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バグ検証実況者、VRMMOのバグを検証していたら隠し職業《システムブレイカー》になりました  作者: もりのなか


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第24話:好感度検証配信

1.検証:算術級数から指数関数へ


 「さて、12,000人の共犯者のみんな。お待たせ。……ここからが本当の検証だ」

 セントラル・ゲートの広場、噴水近くのベンチに腰掛けたカイトは、配信カメラに向かって不敵に微笑んだ。彼の周囲には、相変わらず白いローブを纏ったGMゲームマスターユニットたちが距離を置いて立っているが、カイトはそれすらも「背景の一部」として利用していた。

 今回の検証ターゲットは、広場にある花屋の看板娘、エマだ。彼女もまた、『アーク・コード』が誇る人格AIを搭載したNPCの一人である。


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【検証】最新VRMMO『EFO』にバグがあるか調べてみた【1日目・深夜】 同接数:12,402人


[名無しさん1]: 始まった! ターゲットは看板娘か!

[名無しさん2]: 親父より目の保養になるなwww

[名無しさん3]: 運営さん、最前席で見てて草

[名無しさん1]: 「これバグだろ」って確信させる検証頼むぞ!

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「まずは基本の確認だ。さっきの薬草屋で見つけたバグ05『NPC好感度ループ』をさらに効率化してみよう」


 カイトはエマに話しかけ、花を購入するウィンドウを開いた。そして、購入を確定させる直前にショートカットキーで会話をキャンセルする。これを1秒間に3回のペースで繰り返した。


「通常、会話の開始と終了は1セットで好感度+1の判定だ。でも、ここにアイテムの受け渡しの予約フラグを混ぜるとどうなるか。……見てて」


 カイトは安い種を1粒、エマに「渡す」コマンドを選択し、その処理がサーバーに届くミリ秒の隙間に会話を閉じる。

【通知:NPC・エマの好感度が +15 上昇しました】


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[名無しさん2]: !?!?

[名無しさん1]: +15!? 一気に跳ね上がったぞ!

[名無しさん3]: なんでアイテム渡してないのに加算されてるんだよwww

[名無しさん4]: 「検証ガチすぎ」

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「理屈はこうだ。AI管理システム『コードオメガ』は、プレイヤーの贈与の意思を検知した時点で、学習データとして高い評価を先行入力する。……でも、会話をキャンセルすることで、肝心のアイテムの消費という確定処理だけがスキップされる。つまり、手元のアイテムを減らさずに、好意だけを無限に稼げるわけだね」


 カイトは淡々と、しかし残酷なまでにロジカルに仕様の穴を暴いていく。



2.運営の悲鳴:想定外の連鎖


 ネクサスゲームズの監視ルーム。メインモニターに映し出されるエマの感情パラメータが、垂直に近い角度で上昇しているのを見て、チーフプログラマーの黒崎シュンは頭を抱えた。


「またあいつか……ッ!!」


 黒崎の叫びが部屋に響く。「アイテムのスタック処理と、人格AIの先読み評価を繋げただと!? 奴のやっていることは、NPCの脳に直接、偽造された幸福感を叩き込んでいるのと同じだぞ!」


「チーフ、それだけじゃありません!」

 コミュニティマネージャーの白石ミユが、別のログを表示する。「カイトは周辺のNPC3人に同時にクエストを受注・キャンセルのループで回し始めました! 近接するNPC同士の噂話共有AIが反応して、好感度上昇が互いに共鳴バフスタックしています!」


「指数関数的な増殖……。このままだと街全体の好感度ロジックが飽和するぞ!」


 神代レイジは、モニターの中のカイトをじっと見つめていた。「……彼には見えているのだな。AIが良かれと思って実装したプレイヤーへの共感ロジックが、最も脆弱な急所であることを」



3.崩壊する「理」


 ゲーム内。カイトの周囲では、異常な光景が展開されていた。当初は愛想良く接していたエマが、もはや接客を忘れ、顔を真っ赤にしてカイトの手を握りしめている。


「あ、あの! カイト様……私、なんだか、あなたのためなら、お店の在庫を全部差し上げてもいいような気がしてきました……!」


 エマの頭上にある好感度ゲージは、もはやMAXを突破し、バグったように黒いノイズが混ざっている。


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[名無しさん1]: 落ちたwww 看板娘が落ちたぞ!

[名無しさん2]: 「これ完全にバグだろ」

[名無しさん3]: 看板娘がヤンデレ化してて怖いんだがwww

[名無しさん4]: 同接13,000突破! 伝説回だこれ!

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「検証結果:好感度ループにアイテム渡し予約を組み合わせることで、上昇値は算術級数から指数関数へと進化する。……さらに、周囲のNPCと同時に行うことで、AI同士の相互評価による連鎖爆発が確認できた」


 カイトは満足げに頷き、狂おしいほどの親愛を向けてくるエマの手を優しく、しかし事務的に離した。


「さて。13,000人のみんな。……好感度が限界を突破すると、NPCはどうなると思う? この完璧なゲームが用意した安全装置が、いつ壊れるか……確かめてみようか」


 カイトが次なる同時クエスト進行のコマンドを入力した瞬間、エマの瞳からハイライトが消え、彼女の口からシステムログのような、無機質な声が漏れ出した。


『……カイト、サマ。アナタノ……タメ、ナラ……。システム、セイゲン、カイジョ……』


「……おや。ついに仕様が悲鳴を上げたかな?」


 カイトの瞳には、かつてないほど巨大な、世界の綻びが映っていた。

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