『五』人の王位継承者
「キオナ姉様〜!会いたかったのだ〜!」
「ルティカ!元気でしたか!」
エルフの里とドワーフの王国との確執から始まり、キプロニアス王国の連続殺人や謀略、そして楽園での一時を経てようやくグランドレイク王国に帰ってみると真っ先に第五王位継承者のルティカが衛兵達と共に出迎えると同時にキオナに飛び付いたのだ。
「留守番、ご苦労であった!ルティカ!」
「しかし女が股を開いて飛びつくでない」
「えへへ……姉様!今まで何をしていたのだ!ずっとルティカ一人で大変だったのだぞ!」
姉と兄二人との再会に笑っていたルティカだが、直後にやはりと言うべきか思わぬ長期遠征になり国を長い間空かしてしまったことに憤慨する。
「ごめんなさい、エルフの人達がドラゴンに里を追われてしまい、一度キプロニアス王国に向かって事態解決に乗り出していて…」
そう言われてルティカはキオナに同行してる人間達をよく見渡してみると、水平に伸びた尖った耳が特徴的なエルフ族が何人かいることに気が付く。彼らはアクロカントサウルスによって住む場所を追われた上に人攫いに攫われた同胞のエルフ族を探して、これまで行動を共にしていたが最終的には手掛かりが掴めずにここまで来てしまったのだ。
「そしたらドワーフ王国はモンスターの侵攻を受けていて、その帰りに山賊に襲われて獣人族の方々と共に囚われたりしました」
キオナ達と同行しているのはエルフ族だけではない。癖のある赤毛に小柄な身体をしたドワーフ族のレーヌや、マルスやアレッサと言った獣の特徴を持つ獣人族も混じっていた。彼らと出会ったのもそこで起きていたトラブルを解決したからだった。
「挙句にはキプロニアス王国で連続殺人事件や暗殺者などが暗躍し、更に帰国しようとしたらトラブルで道に迷ってしまったために長期に渡って国を空ける羽目に…」
暫く拠点として滞在していたキプロニアス王国でもドリプトサウルスの殺人事件や王の暗殺未遂事件などの並々ならぬトラブルに巻き込まれ、帰還の最中にも楽園に迷い込んで思わず滞在してしまったためこんなにも国を空ける羽目になってしまったのだ。
「兄様達も迎えに行ったのに何してたのだ」
「済まない。キオナの言う通り、キプロニアス王国での暗殺を未遂に防いだと思ったら帰り道にもトラブルに見舞われてな!」
「長い間、留守番をさせて悪かったなルティカ」
話し相手は兄二人に変わり、ルティカは責めるように問い詰めるとエグルマは豪快に笑い飛ばし、レイスニーも微笑みながらルティカの労をねぎらう。
「本当に…寂しかったのだ…」
「…ごめんなさい。寂しかったでしょうに」
まだ六歳なのに王位継承者としての重責、そして兄と姉がいつ帰ってくるか或いは生きて帰ってくるか分からない孤独感にどれだけ心細い思いをしたのか、ボロボロと涙を流すルティカをキオナは優しく抱きしめる。
「…キオナ姉様…そうだ、シフォン姉様も帰ってきたからルティカは寂しくなかったのだぞ」
涙を拭ったルティカはもう一人の姉がいたから心細い思いも和らいだことを話す。
「シフォン…姉様も帰ってきていたのですね」
口振りからしてシフォンと言うのは二人の姉にあたる人物らしいのだが、キオナは苦手意識があるのか言葉に詰まっていた。
「帰ってきて当然だ。今の現状を鑑みればな」
恐らく同時期に帰国したか、或いはこうなることを分かっていたのかレイスニーはさも当然と言わんばかりの様子だった。
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「姫様、ご無事で何よりです!」
「見てください!だいぶ国も復興してきましたよ!」
「それだけではありません。作物や家畜などの生産も安定しています!」
何はともあれ無事に帰国したキオナ達は国民の人々から出迎えられる。その都度、復興や生産が順調であるの報告を受け、その証拠に建て直された家屋や家畜や恐竜の肉や卵を売る出店など、以前と比べると元の世界ほどではないにせよ賑わいを取り戻していることが見て取れた。
「あれから皆で魔法とスキルがなくてもちょっとずつ頑張っていったのだ!」
「よくここまで頑張りましたね。ルティカも国民の方々も」
最初はこの異世界に来てから魔法もスキルも使えなくなり人々は絶望していたが、次第に生き抜く術を見つけ出していき、やがて国を復興させるほどになるとは嬉しい誤算だった。
「エインに負けてられないからな」
「こいつは魔法もスキルも無しで生きていたのに、俺達が音を上げてたら恥ずかしくて表を歩けねぇってもんだ!」
「お陰で何だか懐かしくて清々しい気分だよ。ありがとう」
「……僕は別に何も」
と言うのもそれまで魔法とスキルが扱えないエインを『無能』と蔑んでいたが、この異世界に来てから彼は肉食恐竜に溢れた国内やティラノサウルス一家の襲撃を切り抜けた上にドレイク王まで下して今日まで生き延びていた。それが人々の心の変化の起爆剤になり、国の人々も今日まで生き延びてこれたとエインに感謝し彼を照れさせてしまう。
「しかしエグルマ様とレイスニー様、そしてシフォン様が一同に介したと言うことは…」
「はい、恐らくあれをするのかと」
復興作業をしていた一人の男性から王位継承者の名前を出されたキオナは一変して真剣な面持ちになる。
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「キオナ、兄様方、待っていましたわよ」
王座の間に入ると壇上には長くウェーブした緑色の髪と母性に溢れた雰囲気とボディラインが特徴的な女性が玉座に腰掛けてキオナ達の帰りを待っていた。
「シフォン姉様ー!」
「あらあら、ルティカったら、うふふ」
キオナの時と同じくルティカはその女性に飛びつく。どうやら彼女こそが話にあったシフォンらしく笑顔でルティカを抱き返すのだった。
「シフォンお姉様、お久しぶりですね。お変わりないようで」
「そうね、キオナも相変わらず……子供っぽくて可愛らしいですわね」
「余計なお世話ですよ!」
シフォンはルシアンとメロルをも上回る二つの果実を強調するように腕を組みながら、キオナの身体をしげしげ見つめながらニンマリしながら呟いてくる。
「可愛らしいのは本当よ。『ねえさま、ねえさま』って言いながら私の後を追いかけたり、おしゃぶりをしてないとすぐに泣いたりしてた子が大きくなっても可愛らしいままで…」
「何を言ってるんですか!」
大きくなると小さい頃の記憶が思い出せなくなるが、思い出話で聞かされると本当にそんなことをしてたのかと恥ずかしくなってしまうキオナ。
「ところであなたの側にいるその子は…」
話は変わってシフォンは玉座から降りて、キオナの側に控えているエインを険しい表情で見ながら歩み寄ってくる。
「あ、どうも…エインと言います」
「そう…あなたがあの時の…」
恐らくエインが王座の間で両親から捨てられた瞬間をシフォンは一部始終見ており、あの時の子供の面影をエインと重ね確信を持ったのだ。
「シフォンお姉様…あの…エインは…」
最初はエグルマとレイスニーもエインに対して眉をひそめたものの何とか受け入れてはくれた。だからこそキオナはシフォンにも同じように説得しようとする。
「かわいそうに!パパとママから捨てられて!たくさんの人からイジメられたでしょうに!?」
ところが険しい表情から一転して目に大粒の涙を溜めたシフォンはエインを自身の胸の谷間に沈めるように抱擁する。
「うぶっ!?な、何を……でも、温かい…良い匂いがする…」
嫌悪感しているかと思えば、子を心配する母親のように哀れんで抱き着いてくるシフォンにエインも訳が分からなくなるも、次第に彼女の母性に心地良くなり身を預けてしまう。
「四年前にあなたが捨てられたのを見てて、ずっと心配で心配で…しかも世界が今や右も左も分からなくなっている中でこんなに大きくなって…」
「…もしかして元の世界ではエインに取って唯一の理解者だったんじゃないの?」
「そう…だよね。世界がこうはならなかったらきっと…」
『無能』の烙印を押され親から捨てられる瞬間はエリーシャやルシアンだけでなく国民全員から周知されており、当時のエインには味方や理解者は一人もいなかった。しかしその中でもシフォンだけは違ったらしく今日までずっと気に掛けていたようだ。
「失礼ですね!私がエインの唯一の理解者ですよ!」
暫く自身の胸に二重の意味で葛藤していたキオナは対抗するようにエインの腕を強引に引いて抱き寄せる。
「あらあら、もしかしてずっとキオナを守ってくれたのね。ありがとうね。改めて自己紹介するけど私が第三王位継承者のシフォンよ」
「は…はい…」
「エイン?何を鼻の下を伸ばしているのですか」
胸のドキドキと褒められたことで頭がパンクしそうなエインは顔を赤らめていただけだが、キオナにはそれが面白くなく頬を膨らませていた。
「キオナもこれでやんちゃで危ない目に遭いやすいから心配なのよねぇ」
「それは…私からも否定しにくいですね。山賊のことやバジリスクのことと言い」
「リオーネまで!」
ディノニクスに襲われそうになって避難したエインの小屋でティラノサウルスに踏み潰されそうになったり、ウィルマでは白いケツァルコアトルスに攫われてヒナのエサにされそうになったり、ごく最近では楽園の地下で白いデイノスクスに泳げないのに水際まで追い詰められそうになったり…
思えばキオナは事あるごとに或いは彼女が脱走やお忍びを企てるごとに、トラブルに見舞われ危ない目に遭っていることに、味方と思っていたリオーネもシフォンの言葉に思わず同意してしまう。
「そうよねぇ、キオナは小さい頃から甘い物が大好きでティア達から止められてからこっそり盗み食いしたり、こっそりベッドの下に隠したりしてそれで虫歯になって『いたいよぉ、いたいよぉ』って泣き喚いたり、そしたら歯医者を嫌がって城の中を逃げ回ったりしてたわねぇ〜」
「そんな話を人前で話さないでください!?」
もう我慢出来ないとらしくもなくシフォンの豊満な果実を包み込んでいるドレスの胸倉を掴んで怒鳴りつけるキオナ。それまでは代理として国と民を率いてきたのにこんな恥ずかしい話をされたら威厳もへったくれもなかった。
「エインくんも大変だったわよね。でもキオナの側にいてくれてありがとう。キオナはこれでも寂しがり屋なのよ」
「そう…なんですか」
自分も明かしていないとは言えリリーとは兄妹であるのだが、同じ姉妹や兄妹間でもこうも差があるのかと圧倒されていたエインは生返事をしてしまう。
「お風呂の時も後ろにオバケがいるから怖いって裸で駆け寄ったり、一人で寝れるもんって強がってたら怖い夢を見たって私のベッドに潜り込んだり、その時は毎晩毎晩おねしょしちゃったり…」
「きゃーー!?きゃーー!?なんてことを言うんですか!?バカバカバカバカお姉様!?」
もう姉妹の和気藹々とした温かな会話ではなくキオナの恥ずかしい秘密の暴露大会になっており、叫びながら胸倉を掴んだままシフォンを揺らすキオナ。
「…ふふっ…シフォンよ、そんな懐かしい話をするために我らは一同に介したのではないぞ」
傍らで多少なり笑っていたレイスニーは助け舟、或いは本題に移るべく話を切り上げさせる。
「父上が亡くなった以上、王位を継ぐべき者を選出しなければいけないのだからな」
それぞれ遠征やらで国を空けていたが、亡くなったドレイク王の後任として新たな王を決める必要があった。
「キオナが良いんじゃないの?だってそれまではキオナが治めていた訳だし」
側で王女として国を治めているのを見ていたエインからすればキオナを推薦するのは明白だった。
「あれは代理で王座に就いていただけで、今から行うのは今後の国を治める王を決めるためのものですよ」
しかしながらキオナは正式に王座に就いた訳ではないし、他の王位継承者である他の四人がこの場に集まったことで本格的に誰が王座に就くか決めなければならない。
「無難にいくと第一王位継承者であるエグルマ兄様かしら」
「俺も兄上を推薦している」
「そうですね…私よりも兄様の方が相応しいかと」
「ルティカも異論はないのだ」
五人の兄妹の中で誰が王座に就くか話し合い始めるも、推薦する人物は兄妹間で既に決まっていた。自分達の長男であり、肩書きにもあるように第一王位継承者であるエグルマであり誰も異論を唱える者はいなかった。
「うむ、そうか!お前達の意見は聞かせて貰った!」
話を聞いていたエグルマは力強く答えるように頷く。後は彼が王座に就任すると宣言すれば万事解決するだろう。
「だが、俺は辞退する!」
「そうか、兄上は辞退する……なっ!?」
トントン拍子で決まるかと思いきやエグルマは兄妹達からの意見を一蹴するかのように王座就任を蹴ったのだ。
「何故なのだ。兄様ほどなら王座はピッタリなのだ」
「何か理由があるのですか」
ほぼ満場一致なのに、推薦されたエグルマが辞退したことにラティカは尚も食い下がるように王座を薦め、キオナは辞退する理由を訊ねる。
「うむ、何も就きたくない訳ではない。ただ単に俺はその座に就く資格がないからだ」
理由としてエグルマ本人が王座は相応しくないと言うのだが、それでもキオナ達は納得出来なかった。
「資格…ですが兄様の実力なら決して資格がないとは言えないのでは」
「実力云々の問題ではない。寧ろ俺は俺達がいない間にこの国の人々を率いていたキオナとルティカを推薦するがな」
諭しているはずが逆に諭されて推薦されたことにキオナもルティカも面食らってしまう。
「ルティカは…ルティカはまだ何も出来ないのだ。宰相の皆にも手伝って貰っただけで、ルティカじゃ実力不足なのだ」
長いこと留守を任されたことで代理とは言え、王座に就く大変さを思い知らされたルティカは自信無さげに目線を逸らす。
「王は一人では務まらんさ。自身に足りない力を借りることは恥ではないからな。キオナも同じく代理とは言え、それまでは上手くやっていけただろう」
「そうは言っても、やはり兄様の方が…」
キオナもルティカほどではないにせよ不相応だと辞退しようとし、逆に再びエグルマを推薦する。
「…しかし兄上、辞退するならするで、その理由を聞かなければ二人は納得しないだろう。この私も含めてな」
このままでは堂々巡りになり、悪く言えば責任のなすりつけ合いにも思えるやり取りを終わらせ、そして何故に太鼓判を押されている兄が辞退しようとしているのかレイスニーは理由を聞くつもりで提言をする。
「それは現状を見たからだ。我々が今いる世界は元の世界と比べて理屈がまるっきり変わってしまったからな」
「魔法とスキルが使用不能になったことか」
これまで自分達は強力無比な魔法とスキルを使いSランクモンスターを下し、多くの英雄や勇者を星のように輩出する『元の世界では最強の存在』として君臨することが当たり前になっていた。
しかしこの異世界に転移してから『元の世界では最強の存在』としての誇りや尊厳が根本から崩れてしまったことであらゆる価値観や規格が大幅に変わってしまった。
「レイスニー、俺達が率いていたラケル王国の英雄達がどうなったか覚えているか」
「…当初は我らにも負けないスキルや魔法を使い、あらゆるAランクモンスターを虫けらのように殺していた」
元の世界で遠征していた時に別の国の英雄と共に行動していたが、その時はドラゴンの群れと相対していたが彼らからすれば単なる害虫駆除の感覚でドラゴンを殺していたのだ。
「しかし例の流れ星の爆発の後で、見たことのない四足獣…ちょうどエインの連れているフォークに似た五本角の四足獣と遭遇したな」
群れ単位でドラゴンを駆除した直後に隕石の衝撃によって意識を失い、目を覚ますとそこにはドラゴンの代わりに『ペンタケラトプス』の群れが現れたのだ。
「当然、ラケル王国の英雄達は四足獣を群れ単位で始末しようとして…スキルや魔法が使えなくなったのを受け止めきれずに、奴らの子供を殺めてしまった」
例に漏れず彼らも魔法とスキルが使えなくなったのだが、ラケル王国の英雄は事実を認めれずにペンタケラトプスの子供だけは殺すことに成功した。
「それが間違いだった。子供を殺された怒りから四足獣の群れは濁流のように暴走し、まるで天罰だと言わんばかりに人が生きたまま肉塊になっていくのを見た…そして生き残ったのが俺と兄上を含めた数名だけだった」
「暴走する群れによって命が危機に晒されているのに、今だに魔法とスキルに縋る彼らは余りにも哀れに見えた…そして俺はある確信を得たのだ」
目の前で人間が潰される光景を嫌と言うほど目にし、その上で魔法とスキルに頼り続ける英雄達が無惨に死んでいったことでエグルマにある心の変化をもたらしたのだ。
「これまでのように魔法とスキルは使えなくなった以上は新たなる生き方を模索するしかない。幸い俺達がいなくとも民達はそれをやってのけた」
自分達が新たなる生き方を見出す前に国の人々は既に見つけていたことにエグルマは喜ぶべきか恥じるべきかと言った顔をしていた。
「皆、エインにも負けないように頑張ったからなのだ」
「そうね。あなたのお陰かしら」
「僕は別に何も…」
「謙遜しないでください。あなたが私の頑張りを見てくれたように、あなたの頑張りは私や皆さんが見ていたのですね」
元から魔法とスキルの才能がなかったエインだからこそ、この異世界でも立派に生き抜いていたため、キオナを始め出会った人間の生き方を少しずつ変えていく起点になったのだと称賛され照れてしまう。
「俺が辞退した理由。それはお前達が推薦しているのは俺の実力があってこそなのだろうが、結局それは元の世界での実力…今やお前達が期待するほどではないだろう」
推薦してくれるのは嬉しいが異世界に来たことでそれまでの実力が失われ、もはや期待出来るほどではないとエグルマは推薦を辞退したのだ。
「なるほど、理由は分かった。しかしそうなると我らもまた今までの選出方法では決められないことになるな」
辞退する理由は納得のいく内容だったが、そうなると今の自分達にも選出される権利はないことになる。
「結局誰がなっても不思議じゃないってことね。となるとくじ引きかジャンケンで決める?」
「王座を決める重要な取り決めなんだぞ。軽々しい方法で決めるな」
おっとりした様子でシフォンが安易な方法を提案するも認められなかった。
「そこで提案なのだが、ここは昔ながらの方法で選出しようと思う」
しかし代案がないと言う訳でもないらしく、エグルマは昔に行われた方法を試そうと提案する。
「お祖父様から聞いたことがあるのだが、昔は複数人の王位継承者がいた場合は継承権を持つ者同士で国に取って有益な手柄を上げて競い合うと言うものだ」
誰もが自身こそが王位に就く相応しい人物だと自己主張し、時てして派閥争いや王族同士での謀略と言ったきな臭いことが多発していた。それを鎮めるために複数人の王位継承者は様々な手柄を立てては競い合っていた。
「当時は敵国を制圧したり、敵の将軍の首を取ったり、時として新しい魔法の開発や未開の地を開拓したりなど手柄は多岐に渡る。俺達もそれをマネしてみようと思うんだ」
「確かにここは異世界ゆえに未開の地は多くある。それに魔法とスキルが使えなくなったことで弱体化した我らの国を制圧しようとする輩もいるかもしれんな」
昔ながらの方法ではあるが国の現状を改善する上に、王位に相応しい人物を選出するにはこれ以上ない方法だろう。
「私もその方法に賛成です。国を良くすることにも繋がりますし、新しい異世界で確かな実力を手柄として見せることが出来れば文句のつけようがありませんしね」
「その方が手っ取り早いし、私も賛成よ」
「面白そうなのだ!ルティカも賛成なのだ!」
「……もはや反論の余地はないようだな」
他の四人の兄妹達も満場一致でその選出方法を了承し締結するのだった。
「しかしながら昔の方法だからルールを調べなくてはな」
「手伝おう、兄上」
「ルティカもやるのだ!」
「じゃあ、私も」
「エイン、皆さん。今日はこれで解散してください。詳細は追って説明しますね」
五人の王位継承者である兄妹はまるで家族行事に参加するかのように、浮足立った様子で選出方法を調べるために王座の間を後にする。
「兄妹かぁ…」
怒涛のように去っていくものの、兄妹仲良く楽しそうな雰囲気にエインは何処か羨ましそうな表情を浮かべていた。




