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異世界に転移したが、勇者じゃなくて私立探偵なので喋る剣と喋る黒猫と探偵事務所開きます  作者: FUKAMIEIJI
開幕

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第2話 豚肉か馬肉か、それが問題だ

 悲鳴の聞こえる場所に向かった俺達。

 ざっと見た感じ何やら街道を移動している集団が待ち伏せされてたようだ。

 

 馬に乗っていた八人ほどのエルフ集団……地面に倒れた馬の身体には矢が突き刺さっている。

 周囲には武装したオークが二十人ほどか。

 地面に倒れているエルフが十人ほど、オークは二十人ほど。

 エルフ一人にオーク二人が襲い掛かっているが……どうもエルフのうち一人、女性か……を守って戦っているようだ。


「誠二。どうもエルフの集団が襲撃を受けているようですね」

「あぁ……エルフか〜……エルフなぁ……」

 俺はエルフの美女が嫌いだ。関わるとろくなことにならん。

「普通に考えたら襲ってるいる方が悪いが……エルフだぞ……? もしかしたらエルフがオークを差別してきた歴史的背景があってだな。これはオークの奴隷解放の戦いかもしれん」

「誠二……貴様は愚かすぎる」

 リーナスが足元で偉そうに話し出した。

「なんだリーナス」

「我は腹が減っておる。オーク……つまり奴らは半分豚よ」


 俺も腹が減ってきていた。確かに奴らは豚に近いかもしれん。今夜はカツ丼か?

 いや、米がないからカツレツに……小麦粉もない! クソったれ!

 よくよく見ると、俺達のいた世界のオークよりも豚っぽいな。あれなら豚肉として食っても問題無いだろう。空腹感でやや正気度の低減している俺にはそう思えてきた。

「なるほど天才かよ! まて、やつらの人権は?」

「誠二。私の推論によれば一番理想的かつ法的に問題なさそうなのは戦闘が終わった後、馬を回収して食べることです」

「馬肉か。ありだな」

「ふむ。では戦いが終わるまで待つか?」

 俺とリーナスと雪風は草の陰でそんな会話をする。


 と、俺の耳に悲鳴が飛び込んできた。

 守られていたエルフの女性がオーク二人に捕まり、服を引き裂かれている。

 俺は深いため息をついた。

「しかたない。馬刺しは諦めて豚の生姜焼きだ」

「ふむ。ではエルフに加勢するのか?」

 俺は敵の配置を再度観察する。


 奥の方に弓を持ったオークが四人。更にその奥に杖を持ったオークが一人。

 エルフと戦ってるオークが十人。エルフがもう四人。

 悩んでいるうちに双方とも数が減ったようだ。

 まぁそのうち一人は今、オーク二人に強姦されそうになっている。よって実質エルフ三人にオークが八人で襲い掛かっている絵面か。オーク達は槍。エルフはレイピア。そりゃエルフが負けるわけだ。

 

「リーナス。弓を持った奴と魔術師スペルスリンガーっぽいやつ、任せて良いな?」

「よかろう」

 リーナスが尻尾を振って頷いた。


 俺はそれを確認すると短剣となってしまった雪風を抜いて走って近づく。

 エルフと戦っている鎧を着こんでいるオークの背後に接近。

 三人いるので……とりあえず一番右側にいるやつを狙う。

 これはハードレザーアーマーってやつか? まじかよファンタジー世界じゃん。

 あちこち装甲で守られててうざいが、どうせ俺は急所しか狙わんから関係ない。

 右手で抜いた雪風で、目の前のオークの口に手をやり、その首を背後から掻き切った。

 即座に隣にいるオークに飛びついて雪風で首を掻き切り、持っている槍を左手で掴む。

 一番左端にいたオークが俺に気づいた。


「何者だヒューマン! わけの分からない格好をしよって! なぜ邪魔をする!」

 オークが叫ぶ。

 俺のいけてる赤いコートがわけのわからない恰好だと?

「なぜだと? 俺が絶対に許せないものが三つある。一つ、本を大切にしないやつ。二つ、エルフの美女。三つ、ハードボイルドを馬鹿にするやつ。四つ、性犯罪。お前達はフォーアウト。全殺しの刑に処す」

「何を言っているんだこいつ!?」

 何をだと? 世界の常識だが? 待て、何かおかしい。

「なんでお前、日本語話してるんだ?」

「誠二、今はそれどころではありません」


「ええい! 死ねヒューマン!」

 叫びながらオークが槍を俺に突きこんでくる。

 だが俺は今殺したばかりのオークを盾にする。

 オークの体に槍が突き刺さり、貫通して俺を襲う――前に俺は飛び出してきた槍の穂先を雪風で切断。

 俺は突き刺されたふりをする。

「なんじゃこりゃー!?」

 腹を押さえて叫ぶアカデミー賞ものの俺の演技に騙されたオークがニヤリと笑い、槍を引く。

 それにあわせて俺は左手で握っていた槍を向こうのオークに突き刺す。

「な!?」

 致命傷ではない。確実に殺す。驚いたオークに向かって俺は走る。

 慌てて槍の穂先のなくなった棒を突き出してくるが、俺は雪風でスパスパと薙ぎ払いつつ突撃。

 一瞬で短剣の間合いに入り、オークの目に短剣を叩き込んだ。

 俺は必死に腰をかがめてよけるがどうしても血しぶきがかかる。


「誠二……」

 雪風が暗い口調で話しかけてきた。

「なんだ!」

「一気に三人倒した手並み……見事です。しかし、私の本体が汚染されるという重大な労働規約違反が――」

「今それ言う!? 俺だって返り血が――」

 雪風が突如警告を発した。

「誠二! 危険です!」


 俺の視界が赤くなって危険予測値が跳ね上がる。おぉ、どうやら身体改造と雪風による戦術サポートはこの世界でも生きているらしい。

 俺の視界内に跳んでくるであろう矢の軌跡が表示された。

 とりあえず今、目から血の噴水を産み出しているオークを左手で掴み再度盾にする。

 オークの背中に矢が四本突き刺さった。


(おい! リーナスお前!)

 俺は短距離電波通信でリーナスに文句を飛ばす。

(ふ……誠二。聞いて驚け)

(既に矢が飛んできて驚いてるが!?)

(我は……魔術が使えぬ。どうやらこの世界の魔術体系は我らのいた世界とはまた異なる法則で動いておるようだ)

(は? じゃあお前、ただのしゃべるわがまま言うだけの猫ってこと!?)

(いや、それは違う)

(何が?)

(偉大なる神、である)


 駄目だこいつ。

 問題は俺が突っ込む前に立てていた戦闘プランが根底から崩壊したことだ。

 とりあえず前方二十メートルほどにいるあの弓兵と魔術師? を始末する必要がある。

 視界の端で見る限りでは、強姦しようとしていたオーク二匹(強姦しようとするやつを俺は人とは認めてない。匹で十分だ)も慌てて戦線復帰しようとしている。未遂で終わったらしい。やれやれ、良かった良かった。しかし、未遂でも襲われていたエルフの女性の心には大きな傷が残っているだろう。

 クズどもが――皆殺しにしてやる。


 俺が盾にしているオークにどんどん矢が突き刺さる。

 やれやれ、まぁこの程度なら死にはしないだろう。

 強化された俺の筋力ならこの程度の重さ、たいしたことはないしな。

 オークの死体を俺に寄りかからせて盾にしたまま、オークの死体に刺さった槍を左手で引き抜く。

「雪風!」

「はい。投擲に最適なバランスになる位置を表示します」

 槍の柄、穂先から三分の二ほどの位置にマーカーが表示される。そこを雪風で俺は切断。

 俺は右手の雪風を鞘に納め、死体を右手で保持。左手で槍を構える。


「風力、距離、先ほどの槍の柄を切断した際の落下にかかった時間より重力を地球と同じと仮定、最適な角度を計算します」


 視界に表示されるガイドに従い、俺は槍を投げる。オークの弓兵その一を槍が貫いた。

 オークの弓兵達が一瞬恐怖で固まる。

 俺は盾にしていたオークの死体を投げ捨てると全力で走る。

 

「飛び道具で自分は攻撃されないと思っていた時に、不意打ちで誰かが死ぬ。余程訓練されてないと体が固まるんだよ」


 俺は鞘から雪風を引き抜くと瞬く前に三体の弓兵オークの首を斬り裂いた。

 もう血に関しては気にしないことにする。

 クソ、白兵戦とか最悪だ。文明人の俺にはふさわしくない。


「おのれヒューマン!」

 更に奥十メートルにいた、杖を持ったオークが複雑な身振り手振りをしながら詠唱を開始する。

「炎よ、我が意志のもとに、矢となりて我が敵を射抜け! フレイムアロー!」

 詠唱が終わるとともに炎の矢が何本もオークの周囲に浮かび上がる。

 すぐ飛んでくると思い俺は横に跳ぶが――あれ? 撃ってこない?


「おい! あいつ、放射熱で火傷しないのか!?」

 俺は思わず疑問を口にする。

「ふむ。となるとアレは大気成分を動かす(分子励起)だけでなく熱を伝える光粒子(赤外線)も同時に操るというかなり高等な魔術を?」

 リーナスが魔術的解説を行う。

「誠二。放射熱がないのであれば、大きく避ける必要は一切ありません。ぎりぎりの回避でも問題はありません」 

「そもそも俺のコートは耐熱だからあの程度なら大丈夫くさいな。どうも大気中の塵が燃えてる感じでもないし。何を燃料にしているか知らねーが……しょぼくね?」


「ええい! 何をごちゃごちゃ言っておるか! 我がファイアアローを愚弄するとは!!」


 その言葉と同時――数十本の炎の矢が俺に降り注いできた。

 いや、これ、避けるの無理でしょ?

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