」


「分かりやすく言うと、相手の攻撃の勢いを利用したり、攻撃しようと接近して来た所をあべこべに倒すことだ」


戦闘用語をよく知らないエインはこんな殺伐とした状況なのに思わず首を傾げていたが、カルロスは戦力として活躍してくれるよう出来る限り分かりやすく説明するのだった。


「でもこのままだとディモルフォドンに品物を全部食べられちゃう。何かないかな…うわ!?」


空を飛ぶ相手への対抗手段を探そうとするも、隙を狙って目ざとくディモルフォドンが背中に飛びかかってくる。


「エイン!?うおっ!?う…浮いてるのだ〜!?」


「ルティカ姫!?」


「ルティカ姫が飛んでいるぞー!?」


背中のディモルフォドンを生体電流(パルス)で痺れさせて追い払っていると、今度はルティカの剣や服を後ろ脚で掴んだディモルフォドン達が空へと上昇していくのが目に入った。


「危ない!」


「あうあうあうあう!?痛いのだぁ!?」


「拷問か」


エインは咄嗟にジャンプしてルティカの足を掴んで地上へと降ろそうとするが、負けじとディモルフォドン達も羽ばたいて空へ上がろうとするために、真ん中にいるルティカは綱引き状態になり一昔前の拷問を受けているかのようだった。


「いい加減にして!」


ラーナは小石や品物を載せていたトレーなどをディモルフォドンに投げつける。これに驚いたディモルフォドン達は後ろ脚を離して近くの木の枝へと飛んでいく。


「ルティカちゃん、ケガはない?」


「お腹と背中が伸びるかと思ったのだ」


エインの腕の中でルティカは引っ張られた胴体を涙目で擦っていた。


「あいつらまだ諦めてないな。お前のその電気で何とかならないのか」


「引き下がる気はないみたい…何とかして追い払わないと」


生体電流で木の上でこちらを見下ろすディモルフォドンの生体電流を読み取るも、やはり店の食べ物を諦める気はないようだった。


「……」


ほぼ全員が木の上のディモルフォドンに対して敵意を向けていたが、トウガンだけは眠たげな目で何処か違った視線を送っていた。


「ルティカ姫、何とかなりませんか。これでは商売上がったりですよ」


「ううむ…空を飛ぶモンスターを近付かせないようにするにはどうしたら良いのだ」


店主は困り果てた様子でルティカに訊ねるも、彼女も良いアイディアが思い付かないことに困ったように首を傾げていた。


「キオナ姉様が留守の間に国を良くしたと思ったら、空を飛ぶモンスターがウヨウヨするようになったのだ。だからルティカが何とかしないといけないのだ」


ただ留守番するだけでなく、自国をより良くしていたルティカはやがて翼竜の問題に直面した。だからこそどうしても自分で解決せねばと考えていた。


「なるほど。これから先、国を良くするためには空から来るモンスターも何とかしなきゃならない。もし出来たら王座も夢じゃない訳か」


自分が携わったこともだが、これを解決出来れば王位に着けることは間違いないと考えていた。


「でも、難しいよ。空を飛ぶ相手にどうやって…」


「……ん?今のは…」


ラーナは追い払うために持っていたトレーを水平に投げると、投げられた小石よりも遠くに飛んでいくのを見てエインは考え込みながらトレーを拾う。


「…それ!」


『キャンキャン!』


真似するように拾ったトレーを水平に投げるとロボは嬉しそうに追い掛けていく。


「何をしているのだ?」


「フリスビーで遊んでる場合?」


まるっきり飼い犬とフリスビーで遊ぶ様にラーナは腰に手をやりながら呆れていた。


「ラーナさんのお陰で良いこと考えたんだ」


「え、どう言うこと」


呆れていた自分を褒めてきたことにラーナは唖然となってしまう。


「よく分からないが、それであのモンスターを追い払えるのか」


「でもこれだけじゃまだダメかも。後は何か…」


『ギイアアア〜!?』


何を考えたか分からないでいると苦悶に満ちたうめき声が通りから物音を響かせながら向かってくる。


「ひゃああ〜!?ゴンちゃん〜!?」


『ギイアアア〜!?』


向かってくるのはこの世の終わりと言わんばかりに暴走するアンキロサウルスのゴンと、その背中に乗ったリリーだったのだ。


「ちょ、今度は何なのよ!?」


「あのモンスターはあんな暴れる奴じゃないだろ」


基本的に穏やかなアンキロサウルスだが、何かが原因で暴れているのは確かだ。


「ロボ、フォークを連れてきて!」


『ウォン!』


「俺も行く。鍵がないと柵を開けられないだろ」


どちらにせよ一度暴れ出すと手が付けられないため、食い止めるにはトリケラトプスのフォークの力が必要だと判断したエインはロボに連れてくるよう頼み、鍵を開けるためにカルロスも同行する。


「お兄ちゃん〜!?助けて〜!?」


「リリーちゃん!今行くよ!」


ゴンの背中の甲羅に必死にしがみつくリリーが振り落とされないようエインは飛び付いて覆い被さるよう甲羅にしがみつく。


「ちょ、そんな無茶をして…ああ〜もう〜!?」


「えっ!ラーナ!?」


無謀だと呆気に取られるラーナだが居ても立っても居られないいられなくなり、同じくゴンの背中に飛び付いた。


『ギイイイ〜!?ギアアア〜!?』


「わわっ!?振り落とされる!?」


ラーナはゴンの背中の鎧のトゲに掴まるものの、牛のロデオだって一苦労なのに、サイズと体重が何倍もあるアンキロサウルスのロデオなんて想像も出来ないほどに過酷だろう。


「わあっ!?」


「ラーナさん!?」


遂に耐えきれなくなったラーナはトゲから手を離してしまう。このままだと地面に勢いよく叩きつけられてしまうだろう。


「ぐうっ…!手を離さないで!?」


「エイン…くん…!?」


リリーを庇いながらエインはラーナの手を掴んで、共に落ちないように踏ん張っていた。


「ど…どうしたら良いのだ…!?」


『グオオオオ!』


足が竦(すく)んでしまったルティカはどうしたら良いか分からずアワアワしていると、後ろから足音と唸り声を響かせながらフォークが走ってくるのが目に入った。


『グオオオオ!』


『ギイ!?』


頭を低くくしたフォークはそのままゴンの右前脚に両目の上の角を挿し込み、多少身体が土煙を上げながら後退するも、そのまま体重差を利用して踏み止まる。


「今だ!ラーナさん!リリーちゃんと一緒に離れて!」


完全ではないが動きが止まったのを確認したエインはリリーをラーナに託すと、ゴンの背中の上を頭部に向かってよじ登っていく。


「お兄ちゃんは!?」


「そうだよ!どうするの!」


言われた通り、リリーを抱えてゴンの上から降りたラーナは共に安否を心配するも、エインはフォークの頭のフリルを越えて背中に乗っていた。


「まずはゴンちゃんを大人しくさせないと…フォーク!」


『グオオオオ!』


エインの生体電流の合図と共にフォークは首と脚に力を込めて頭を大きく振り上げる。それにより挿し込んだ角も突き上げられ、それに伴いゴンは勢いよくその場にひっくり返る。


「マジかよ…ひっくり返しやがった」


柵の鍵を開けに行ったカルロスは目の前で巨大な恐竜が亀のようにひっくり返される光景を見て呆気に取られた。


『ギイイイ〜!?』


「ひっくり返ると結構可愛いね」


ひっくり返ったアンキロサウルスは特徴的なゴツゴツとした鎧が威圧感を放つ印象があったが、今や鎧に覆われていないツルツルとした無防備な腹を見せながら脚を必死にバタつかせる様子は愛らしさがあった。


「リリーちゃん、何があったの」


「あのね、ゴンちゃんとお散歩してたらトウガンの実を間違って食べちゃったの。そしたらお兄ちゃんが女の子の格好をして行った場所と同じことになったの」


「あの時のゴンちゃんは様子がおかしかったけど、トウガンの実を食べたからだったんだね」


キプロニアス王国でも今回の時と同じように暴走していたが、何が起きたかリリーから聞いて理解したエインはバケツいっぱいに水を持ってきて飲ませる。


『ギイイイ…』


「ゴンちゃん、今度からはトウガンの実は食べないようにしないとね」


落ち着いた所でもう一度フォークがゴンをひっくり返し、取り敢えず事態解決となるのだった。


「はあ…ルティカは何も出来なかったのだ…」


自分一人だけでは事態解決に至らなかったことにルティカは涙を溜めながら深く落ち込んでしまう。


「ルティカちゃん、思えば僕も僕一人だけでは何も出来ないことはたくさんあったよ。ルティカちゃんも何も一人で抱え込まなくても良いんじゃないかな」


そんなルティカにエインは目線を合わせて、自分が経験したことを話し励まそうとする。しかしルティカは首を横に振りながら涙を拭う。


「国王と言うのは強く偉大で民を守る存在なのだぞ。だから民よりも先に前に出て戦い、民を守り導くためにも一歩先を見て置かないといけなかったのに…ルティカは…」


ルティカも自分なりに国王としての在り方を自覚していたが、それを全う出来なかったことが悔しくて堪らなかったのだ。


「大丈夫ですよ。ルティカ姫だってこの異世界でこの国をここまで良くしてきたんですよ。少しくらい失敗したって良いじゃないですか。寧ろその方が親しみがあると思いますよ」


「ラーナ…そんな風に言われたのは初めてだぞ」


国王としてのプレッシャーがずっと小さな肩にのしかかっていたが、ラーナの言葉を聞いて肩の荷が下りたのか自然と涙が溢れ落ちる。


「僕は国王が何なのかはよく分からないけど…きっと国は僕らが一緒に良くしていくことが大事なんじゃないかなって思う。大勢の人が僕を助けてくれたお陰で、ここまで来れたようにね」


「エインくんの言う通り、もっとあたし達を頼ってくださいよ」


「う…ううっ…ううううっ〜…!?」


ずっと溜め込んでいた気持ちが二人の言葉によって楽になり、遂に耐えきれなくなってスカートの裾を掴みながらボロボロと涙を零し続ける。


「王は…民の前では泣かないのだ…」


気持ちは楽になったが、それでも王としてのプライドが勝ったのか泣きたい気持ちを押し殺して涙を拭い、次の瞬間には強気な表情を精一杯見せるのだった。


「それでこれからどうします。当初の問題は解決していませんよ」


蚊帳の外になっていたカルロスはここでようやく口を開いて話題を戻す。ゴンの騒動は単なる突発的なアクシデントであるため、今自分達がすべきなのはディモルフォドン達の問題だった。


「エイン、さっき何か思い付いたのだな?出来れば教えて欲しいのだ」


「良いよ。あのね、準備して欲しいのがね…」


励まされて立ち直ったルティカは早速と言うべきか、何か思い付いたであろうエインに助言を求め、彼も喜んで自身のアイディアは説明する。


▷▷▷


『グケケケ』


『ギャアギャア!』


『ギシャア』


いつの間にかグランドレイク王国の街路樹や、国内の農業地区を取り囲む木々の枝の上にはディモルフォドン達が次々と集まっていた。


国内には天敵やライバルらしい肉食恐竜はおらず、放牧場では恐竜の卵やプロトケラトプスやオヴィラプトルの子供が手に入るし、商業区に至っては仕留める必要がない肉や魚が道端に落ちているも同然の状態であった。


後はおかしな鳴き声を放つ猿のような生き物の存在を除けばここは理想郷であり、今更何処かへ引っ越すつもりはなかった。


するとドサッと言う音が止まり木の近くでし、何かと視線を移すと美味しそうな生肉が山として積まれていたのだ。


『『『ギャアギャアギャア!』』』


鴨が葱を背負って来たような状況にディモルフォドン達は挙(こぞ)って肉の山に群がる。


『グルル……っ!?』


『ギシャア!?』


ガツガツと生肉を貪っていたディモルフォドンだが、口の中に燃えるような痛みと鼻を刺すような鋭い痛みが走った。


『グゲエエー!?』


『ギギャアー!?』


『ウゲエ…!?』


正しく味わったことのない刺激にディモルフォドン達は涙目になりながら、苦しみから逃れるように食べた肉を吐き出そうと羽ばたきながら暴れ出す。


「うーわ…ありゃ辛そうだな」


「肉にトウガンパウダーを涙が出るぐらいかけたからね」


木陰から店主とラーナはとても辛いトウガンパウダーで味付けされた肉を食べて悶え苦しむディモルフォドンを見て唖然としていた。


「割とえげつない作戦を考えたな」


「オノーダおじさんがね、農作物が虫に食べられないようトウガンのエキスを塗っていたのを思い出したから、もしかして使えるかなって思って」


「虫じゃないけど、スゴい効果なのだ」


辛さで苦しみながら飛び回る様は見ていて痛々しいが、単なる虫除け対策が思わぬ効果を生み出していたことは間違いなかった。やがてディモルフォドン達は肉の山を前に蜘蛛の子散らすように飛び去っていく。


「これでもう店の肉を食べようとは思わなくなるよ」


「しかし、被害は他の場所でも起きているのだぞ。それにあいつらは良くても昨日のデカいワイバーンはどうするのだ」


店の方はこれで良かったかもしれないが、これは氷山の一角でしかなく、おまけに本題のプテラノドンのトラブルも残っていた。


「それも任せてよ。とにかく今はプテラノドンと残りのディモルフォドンを探さないとね」


ここにはプテラノドンの姿はなかった。おまけにディモルフォドン達も何処かに巣があると考え、一同は翼竜が巣を作ると思われる場所を探して移動し始める。

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