第十四話 簡易神器
……朝か……
翌日になったらしい。
まだ二時だけど。
あの後、本部から迎えが来る前に入眠してしまったので、いまはあまり眠くない。
今日もおそらくは訓練。
アレにまた乗るのか?
昨日の戦闘後、Fenrir-02が俺を拒む理由が分かった。
やる気がまるで感じられないから。
——自分の命を守りたいと思っていない奴に本気が出せるとでも?
全くその通りだ。
アニメキャラのように何らかの目的をもってつくられた人間でなければ、基本的に自らの命がかかっているときにすべての力を発揮できるようになる。
しかし、俺の場合はどうだ?
俺のマッチには、大量の水がかかっている。
びしょ濡れのマッチでいくら頑張ったところで、火が点くことはない。
そして、俺のマッチは窓のない暗い湿った部屋に置いてあるので、乾かして再利用することは不可能だ。
ならば、どうすればよいのか?
新しいマッチを入手するしかない。
そして、すぐには燃え尽きない量の可燃物も必要だ。
いくら大きな火でも、可燃物がなければすぐに消えてしまう。
俺にはその可燃物が足りない。
マッチはどこかから降ってくると信じ、少しでも多く訓練をして可燃物を補充する——それが、今の俺にできることだ。
まだ外は暗いが、職員の一人や二人は起きているだろう。
万が一全員寝ていたとしても、実戦でなければAIがサポートしてくれる。
実戦用の服装に着替え、部屋を出る。
やっと着いた……
しかし遠いなぁ、訓練場も……
今日はどの訓練を——
訓練場のドアをくぐると、どこかで見た顔があった。
「ゲッ」と聞こえたのは気のせいではないだろう。
三条だ。
「……何ですか、早朝から『ゲッ』って」
ため息交じりに尋ねると、いらだった声で返ってきた。
「そのまんまだよ。俺は半端な上官が嫌いなんだ」
半端な上官……
別に俺もこんな役職になりたかったわけではないんだけどなぁ……
まあ、いいか。
そんなことより、今日は“ある武具”の試験運用開始日だ。
青い箱に近づき、一振りの日本刀を取り出した。
一見何の変哲もない日本刀。
しかし、中身は大違いだ。
“簡易神器”「星月夜」である。
“簡易神器”——今俺の視界に入っている男が考案した新種武器。
武器と使用者の物理的接触により使用者の“自我”を流し込むことでラオ星人にも有効な攻撃を【A.R.K.】なしでも繰り出すことが可能だ。
威力が低いなどの弱点もあるが、実用性は高い。
これなら拒否反応を気にせずに人類の力になれるかもしれない。
そろそろ“自我”は溜まったか?
もう使えそうだ。
「星月夜」を構え、練習用に超弱体化された生物兵器に向かって走り出す。
壁を利用して端に追い込み、首に刀を刺した。
なるほど、意外に使いやす——
!?
首を掴まれた!?
生物兵器は「あなたの敗北です」と伝えると、ゆっくり手を下した。
「刺すのが遅すぎだ、バカ。というか首を一回刺した程度で満足するな」
うわっ、コイツ急にキレだしたぞ!
「貸せ」
俺の刀を奪うと、三条は例の生物に向かって一礼する。
足音さえ一切立てずに駆け抜け、ジワジワと追いつめてゆく。
相手が高く飛び上がると、三条はさらに高くジャンプして手で叩き落とした。
相手の体にのしかかって拘束する。
そして、目を見張る速度で首、胸、手、足、頭、口、みぞおちなどの急所を次々と刺していった。
「完……敗……」
生物がそう言ったのを確認すると、左手首から刀を抜いた。
「ま、これくらいやれば人間と同等のサイズの敵はまず死ぬ。死なないヤツがいたら俺は頭を下げる。コレは何度でも蘇生するようにつくられているがな」
刀を乱暴に投げ返される。
「わ、わわっ!?」
なんとかさやの部分をキャッチできた。
危ないなぁ……
「お前、それもキャッチできねぇのか? 本当に軍人かよ、無能」
そう言う三条の目には、呆れや軽蔑を通り越して慈愛の色さえ浮かんでいた。
「僕が以前から軍人だったらここまでナメられてはいなかったと思いますよ」
「うるせぇ。とにかく、分かったな? 刀の扱い方と敵へのとどめの刺し方。俺より階級高いんだから俺より強くなれ。それまで俺はお前に頭を下げないぞ。じゃあなクソ雑魚」
オマケ?
萩谷:ん? なんだこの汚い部屋は……
作者:僕の部屋だよ。ヒトの部屋見て汚いとは失礼な高校生だなあ……
萩谷:誰だ? この生意気な中学生は……
作者:あれれ? 作者に反抗するキャラにしたつもりではないんだが……おかしいな……
萩谷:は? 作者? キャラ? さっきから一体何のことだよ?
作者:ややっ、そんなことまで抜けていたのか⁉︎ ……仕方ない、1から説明しよう。君は僕に作られたキャラで、僕はその作品の作者なのさ
萩谷:何を言っているんだ、コイツ……。気違いと話していてもつまらん。帰ろっと
作者:ま、待つんだ!! 僕は気違いなんかじゃ……消えた……




