第十二話 黒狼胎動〜Ⅳ〜
巨大な黒いオオカミのツメが、Gaia-72のノドを引き裂こうとしている。
【A.R.K.】搭乗中に機体に記録されたダメージはパイロットも受ける。
首を引き裂かれたらGaia-72も、夏芽も一巻の終わりだ。
チッ……
一瞬考え、本部に連絡する。
「本部、応答せよ。こちら萩谷悠。敵は僕がうまく引きつけますのでGaia-72の回収をお願いします」
〈本部、了解〉
さて……奴をうまく引きつける方法はないか?
戦場に敵はアレの他にいない。
囮作戦は不可能だ。
もっとも、奴がどこまで仲間思いなのかが全くわからない。
では、やはり音が光だ。
「強力な光を出せるモノってありますか?」
〈あります。閃光弾が内蔵されているはずです〉
なんだ、中にあるのかよ……
小さな青色の球体を適当なところから射出する。
5秒ほど後、轟音とともに純白の強い光が周囲を包み込む。
体がかすかに震える。
落ち着け。
あの音はただ出しているだけで、実際には単に光っているだけだ。
そもそもあれは俺の判断で使ったものだろう。
しかし、何度自分に言い聞かせても震えが止まる事はなかった。
そして、黒い塊が俺に近づきつつある。
成功だ。
拘束に良さそうな場所はないか?
適度に後退を続けながら、改めて周辺を観察する。
すると、巨大な穴が目に留まった。
よし、これなら勝てる。
そのまま後退を続けろ。
穴に入れ。
もうちょっとバック、その辺で止まれ。
追い詰められたフリをしろ。
相手が飛びかかってきたら、かわして穴の入り口の方へ。
そうだ、逆に追い詰めてやるんだ。
飛び掛かってツメを立てろ。
γ砲xlをチャージ、殺せ。
「おい、何をしている? チャージしろと……」
と、そのとき。
「がッ……!?」
みぞおちに、激痛が走った。
——この流れ、覚えがある。
思わず口に当てた手からぬるい液体が付着している感覚がした。
間違いない。
訓練中も初陣の時も同じ経験をした。
機体による拒否反応だ。




