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バグ検証実況者、VRMMOのバグを検証していたら隠し職業《システムブレイカー》になりました  作者: もりのなか


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第20話:伝説の配信

1.「バグ」が導く新世界


 『北限の霊峰』の頂、絶対零度の風が吹き荒れるなか、カイトは新しく手に入れたユニーク職業『システム・ブレイカー』の力を噛み締めていた。彼の視界には、『バグ視認バグ・サイト』によって可視化された世界の「脆弱性」が、無数の赤いノイズとなって浮遊している。それは、世界最大のVRMMO『アーク・コード』が「完全なゲーム」であるという宣伝文句の裏側に隠された、膨大な設計ミスの羅列だった。


「……さて、みんな。能力の確認デバッグはこれで十分だ」


 カイトは配信用の仮想カメラを指差し、不敵な笑みを浮かべた。彼の左手首には、仕様の残骸である『アーク・コア(エラー品)』が黒い炎のように揺らめき、アバターの座標データを常に不安定に揺さぶっている。


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【検証】最新VRMMO『EFO』にバグがあるか調べてみた【1日目・深夜】 同接数:8,104人


[名無しさん1]: 同接8000突破!? おいおい、個人配信のレベルじゃねーぞ!!

[名無しさん2]: 運営の警告を無視してまだ続けるのかよwww

[名無しさん3]: 「伝説回確定」。歴史の目撃者になってる気分だわ

[名無しさん1]: カイト、次は何を壊すんだ?

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「次、か。……いい質問だね。僕は決めたよ」


 カイトは雪山の崖際までゆっくりと歩みを進め、雲海の下に広がる広大な『始まりの大陸』を睥睨した。「運営さんは僕に『検証をやめろ』と言った。……でも、僕はこの世界の仕様という名の嘘をすべて暴きたいんだ。だから、改めて宣言させてもらうよ」


 彼はカメラを真っ直ぐに見据え、言い放った。「このゲーム『アーク・コード』が、壊れるまで検証し尽くしてあげる。……それが僕なりの、この完璧な世界への愛し方だ」



2.10,000人の熱狂


 その瞬間、配信画面の同時接続者数を示すカウンターが、物理演算の限界を超えたダメージ数値のように爆発的な上昇を見せた。


 8,500…… 9,200…… 9,800……。


 そして。


【通知:同時視聴者数が10,000人を突破しました!】


 コメント欄が、もはや判読不能な速度で流れ去っていく。「なにこれ」「バグだろ」「伝説の始まりだ」といった驚きと称賛の言葉が、アーク・コードのコミュニティ全体を揺るがす巨大な潮流となっていた。SNSでは「#検証だからセーフ」というハッシュタグがトレンドを独占し、カイトのクリップ動画は数百万回の再生を記録しようとしていた。


「……同接10,000人。30,000,000人のプレイヤーがいるこの世界ではまだ小さな数字かもしれない。でも、10,000人の共犯者がいれば、運営の理不尽なパッチ(修正)だって跳ね返せると思わないかい?」


 カイトは『システム・ブレイカー』の権限を行使し、空中に独自のUIを展開した。それは、ゲーム内のシステムプロンプトを強引にバイパスし、通常ではアクセス不可能な『未実装領域バグ・エリア』へのパスを高速で検索するデバッグモードだった。



3.ネクサスゲームズの決断


 同じ頃、ネクサスゲームズ本社の監視ルームは、重苦しい沈黙と、鳴り止まないエラー警告音に支配されていた。


「……10,000人、ですか。もう無視できる規模ではありませんね」

 コミュニティマネージャーの白石ミユが、震える手でタブレットを操作し、ネット上の爆発的な反応をメインモニターに映し出した。


「チーフ! 奴を今すぐ止めないと、ゲームバランスが崩壊します! 既にレベル1で北限ボスを倒した影響で、地域の生態系AIがパニックを起こしています!」

 チーフプログラマーの黒崎シュンが、悲鳴に近い声を上げる。


 しかし、開発ディレクターの神代レイジは、椅子に深く腰掛けたまま、カイトの不敵な笑みをじっと見つめていた。


「シュン、BANはやめだ。……彼を強引に排除すれば、この10,000人の共犯者たちが暴動を起こすだろう。それは企業の信頼を失墜させる」

「では、どうするんですか!?」


「このプレイヤーを常時監視しろ。……彼に自由に動かせ、すべての挙動をログに取れ」

 神代は、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。「彼が壊すのは仕様という名の嘘だけではない。……アーク・コードに潜む、AI『コードオメガ』ですら制御できていない世界の真実に、彼なら辿り着くかもしれない」



4.検証の続きへ


 雪山の頂、カイトは不意に上空を見上げた。彼の『バグ視認』が、上空から降り注ぐ不可視の『GMユニット』による監視プロトコルを、微かなノイズとして捉えていた。


「……ほう。BANじゃなくて監視を選んだか。いいよ、神代さん。特等席で僕の検証デバッグを見ていなよ」


 カイトは崖から迷わず一歩を踏み出し、空中に透明な判定を生成した。

「さて、10,000人のみんな。次の検証ターゲットは、地図に載っていない空白の座標だ。……そこには、運営が隠したかった不都合な真実が眠っているはずだよ」


 カイトの体が、重力を無視して夜の空へと加速していく。

 底辺実況者の遊びは、今や世界最大のVRMMOを揺るがす「伝説の配信」へと変貌を遂げていた。

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