第十五話 久し振りの恐怖心
ぶっきらぼうに言い放ち、訓練場から出て行った後、三条はようやく自分の愚行に気づく。
(あー、バカなことしたなぁ……『小γ砲Ⅲ』とか『北帝刀』とかも試すつもりだったんだが……)
深くため息を吐き、三条は私室に戻ることにした。
(というか、そもそもアレって必要なモノなのか? 【A.R.K.】ほどの巨大兵器が小さくならない理由はラオ星人がデカすぎるからだよな。あんな小さい武器で奴らの急所を一箇所や二箇所つついたところで何になると言うんだ。……いや、そんなことよりも……)
歩きながら、思考の対象を切り替える。
(萩谷悠……本当に彼は数週間前まで民間人だった人間なのか? いくらなんでも単なる凡人を副隊長に任命するなんてありえない。『例のアレ』の仮想適合体で世界にたった9機のFenrirを操縦、しかも『星月夜』を一瞬で扱っていた。『星月夜』のモデルとなった刀は呪われた刀鍛冶の妖刀として名高い……見るだけで後ずさる者さえ少なくない。俺でも幾度となく殺されかけた)
視界に補佐役に「訓練所の近くに作れ」と迫った自身の私室のドアが入り始める。
「彼は……何者なんだ?」
そう言う三条は、久しぶりに恐怖の感情を抱いていた。
その頃、当の萩谷には一通のメールが届いていた。
「鶴飼隊長からか」
本文には、短く「今日の23:00頃に第二会議室へ来てくれ。少し話したいことがある。鶴飼」とある。
に……23時だと?
何を考えているんだ、あの人は。
(夏芽は突然部屋に入ってくるし三条はすぐキレるし隊長はわざわざ真夜中に時間指定して呼び出すし……やっぱり第一隊は変人だらけじゃねぇか)
ひとしきり呆れた後、再び訓練に集中する。
ハァ、ハァ、ハァ……743回目……倒した……
744回目に挑戦しようと再び刀を構える。
体力を少しでも温存するため、至近距離から始めるよう頼んである。
軽くジャンプして首を浅く刺す。
相手の動きが鈍ったところで刀を抜き、手足を使用できなくした後、みぞおちに蹴りを入れて、頭部と胸部を切り裂いた。
ここは腕をニョキニョキ生やせる人がいるどこかの漫画ではないので、手足を切断すれば基本的には勝ちが確定する。
まあ、ラオ星人なら再生できる技術があるかもしれないけど。
首に浅く傷をつければ敵の動きが鈍り、手足に攻撃を入れやすくはなるだろう。
手足を無効化してしまえば、攻撃が困難になり、息を吐く時間ととどめを刺す時間が生まれる。
みぞおちに蹴りを入れることで相手の動きを確実に停止、胸と頭を貫き止めを刺す——それが、今日俺が確立した戦法である。
Fenrirに認められればもう使い道はなくなるが、マッチが降ってくるのははるか先だ。
習得しておいて損はないだろう。
水を一口飲みと時計に目をやると、22時54分。
そろそろ隊長と約束の時間だな。
例の生物に例を言い、第二会議室へ歩き始める。
——彼が何をしているのか、そしてどんな運命に巻き込まれているかなど考えもせずに。
オマケ? 弐
作者:おはよう萩谷くん
萩谷:今は夜中だ気違い
作者:違う! 僕は本当に君のことを操っているんだ!
萩谷:じゃあ証明してみろよ
作者:よし、ではジャンケンをしよう。僕が勝ったら証明成功ってことで
萩谷:ほう
作者:最初はグー、ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!…………………ハァ、ハァ、ハァ……
萩谷:お前本当にバカなやつだなぁ、同じ思考の人間がジャンケンをやって勝敗がつくわけないだろう
作者:あー……でもこれで証明できたんじゃない?
萩谷:ゲッ
作者:バカだなぁ、実にバカだなぁ……
萩谷:お前がバカだから俺までバカになるんだよ!




